2023.08.18更新
報道・情報
なるや店主・堀田晶さん
<8月25日(金) 27時50分~28時50分>
富山県の港町・高岡市伏木に5年前にオープンした「古本なるや」。人と話せる場所を作り、悩みを抱える人たちの居場所にしたいと高岡市の堀田晶さん(48)が開いた古本屋だ。生きづらさを当たり前に言える場所として堀田さんは電話相談や自殺について考える会を開き、ひたすら話を聞く。「なるや」を訪れる人たちは何に悩み、何を求めているのか?そして堀田さんを突き動かすものは何なのか?古本屋の日々を追った。
富山県の港町にある小さな古本屋「なるや」。ここは本を買いに来る人よりも、話を聞いてもらいにやって来る人の方が多いという少し変わった店だ。別名「話せる古本屋」。理想と現実の間で自信を失ったと話す女子学生、会社になじめず引きこもる間に生きる意味を見失ったと話す男性、しつけの厳しい家庭に育ち、自分を押し殺して生きてきたという女性も…。
彼らの話に耳を傾ける店主の堀田さんは、人の役に立ちたいと20数年勤めた会社を辞め、5年前に念願の古本屋を開いた。多くの人の話を聞き、時には医療や公的な支援につなげることもある。富山県の自殺対策の事業として週に一度の電話相談や月に一度、自殺について考える会も開いている。
富山県では令和4年、自殺死亡率(人口100万人あたりの自殺死亡者の割合)が20%を超え、全国でもワースト10位に入る。堀田さんは自ら死を選ぶ人々が誰にも相談できず、話を聞いてもらえない現実に胸を痛め、「人の話を聞ける場を作りたい」と店を開いた。小さな古本屋は決してもうからず、堀田さんは早朝に別のアルバイトをしなければ生活していけない。それでも毎日のように店を開け、話を聞き、帰っていく客に「またいつでもおいで」と声をかける。コロナ禍で人の生のふれあいや、つながりが希薄になった。そして、ネット上では自分を大きく見せ、他者を容赦なくたたく空気が充満する。こんな時代に、話を聞く事で人を支えたいと願う男性の日々を描く。
「この小さな古本屋にどんな悩みを抱えた人たちが訪れるのか?しかもカメラを前に悩みを打ち明けてくれるんだろうか?そんな不安から取材はスタートしました。堀田さんもとには、この半年間“生きているのが辛い”“自殺を考えてしまう”と話す人たちが訪ねてきました。訪れる人の多くがそれぞれに深い悩みを抱えていたのです。堀田さんに話を聞いてもらった人は“誰に話していいのか分からなかった”“これまで誰にも相談できなかった”と言います。さまざま意思伝達ツールが発達した現代ですが、目の前の相手に話を聞いてもらい相づちを打たれることで安らぎを感じる、人間本来の姿も見えてきました。自殺を防ぐことに効率的な正解は無いのかも知れませんが、それでも何かできるはずと考えるのも人間の姿であると信じたい。それが本作の意図です」
古本なるや外観
客の大学生から相談を受ける店主・堀田晶さん
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