『冤罪と元非行少年 ~殺人事件 38年間の戦い~』

2025.07.09更新

報道・情報

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:福井テレビ)

福井地方裁判所前で街頭演説 冤罪を訴える前川彰司さん

『冤罪と元非行少年 ~殺人事件 38年間の戦い~』

<7月14日(月) 27時00分~28時00分>

逮捕されたのは元非行少年 冤罪(えんざい)訴え38年

1986年に起きた福井女子中学生殺人事件。この事件を境に人生が一変した1人の男性がいる。殺人の疑いで逮捕されたのは前川彰司さん。前川さんは、逮捕直後から「冤罪」を訴え続けている。長い年月を経て、今年の3月6日に再審初公判が行われ、即日結審した。不可能とも言われる再審の扉が開いた殺人事件。当時の捜査に何があったのか、そもそも前川さんは冤罪なのか。取材をすることで見えてきた事件の真相に迫る。

再審開始の決め手は、検察が開示した捜査報告書など287点の証拠 関係者の供述は信用できない

1986年3月19日、福井市内の当時中学3年生の女の子が、卒業式を終えたその日の夜に何者かに殺害された。犯行はまれに見る残忍かつ執拗(しつよう)なものだった。警察は、同じ年齢層の非行グループのリンチを想定して捜査を進めるが、黙秘や虚偽の証言が相次ぎ捜査は難航した。ある日、別の事件で取り調べを受けていた暴力団組員の男が「血の付いた前川を見た」と発言。突如として、前川彰司さんの名前が捜査線上に浮上した。事件発生から1年後、当時21歳だった前川さんが逮捕された。前川さんは「シンナーや薬物に溺れていた。恐喝や暴力も含めて、やりたい放題やっていた」と、自身が疑われる理由があったと話す。しかし前川さんは、1度も犯行を認めておらず、逮捕直後から「冤罪」を訴え続けた。これまでの裁判では、第一審で無罪判決となるが、控訴審で懲役7年の逆転有罪判決が下された。前川さんは、刑期を終えた後に1回目の再審請求を行う。2022年に2回目の再審請求を行うと、昨年の10月に名古屋高裁金沢支部が再審開始を決定。再審開始の決め手となったのは、検察が新たに開示した捜査報告書や供述調書など287点の証拠だった。開示された捜査報告書などには、関係者の供述が変遷していることや、関係者が事件当夜に見たと証言したテレビ番組のシーンが実際には放送されていなかったことなど、警察・検察が隠してきた不都合な真実が記されていた。前川さんの弁護団の団長は「数、内容、質から見ても前例がないほど充実した証拠開示だった。裏を返せば、それだけの物を警察、検察が隠していた」と話した。

教会を訪れ礼拝を行う前川彰司さん

再審初公判の日、弁護団や支援者と共に裁判所へ 
中央)前川彰司さん

長い年月を経て今年3月に再審初公判が行われ、即日結審。残すは7月の判決言い渡しのみとなった。
当時の捜査に一体何があったのか。なぜ前川さんは逮捕されたのか。弁護士や刑事訴訟法の専門家、当時捜査をしていた元警察官、事件を取材してきたジャーナリストなどに、当時の捜査の状況や問題点、開示された証拠などについて話を聞き、事件の真相に迫った。

コメント
ディレクター・竹内慶行(福井テレビ 報道局報道部)

「記者になって1年目の私は、その年に大きく動き出した福井女子中学生殺人事件を担当することになりました。事件当時の事は全く知りませんでしたが、不可能とも言われる再審の扉が開かれたこの事件について、詳しく知りたいと思い取材を始めました。弊社に残っていた当時の映像を見返すと、警察が逮捕後の前川さんの署内での移動の様子を報道関係者に撮影させていたり、はっきりしない回答が見受けられる警察の会見だったりと、私は当時の警察に不信感を抱きました。さらに再審開始の決め手ともなった、検察が開示した捜査報告書などを見ると、当時の警察のずさんな捜査が浮かび上がってきました。前川さんが冤罪(えんざい)だったのなら、警察の正義とは一体何だったのでしょうか。我々マスコミも含め、社会全体で犯人のレッテルを貼っていたのではないのでしょうか。この番組が社会への警告になればと思います」

【番組概要】

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『冤罪と元非行少年 ~殺人事件 38年間の戦い~』(制作:福井テレビ)
≪放送日時≫
7月14日(月) 27時00分~28時00分 ※関東ローカル
≪スタッフ≫
プロデューサー:南谷寛郎(福井テレビ)
ディレクター:竹内慶行(福井テレビ)
撮影・編集:斎藤佳典(福井テレビ)
構成:塩野千景(フリー)
ナレーター:磯村勇斗(俳優 BLUE LABEL)
MA:大須賀尚子(千代田ビデオ)
音響効果:林 章雄(ブライトンミュージック)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。