2024.11.16更新
報道・情報
イスラム教の土葬の葬儀
<11月23日(土) 27時40分~28時40分>
亡くなった人を土葬しなければならないイスラム教。しかし日本で土葬できる場所はごくわずか。日本で暮らすイスラム教徒は、お墓問題に頭を悩ませていた。大分県日出町にイスラム教徒(ムスリム)の土葬墓地をつくろうとしている人がいる。しかし地域住民の一部が猛反対。土葬墓地は、計画から6年が経った現在も未完成のままだ。文化が違う人たち同士が分かりあうことは不可能なのだろうか。多文化共生のあり方とは。
日本で暮らすイスラム教徒(ムスリム)の人口は推計で27万人。今後も増えることが予想されている中で、彼らはお墓の問題を抱えている。イスラム教では亡くなった人を土葬しなければならない。火葬が主流の日本では、イスラム教徒専用の土葬墓地は全国でもわずか。九州には全くない。その一方で、日本で最期の時を迎えるムスリムは増えている。そうした中、大分県日出町でムスリム土葬墓地をつくろうと立ち上がったのが、宗教法人「別府ムスリム教会」のカーン・ムハマド・タヒル・アバス代表。2018年に日出町の山奥の土地を購入し、土葬墓地の建設を計画した。しかし、お墓づくりは前途多難。予定地の約2キロ先には町民たちが農業用水として利用するため池があり、水質への影響を懸念して反対の声があがった。その4年後、カーン代表は墓地の計画場所を変更。同じ町内の町有地を新たな候補地とした。しかし今度は隣接する杵築市の住民たちから反対の声が上がる。住民が飲料水として使用する水源地が約550m先にあるためだ。
土葬墓地建設予定地を訪れるカーンさん
地域の水源地の場所を紹介する杵築市住民
難航するムスリム墓地計画。日出町とカーン代表は杵築市の住民たちへ説明会を開催。WHOの報告書などから水源地への影響はないと説明するも、住民たちの意思は変わらなかった。「水質に影響がないのであれば、前の候補地に戻せばいいではないか」「日出町民の意見は聞いて、なぜ町外の人の意見は聞けないのか」。紛糾する説明会。議論は平行線のまま終わった。
一方、住民たちは、この水源地に特別な思い入れがあった。「干ばつがあった1960年代、自分たちがやっとの思いで見つけた水源地。当時の苦労は一生忘れられない」と話す。農家も「土葬自体に反対しているのではない。でも、なぜこの場所なのか・・・風評被害で物が売れなくなったら一番困る」と話す。突如舞い込んできた異文化の受け入れが小さな地域を悩ませていた。全国の人からも意見が届くようになった。「郷に入っては郷に従え」。こんな言葉を耳にすることもあった。カーン代表は言う「誰かの迷惑になっていると思うと、とても心が痛い。しかし自分たちは土葬する以外に何もできない。にっちもさっちもいかない状況だ」。文化が違う人たち同士が理解しあうことは不可能なのか。お墓づくりは気づけば計画から6年。墓地はいまだにできていない。大分の小さな町で、今まさに揺れている土葬墓地問題。そこから考える、これからの、外国人との共生のあり方とは。
「街を歩けば外国人がいる。コンビニやスーパーなどで外国人の店員が働いている。地方都市の大分でも、そんな光景が当たり前になってきました。それほど日本で暮らす外国人が増えているのだと実感しています。しかし、この問題を取材するまで彼らがお墓に困っているなどとは考えたことがありませんでした。ましてや私は20代。お墓は遠い存在のものだと思っていたのです。土葬墓地をつくりたいイスラム教徒と反対する住民。どちらかが正しくて、どちらかが誤っているとは思いません。ただ、こうした問題が日本で今、実際に起きているということを多くの人に知ってもらいたい。知ってもらうことで何か解決につながるかもしれない。それが今回の番組を作った目的です。あなたの身の回りを思い返してみてください。実は困っている外国人がいるかもしれません。この問題を他人事ではなく、自分事として捉えてもらえれば幸いです」
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