2024.11.04更新
報道・情報
<11月11日(月) 26時55分~27時55分>
2022年に制作した『水どぅ宝』の続編。
基地の島・沖縄で起きている水の異変。県民45万人が飲んできた水道水に含まれていた汚染物質。その正体は・・・PFAS・有機フッ素化合物。「子どもを守ってほしい」―母親たちが声を上げた。しかし日米地位協定が壁となり、汚染源とされる米軍基地の調査すら実現していない。アメリカでは規制値を厳格化。何が起きているのか!?現地で目にしたのは、想像を絶する深刻な事態だった。
今、日本全国で飲み水や河川などからPFAS(有機フッ素化合物)が相次いで検出されている。得体の知れない化学物質、PFASによる水汚染を追ったドキュメンタリーの第二弾。
用水路に流れ出す有機フッ素化合物、PFASを含む泡消火剤
2016年、全国に先駆けて、沖縄では県民45万人が飲んできた水道水にPFASが含まれていたと県が突如発表した。県はアメリカ軍基地周辺から高濃度で検出されているとして「汚染源は米軍基地である蓋然(がいぜん)性が高い」と、基地への立ち入り調査を求め続けている。しかし・・・問題発覚から8年たつ今なお、日米地位協定に阻まれ調査すら実現できていない。
沖縄で声をあげた母親の一人 仲宗根由美さん
「子どもたちを守ってほしい」―不安を募らせる母親たちが声を上げた。前作『水どぅ宝』では、居ても立っても居られず行動を起こす母親たちの姿を伝えた。あれから2年、軍や行政が動かなくても未来の命のために諦めるわけにはいかないと、行動し続ける母親たちの姿を追った。
「水道水の汚染を知らずに飲んできた。子どもたちにも飲ませてきてしまった。健康調査をしてほしい」。母親たちは再三にわたり行政に訴えるも、返ってくる答えは「知見がない」「医学的な評価が定まっていない」というもの。行政が動かない、その間にも汚染物質によって子どもたちの健康が蝕(むしば)まれているかもしれない・・・。母たちは不安を募らせる一方だった。
そんな中、2022年6月、アメリカ環境保護庁はPFASの毒性を重く見て、生涯健康勧告値を従来の3千倍厳しくする新たな方針を打ち出し、2024年4月には、史上初めて強制力を伴う規制値を策定した。実態を知るための調査に消極的で、規制値の議論も進まない日本国内だけに目を向けていても何もわからないまま・・・。取材班は、アメリカで何が起きているかを知るため現地に飛んだ。
米国でPFAS問題の解決を訴える ステル・ベイリーさん
軍事基地に囲まれた、アメリカ・フロリダ州のココアビーチ。そこで出会った女性は、2013年に自身を含む家族4人が同じガンに倒れるという経験をしていた。彼女自身は出産直後だった。子どものために死ぬわけにはいかないと、辛い治療に耐え家族の元に生還。その後、市民団体を立ち上げ調べた結果、2018年、アメリカ国防総省の報告書に驚がくの事実が記されていたことを突き止めた。彼女と家族が住む地域の地下水に、当時安全とされていた値、水1リットルにつき70ナノグラムをはるかに上回る、430万ナノグラムのPFASが含まれていたのだ。またミネソタ州では、がんで余命宣告を受けた20歳の女性の命を賭けた訴えが州議会を動かし、PFASを規制する法案がつくられていた。アメリカでの現地取材を敢行した取材班。そこで目にしたのは、これから沖縄で起こるかも知れない想像を絶する深刻な事態だった。
前作『水どぅ宝』に、沖縄・米国の最新情報を織り交ぜて完成させた続編。これは命の水を守るための、5年に及ぶ市民の闘いの記録でもある。
「“子どもの口に毒を盛ってきてしまったのかもしれない”。水道水にPFASが含まれていた事が発覚した時、不安にかられ声を上げたのは沖縄の母たちでした。当初、子どもを守ってほしいと街頭で訴えても耳を貸す人はいませんでしたが、5年にわたる活動の結果、母たちの声が行政を動かしはじめています。問題が発覚した8年前、この問題は“沖縄の問題”と考えられていたと思いますが、いま各地の飲み水からPFASが検出され、全国の問題となっています。国内では“知見がない、基準がない”とされ詳細な調査すら進んでいませんが、アメリカでは毒性を重く見て政府が厳しい規制に乗り出しました。世界に環境問題を告発したレイチェル・カーソンはこんな言葉を記しています“正確な判断を下すには、事実を十分知らなければならない”。未来の命を守るために、1人でも多くの人に事実を知ってほしいと切に願っています」
掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。