2024.09.27更新
報道・情報
東京都庁の真下で暮らすシンさん(28歳)
<10月4日(金) 25時35分~26時35分>
令和6年、新宿の路上で暮らす20代、30代のホームレス。身なりは至って“普通”の若者。一見しても、話してみても、路上生活者とは言われなければ分からない。彼らはなぜホームレスになり、どのような生活をしているのか、カメラを向けた。明かされたのは、一度は人生を諦めた過去。いまは何も持たない生活だが「自由で楽しい」という。自分の人生を取り戻すかのように路上で暮らす彼らにも、やがて変化が訪れる。
東京都庁の真下、多くのホームレスが暮らす通りで出会ったシンさん、28歳。ヒゲは剃られ、服もきれい、消臭スプレーで臭いのケアも欠かさない彼は「ホームレス=汚いという偏見を持たれたくない」と語る。路上での生活は多くの支援者に助けられ、食べる物には困っていない。更には、ボスと慕うホームレスの先輩の手助けで日雇いの仕事にも登録し、わずかながら現金収入もある。時間があれば新聞を読み、英語も学ぶ、勉強熱心な一面も。
今のシンさんにとって大切な存在なのが同年代のホームレス仲間。お金が入れば飲みに連れて行き、仲間が困っていればお弁当やお金をわざわざ届けに行くことも。シンさんいわく「自分より仲間が苦しんでいる方が嫌」。仲間思いで勉強熱心、働き口ならいくらでもありそうなシンさんは、なぜホームレスになったのか。語られたのは、自ら命を絶とうとした過去・・・それを思えば今は「自由で楽しい」のだという。
ボスと慕うホームレスの先輩にシートを貰うシンさん
東京マラソンに際して“引っ越し”を余儀なくされた
ホームレス仲間の村瀬さん(37歳)は一般企業に勤めていたが、上司のパワハラがきっかけで心を病み、自殺未遂。これまでの生活から逃げるようにたどりついたのが路上だった。仕事のストレスがない路上生活を続ける中でメンタルは徐々に安定。今では、自由になった時間でこれまで挑戦したかった小説の執筆に没頭し、完成した作品はSNSに投稿している。路上生活を始めてから「物事をより考えられるようになった」。こうした生活を続ける中で「社会に戻れるかも」と心境の変化も生まれてくる。
山谷で暮らすホームレス仲間のケイちゃん(32歳)は、シンさんの寝床で一緒に眠るほどの仲良し。そんなケイちゃんに、高校時代の先輩から「福岡で働かないか」との誘いが来る。ホームレス仲間の相次ぐ状況の変化に揺れるシンさん。そんなシンさんはある決断を下すことになる。
「若者ホームレスという存在をどう受け止めれば良いのか、取材をした私自身、肯定も否定も出来ずいまだに答えが出せていません。“若者の貧困”という問題で考えれば、路上で暮らす若者は1人でも少ない方が良いと思います。しかし取材で感じたのは、路上が自殺をなんとか免れた彼らの居場所のようになっている現実です。“心の問題”で考えれば、こういった路上生活という“一時的な逃げ場”があっても良いのではないかと思うようになりました。路上で楽しそうに過ごす彼らは、見る人によっては“若いのに働かないで楽をしているだけ”と映るかも知れません。しかし路上で生き生きとした姿を見れば見るほど、ホームレスに至るまでの“普通の社会生活”が彼らにとってそれだけ生きづらかったということの裏返しだと感じるようになりました。様々な事情はありながらも、生きづらさを感じる人たちへのまなざしが、少しでも温かい世の中であってほしいと、取材を終えた今思っています」
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