『令和の開国~外国人材が握る地方の未来』

2025.06.28更新

報道・情報

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:仙台放送)

水揚げ作業を行うカシワンさん

『令和の開国~外国人材が握る地方の未来』

<7月5日(土) 26時45分~27時45分>

外国人労働者が支える令和の地方の現実

日本で働く外国人は230万人を超え、少子高齢化の進む地方で特にその役割は大きくなっている。こうした中、最初の職場で働き続けることを前提にした技能実習制度が、2027年に同じ職種であれば転職も可能な育成就労制度へと変わる。自治体間の競争が始まると予想される中、インドネシア政府と直接つながり、人材確保を始めた宮城県。一方で、言葉や文化の違いによるあつれきも生まれている。地方の未来には何が必要なのか。

外国人労働者に依存深める地方 宮城県が進める土葬墓地の整備計画から見えた「多文化共生」の難しさ

宮城県石巻市。豊かな漁場では、今、インドネシア人乗組員が活躍している。もちろん日本人も多いが、船頭は「彼らがいないと、もう漁はできない」と話す。
宮城県の生産年齢人口は、年1万5千人のペースで減少している。漁業に携わる人も2003年からの20年間で半分以下に減少。7割近くが50代以上と高齢化も進んでいる。一方で、地元の若者は好調な新卒採用を背景に、東京など大都市での就職を目指して巣立っていく。若い世代が減り続ける地方において、外国人労働者はなくてはならない存在になっている。
こうした外国人労働者の受け皿となってきたのが技能実習制度だ。国際貢献のため、日本の技術を教えることを目的に始まった制度は、最初の職場で働き続けることが前提となっていて、国際社会から「奴隷制度」と批判されることもあった。その技能実習制度は、2027年から育成就労制度へ移行する。1年から2年働けば「転籍」という形で同じ業種への転職ができるため、人材の流動性が高まり、地方に来た外国人が、首都圏へ向かう流れができると予想されている。

介護施設で働くヘンディさん

外国人労働者の引き合いが特に強いのが、漁業や農業など1次産業と高齢者の介護。だが、東京をイメージして来日した外国人労働者は、紹介された地方の勤務先に行って、そのイメージの落差に驚くという。自らの夢を追って都会を目指すのは、日本人も外国人も変わりはない。受け入れる側に都合があるように、受け入れられる側にも都合はあるのだ。
円安などにより、外国人労働者にとって、日本はかつてほど魅力的な国ではなくなっている。制度の変更により、国内での競争も激しくなることも見据えて、今、日本の地方自治体は、直接、海外でのPRに力を入れている。中でも宮城県は、インドネシア政府と独自に協定を結び、積極的に人材を取り込もうとしている。2億8千万人の人口を誇り、半数が30歳以下というインドネシア。国民のほとんどがイスラム教徒で、日本とは食事や文化に大きな違いがある。

イラン人のイスラム教徒の土葬の様子

外国人労働者用シェルターの食事風景

イスラム教徒は、宗教上の理由から土葬以外の埋葬方法が認められていない。宮城県は、インドネシア人をはじめ、イスラム教徒にも安心して働き続けてもらうために、2024年、県内で土葬墓地の整備を検討すると表明した。土葬は日本でも違法ではない。しかし県の表明直後から反対の声が上がり、インターネット上では反対署名も行われた。署名を呼びかけたのは20代の女子大学生。新たに墓地を整備するという計画が「日本人より外国人を優遇しているように見えた」ことが活動のきっかけだという。
少子高齢化が進む地方の社会を維持するために、外国人労働者はその一員として欠かせない存在になっている。一方で、急激な変化に不満を感じている日本人が多いのも事実だ。番組では、宮城県をはじめ地方で暮らす外国人労働者を取材。彼らを通じて、日本の受け入れ制度が抱える問題や地方の現状を描く。

コメント
ディレクター・高橋耕平(仙台放送 報道部)

「取材で出会った多くの外国人労働者は20代から30代の若者。家族のため、将来の夢のため・・・来日した理由はさまざまですが、現在29歳で同世代の私は“言葉も通じない海外で働くことを自分は選択できるだろうか”と考え込んでしまいました。また番組では触れられませんでしたが、インドネシアで取材した20歳の男性は、3世代で暮らす実家を担保に借金をして、日本行きのための資金を捻出していました。若くして、一家の期待を一身に背負う男性を目の当たりにして、日本がいかに恵まれた国なのかを実感しました。人口が減り、若者の都市部への流出に直面する地方にとって、若くハングリー精神あふれる外国人労働者は、貴重な存在であることは間違いありません。郷に入っては郷に従えと、日本の常識を押し付けるだけでなく、私たち日本人が歩み寄る姿勢を持つことが、人口減少社会を迎えた日本の未来につながると感じています」

【番組概要】

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『令和の開国~外国人材が握る地方の未来』(制作:仙台放送)
≪放送日時≫
7月5日(土) 26時45分~27時45分 ※関東ローカル
≪スタッフ≫
ナレーター:伊藤 瞳(仙台放送アナウンス部)
撮影:今野大介(東北共立)
ドローン:鎗水耀平(フェローズ)
編集:上池隆宏(東北共立)
CG:清野雅敏、小熊美優(仙台放送エンタープライズ)
MA:市原貴広(ヴァルス)
音効:角 千明(ヴァルス)
ディレクター・構成:高橋耕平(仙台放送報道部)
プロデューサー:山下悠哉(仙台放送報道部)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。