『普通、ただそれだけが』

2023.09.01更新

報道・情報

第32回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:テレビ愛媛)

当選直後の渡邉啓之さん

『普通、ただそれだけが』

<9月9日(土) 27時~28時>

LGBTQ当事者市議が目指す未来とは

生まれたときの性別は男性だが、今は女性として生きる渡邉啓之さん。2022年4月、LGBTQ当事者であることを公表し、松山市議会議員選挙に当選。愛媛県での当事者議員誕生は、初めてのことだった。30年以上、ショーパブやバーなど夜の街で生きてきたが、コロナ禍の中、救済を求めて新たなステージに身をおいた。「理解しなくていい。わからなくていい。でも、一人の人として見てほしい」渡邉市議が、松山市から目指す未来とは。

愛媛県で初めて、LGBTQ当事者であることを公表する市議会議員が誕生して1年。 松山市から目指す未来とは

愛媛県松山市に住む、渡邉啓之さん(50歳・放送当時)。生まれたときの性別は男性だが、今は女性として生きる、トランスジェンダーだ。京都で生まれ、高校中退後に大阪のショーパブで20年以上勤め、松山に移住してバーを経営するなど、長く夜の街で生きてきた。そんな中、突如猛威を振るい始めた新型コロナウイルス。繰り返す感染の波に限界を感じた2022年4月、繁華街の飲食店への救済を求め、松山市議会議員選挙に立候補した。当時、愛媛県内にはLGBTQ当事者であることを公表する議員はおらず、当選すれば歴史的な動きになることから取材を始めた。
チラシ配りや街頭演説を重ねるうち見えてきたのは、明らかな市民の変化。保守的とされる松山市において、新しい風をうたう渡邉さんへの応援の声は目に見えて大きくなり、結果、候補者52人中4位と、予想をはるかに上回る上位当選を果たした。
あれから1年。渡邉さんは、市議として、当事者として何を感じ、どう動いてきたのか。また、松山市は“新しい風”をどう受け止めたのか。自らの恋愛対象が男性であることに気づいた中学生以来、受けてきた差別や偏見。全否定される時代に、自分自身や社会への諦めの中で生きてきたと話す渡邉さんだが、「自分らしく生きる」ことを決して諦めてはいない。目指すのは、新型コロナで打撃を受けた飲食店関係者、障がいのある人や貧困層、そしてLGBTQなどのマイノリティ…弱者とされるすべての人が生きやすい社会。
「理解しなくていい。わからなくてもいい。でも一人の人として見てほしい」。そう訴える渡邉さんが望むのは、「普通」であること、ただそれだけ。当事者市議の1年を通して、マイノリティを巡る今を見つめる。

ディレクター・名護谷希慧(テレビ愛媛 報道制作局アナウンス部)コメント 

「保守的とされる愛媛県松山市で、予想をはるかに上回る得票数で市議会議員当選を果たした渡邉啓之さん。その結果には、“変化”を求める市民の期待が映し出されていました。当事者として、何を感じ、どう動くのか。松山市は、新たな風をどう受け止めるのか。まさに変化の途上にある今を映し出したいと思い、1年の密着取材に臨みました。見た目や振る舞いは女性である渡邉さんでしたが、あくまで自分は男性であるという気持ちが会話や態度の節々に感じられたのが印象的でした。多様な生き方を認める動きが活発になる一方で、差別や偏見が根強く、多数決が主とされる日本社会においては、誰もが生きづらさを感じた経験があるかと思います。すべての人が生きやすい社会を目指し、渡邉市議が求める『普通』とは何なのでしょうか。この番組がLGBTQに限らず、マイノリティに対する考え方や社会の在り方、課題を、自分事として捉えるきっかけになればと願います」

初めての一般質問に臨む渡邉啓之さん

選挙活動中の渡邉啓之さん

【番組概要】

第32回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『普通、ただそれだけが』 (制作:テレビ愛媛)
≪放送日時≫
<9月9日(土) 27時~28時>
≪スタッフ≫
プロデューサー:水沼智寿子
ディレクター・ナレーション:名護谷希慧
編集:友近晶二(EBCプロダクション)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。