『伝え続ける -86歳の戦場カメラマン-』 

2024.09.20更新

報道・情報

第33回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:長野放送)

能登半島地震を取材 被災者の声を聞く
カメラマン・石川文洋

『伝え続ける -86歳の戦場カメラマン-』 

<9月27日(金) 27時25分~28時20分>

86歳戦場カメラマン石川文洋のメッセージ

長野県に住む報道写真家、石川文洋はベトナム戦争の「戦場カメラマン」。銃弾が飛び交う戦闘の最前線に身を置き、戦争の実態を伝える写真を発表してきた。86歳の今、ウクライナ、ガザと、世界が再び戦禍に見舞われていることを憂い「戦争のリアルな姿を知る者」として自分の経験を伝えることに力を入れている。3月には、ふるさと・沖縄の学生と、かつての戦場・ベトナムを訪れ、今なお残る戦争の爪痕と戦後復興の現場を歩いた。

ベトナム戦争で起きたことはウクライナでも起きている。民間人が犠牲になるのはどの戦争も同じ

長野県諏訪市。諏訪湖を望む高台の家に、報道写真家・石川文洋は住んでいる。約60年間のカメラマン人生の集大成となる写真集を出すため、ベトナム戦争時代の写真を整理している。ベトナム戦争(第2次インドシナ戦争)はアメリカが軍事介入して1964年頃(開始年は諸説あり)から1975年まで続き、多くの住民を含む300万人以上の死者を出した。世界から集まったジャーナリストが戦闘の最前線で取材できた戦争はベトナム戦争が唯一だったと言われている。石川もカメラマンとして、攻撃中の場面や戦闘に巻き込まれて犠牲になる住民の様子を写真に収め、発表してきた。今年86歳の石川は、今、自分の経験を若い世代に伝えることに力を入れている。

長野県堀金中学校の講演 戦場で見た光景を話す

昨年6月、長野県安曇野市の中学校に招かれた講演では、戦争の中でも命をつなぐことの大切さ、自分が戦場で目にした悲しみの光景、そして殺りくの残忍な場面を写真とともに生徒たちに話して聞かせた。生徒たちは戦場に思いをはせ、戦争や平和への考えをめぐらせた。ベトナム戦争は「戦争報道」が変わるきっかけになったと言われている。戦場の惨状やアメリカ兵の犠牲の多さがメディアを通してアメリカ本土に伝わったことから反戦機運が高まった。最終的に撤退せざるを得なくなったことを「反省」し、アメリカは報道規制を強めるよう方針転換をしたのだった。
石川の報道写真家としての活動を支えているのは「歩くこと」。20年前には日本を歩いて縦断する旅に挑戦。いまも散歩を日課とし「歩かないと見えない風景がある」と話す。現場を訪れることを信条とする石川は、能登半島地震の被災地にも出向いた。困窮する住民の声に耳を傾け、平和が奪われた日常を戦場と重ねた。

かつての戦場ベトナムを沖縄の学生と訪ねる

ベトナム戦争証跡博物館で写真の背景を語る

今年3月。ベトナムに石川と沖縄の学生の姿があった。ベトナム戦争の帰還兵で心的外傷後ストレス障害に苦しみながらも戦場での経験を語り続けたアレン・ネルソンの遺志を継ぎ、ベトナムの子供たちに奨学金を贈っている「アレン奨学会沖縄」が企画した平和研修だ。学生たちはベトナム戦争の歴史を伝える博物館、枯れ葉剤被害とみられる重い障害を抱える子供たちが暮らす施設を訪れた。戦争終結から半世紀経った今も残る戦争の爪痕を目の当たりにし、沖縄に生きる自分の将来に向けて気持ちを新たにした。
ベトナムから戻り、4月。いつものように自宅近くを散歩する石川は、満開の桜を眺めながら、平和とは何か、そして自分の「使命」を語る。

ディレクター・伊藤晴彦(長野放送 報道制作局)

「石川文洋さんを知ったのは大学生の時。先輩から薦められた著作には、ベトナム戦争中の、傷ついて倒れた人、無残に転がる遺体の写真が並び、"戦争なんて絶対にしちゃいけない"と思いました。長野放送に入社し、石川さんが長野県に住んでいることがわかって連絡を取り、日本縦断の旅に密着して番組を作ったのが20年前。昨年の春、久しぶりに会った石川さんは、"戦争はみんな同じ"と、ウクライナ侵攻で多くの民間人が犠牲になることを心配していました。そして沖縄の学生をベトナムに連れていく予定があるとのこと。この時代に、戦場カメラマンは若い世代に何を語り掛けるのか知りたい、と思ったのが今回の番組の始まりでした。86歳の石川さん。いま話しておいてもらわなければ、戦争の実態がますます伝わらなくなってしまう、そんな焦りにも似た気持ちで制作しました。石川さんのメッセージがひとりでも多くの人に伝わればと願っています」

【番組概要】

第33回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『伝え続ける -86歳の戦場カメラマン-』(制作:長野放送)
≪放送日時≫
9月27日(金) 27時25分~28時20分 ※関東ローカル


≪スタッフ≫
ナレーション:毛織華澄(長野放送 報道制作局制作部 アナウンサー)
ディレクター・構成・プロデューサー:伊藤晴彦(長野放送 報道制作局)
撮影:吉川勝義(長野放送管財)
音声:栁橋万就(長野放送管財)
MA:矢島善紀(MY SOUND COMPANY)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。