『最期を生きて―「看取り」支える訪問診療―』

2023.08.14更新

報道・情報

第32回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:長野放送)

瀬角医師の訪問診療。ガン終末期・女性患者と長女(2022年9月)

『最期を生きて―「看取り」支える訪問診療―』

<8月21日(月) 27時20分~28時20分>

住み慣れた家で自分らしく、最期を生きる

「死ぬのではなく、最期の日までその人らしく生きる」
そう語るのは、訪問診療を専門とする松本市の瀬角英樹医師(62)。コロナ禍で増えた自宅での「看取り」を支えている。妻や子、孫と笑顔の思い出を作った男性患者、兄弟を気遣いつつ自宅に戻った一人暮らしの男性患者、感謝の言葉と手書きのレシピノートを子どもたちに残した女性患者・・・。死ぬことは、最期を生きること。「看取り」の今をみつめた。

「死ぬことは最期を生きること」自分らしくその日を迎えようとする患者と家族、そして支える医師は―。

コロナ禍の2021年、瀬角英樹(せすみ ひでき)医師(62)は、松本市に訪問診療を専門とするクリニックを開いた。病院に通うのが困難な高齢者や、終末期の患者・家族に寄り添う診療を行っている。
訪問診療の現場は患者の人生、家族の姿が凝縮されている。ガンを患い、65歳で旅立った男性は、亡くなるまでの約3カ月、妻と暮らす自宅で過ごした。県外の子どもや孫たちもたびたび自宅に集まり、笑顔の思い出を作った。そして男性は家族に見守られる中、穏やかに逝った。送った妻は、後悔なく添い遂げられた、と言う。
一人暮らしの男性も、余命わずかと知り住み慣れた自宅へ。瀬角医師は、穏やかな最期を過ごしてほしいと考えるが、男性が抱く不安や親族を気遣う気持ちに対して十分なケアを尽くせず、焦りや悔しい思いも・・・。訪問診療はいつも「手探り」だ。
その後、担当となったのはガンを患う女性(57)。調理師で、家でも家族に料理をふるまうのを楽しみにしていた女性は、専門学生の長女と中学生の長男に「レシピノート」を書き残した。そして、亡くなる前日「ありがとう」と家族一人一人に感謝を伝えた。今、子どもたちは母が残したレシピと、共に過ごした時間を胸に、人生を歩んでいる。
コロナ禍に入り、病院で大切な人との別れの時間を過ごすことが難しくなった。終末期の在宅医療の役割は高まっている。クリニック開設後の2年で、瀬角医師への依頼も増えた。死ぬことは、最期を生きること。住み慣れた家で、その人らしく、その家族らしく、その日を迎えようとする患者と家族、それを支える医師を追った。

ディレクター・中村明子(長野放送 報道部)コメント

「“ありがとう”“楽しかったよ”“がんばるから”
ベッドの中で、言葉を紡ぐ患者さんの姿。余命はわずか。痛みと体力の低下で苦しいはずですが、その言葉からは力強さと覚悟を感じました。取材を始めた当初、瀬角医師が話していた“死ぬんじゃなくて、最期まで生きるんだ”。これがその姿なのだと、胸に刻みました。
新型コロナの影響で病院や施設への立ち入りが難しくなり、最期の時をどう過ごすのか、という課題が突き付けられました。しかし、それは本来、生きている限り誰もが向き合わなくてはならない課題です。自分が、あるいは大切な人が“その日”をどう迎えるのか、ためらわずに考えるべきことなのだと教えられました。そのことが、本人や残された人の“生きていく力”になるのだと。“最期まで生きる姿”を取材させてくださった患者さんやご家族に心から敬意を表したいと思います」

ガン患者の男性(中央)、家族と最期の記念写真(2021年10月)

一人暮らしでも最期は自宅で。男性患者(中央)と瀬角医師、弟(2022年8月)

自宅で母を看取った家族は残してくれたレシピで夕食を(2022年12月)

【番組概要】

第32回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『最期を生きて―「看取り」支える訪問診療―』(制作:長野放送)
≪放送日時≫
8月21日(月)27時20分~28時20分
≪スタッフ≫
ナレーション:小林聡美
撮影:砂原卓也(長野放送管財)
ディレクター:中村明子(長野放送)
構成・プロデューサー:嶌田哲也(長野放送)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。