2024.09.17更新
報道・情報
新たな命のを取り上げるたかき医院の仲栄美子医師
<9月24日(火) 26時55分~27時55分>
24時間いつ舞い込んでくるか分からない、お産に対応する産婦人科医。2024年4月に導入された医師の働き方改革は、その現場に葛藤をもたらしている。医師の充足度が全国ワーストクラスの新潟県では、限られた医師数で労働時間を制限しなければならず、分娩を休止する病院が出ている。医師も改革の必要性には理解を示す一方、どのように安心して産める環境を維持していくのか悩みは深い。医療現場の変化に社会としてどう向き合っていくべきか。
「故郷で産みたい」そんな妊婦の思いにこたえ、親子で地域のお産を支える産婦人科医がいる。新潟県十日町市にある、たかき医院の医師だ。たかき医院は、2024年4月に地域唯一の産院となった。変化の背景にあるのが「医師の働き方改革」である。隣接する津南町を含む十日町・津南地域の中核的な役割を果たしてきた新潟県立十日町病院は、勤務医の労働時間に上限が設けられたことでお産への対応が難しくなり、分娩を休止することが決まった。責任が一層増すたかき医院だが、存続が危ぶまれる厳しい現実に直面していた。地域の出生数が急激に減り、赤字経営が続いているのだ。さらに院長が高齢のため、今後も地域のお産を支え続けていくためには新たな医師を探す必要があるが、その分人件費がかさむことになる。
そもそも広い県土を持つ新潟県は、医師の充足度が全国ワーストクラスだ。特に労働時間が長いとされる産婦人科医はこの20年間でほとんど増えておらず、地域の偏在に加えて診療科の偏在も大きな課題となっている。県内で最も多い年間900件のお産を取り扱う長岡市の立川綜合病院は、2024年から常勤医が減ることになった。医師の数が限られているため、夜間に分娩に対応した医師も、平日はそのまま朝から外来業務や手術にあたらなければならない。出産年齢が上がり帝王切開など医師が介助するお産も増加している中で、安全な医療を提供するためには休息が必要だと医師自身も感じている。しかし限られた人数、限られた労働時間でどう医療体制を維持していくのか。出産を支える医療現場に現実を突きつけた、医師の働き方改革について考える。
世代を超えて地域のお産を支える親子
左から)仲栄美子医師、高木成子医師
時に難しい判断が迫られる立川綜合病院の郷戸千賀子医師
「“医師不足の新潟県で働き方改革に対応していけるのだろうか…”そんな声が、普段担当している医療分野の取材中に多くの医師から聞こえてきました。中でも産婦人科は対応が最も困難であるとの指摘もありました。24時間365日いつ舞い込むか分からないお産に対応するため、待機時間が長時間に及ぶことが要因です。たかき医院の高木成子医師(79)から“昔は1人で500人のお産をとりあげていた”という話を聞き、いかにこれまで医師の献身によって医療が支えられてきたのか実感しました。その医療を取り巻く環境は、大きく変化しました。産まれて来た私たち全員が関わってきた産婦人科の医師の仕事を、患者自身も自分の事としてよく理解することが大切なのではないかと思います。取材では多くの出産に立ち会い、新たな命が誕生する瞬間をカメラに撮らせていただきました。命を取り上げる産婦人科医の仕事の尊さや、やりがいも感じていただければと考えています」
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