『どえらい大工』

2025.06.16更新

報道・情報

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:東海テレビ)

木材を加工する中村武司さん

『どえらい大工』

<6月23日(月) 26時45分~27時45分>

伝統工法の異端の大工に2年半長期密着

現代の家造りの現場では、スピード化、効率化、コストカットが求められ、ほとんどの大工が工場で加工したプレカットの木材を使い、自ら手で木を刻むことはしない。そんな中、愛知県東郷町の大工・中村武司は、自ら木材を仕入れ、寸法を測り、手で刻む昔ながらのやり方にこだわっている。中村が得意とするのはボルトなどの金具を使用せず、木と木を組み合わせて家を建てる「伝統工法」。木造伝統工法で建てた家は耐震性にも優れ、手入れをすれば100年以上も長持ちすると中村は話す。
“昭和100年”といわれ、時代の転換期を迎えた日本。AI技術が進み“コスパ”“タイパ”が重視される中、自ら手を動かし頭を使い、時には効率が悪くてもじっくり時間をかける、昔ながらの大工の仕事は今こそ見直されるべきである。中村の仕事を通じて、現代に生きる私たちが忘れてはいけない、大切なことを考える。

「サツキとメイの家」から震災復興まで・・・木造の大工ならではの知恵と技術で難工事に挑む

2022年秋、中村は愛知県瀬戸市で、陶芸家のアトリエ兼住居づくりに着手した。築60年の空き倉庫を改築し、木組みのロフトを作り、土壁を張り、外壁は焼杉で作り、天窓からは花火が見える・・・。長く空き家になっていた建物が、中村の手で生まれ変わっていく。一方で、80代の夫婦が暮らす築40年の家のリフォームも手がけた。和室を洋室へ改装しバリアフリー化、トイレの改修が主な依頼内容だった。しかし中村は、床の傾きをミリ単位で調整したり、玄関の扉を修繕したりと、頼まれていない仕事もとことんやった。住む人の暮らしやすさを最優先に考えるのが中村の流儀だった。
そんな中村は20年前、『愛・地球博』で建設された「サツキとメイの家」で棟梁(りょう)を務めた。昭和30年代当時の工法で、本物の家を建てたいと考えていたスタジオジブリの宮崎吾朗監督は、伝統工法ができる大工と評判だった中村に、白羽の矢を立てた。

中村武司さんが手がけたツリーハウス

木組みの伝統工法で建てた木造住宅は耐震性も高く、手入れをすれば100年以上長持ちすると中村は考えている。兵庫県で行われた木造住宅の耐震性を測る実験にも参加し、その後、実験で使われた木材を持ち帰り再利用して自宅を建てた。「自宅を使って実験している」と語る中村は、木造家屋の可能性を信じている。
番組後半では、能登半島地震で被害を受けた、石川県七尾市の老舗しょうゆ点店の復旧工事に中村が駆けつける。100年ほど前に建てられたしょうゆ蔵と麹(こうじ)室は、倒壊の恐れがある危機的な状況だった。建物の傾きと、骨組みとなる木材の長年の腐敗など、想定外の被害を目の前にした中村は、木造大工ならではの知恵と技術で再生の道を切り開いた。

竹こまいの土壁をつくる中村武司さん

ディレクター・近藤雅大(東海テレビ 報道部)

「2022年に開業した『ジブリパーク』で、木造建築を手がけた、一風変わった大工がいるということで取材したことが中村さんとの出会いでした。中村さんが大切にしている木造伝統工法の技術、仕事への姿勢、現代の住宅建設に対する問題意識などを聞く中で、この人をもっと深掘りしたいと思い、長期密着取材をスタートさせました。人間の手作業でしかできない木造伝統工法は、現場でのトラブルも多く、とにかく時間がかかります。“コスパ”“タイパ”という言葉とは真逆の仕事。それでも中村さんが手がけた建物は人々を笑顔にしていきます。おっちょこちょいで、遅刻もしばしば・・・。それでも住む人を第一に考え、仕事で手を抜かない中村さんの性格は多くの人を魅了します。そんな中村さんの姿を通じ、せわしない現代に生きる私たちが見失いがちな、大切なことを考えるきっかけになれば幸いです」

【番組概要】

第34回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『どえらい大工』(制作:東海テレビ)
≪放送日時≫
6月23日(月) 26時45分~27時45分 ※関東ローカル
≪スタッフ≫
ナレーション:滝藤賢一
プロデューサー・構成:伏原健之(東海テレビ報道部)
ディレクター:近藤雅大(東海テレビ報道部)
撮影: 飯澤康平(東海テレビプロダクション)
音声:太田泰介(東海テレビプロダクション)
編集:平岩 修(エキスプレス)
音響効果:江崎健大(東海サウンド)
音楽:堀口純香(ディメンションクルーズ)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。