『温もりをつなぐ 雪国の和紙』

2023.07.23更新

報道・情報

第32回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:秋田テレビ)

十文字和紙を作る佐々木清男

『温もりをつなぐ 雪国の和紙』

<7月30日(日)27時30分~28時25分>

手作り和紙の温もりつなぐ 職人と仲間の輪

佐々木清男は、手作り和紙の職人だ。雪国の農家に生まれ、家業の和紙づくりを継ぐ3代目である。和紙の原料はすべて自家製。機械は一切使わず、江戸時代の製法を今も続ける。横手市に伝わる十文字(じゅうもんじ)和紙。手作りならではの温もりが、多くの人を魅了している。正式な後継者がいない十文字和紙の伝統を未来へつなごうと、地域の仲間の輪が広がっている。雪国の片隅で和紙の温もりをつなごうと奮闘する、職人と仲間の姿を追った。

たった一人の伝え手。和紙づくりの技を継承する佐々木清男だが、体力の低下や足腰の衰えを感じ後継者を探していた。

国内有数の豪雪地帯、秋田県横手市。のどかな田園風景が広がる小さな町で、200年以上前に和紙作りが始まった。冬の農閑期の副業であった和紙作り。明治時代の最盛期には、50軒近い家々で和紙を作り、障子紙や灯籠(とうろう)紙などとして出荷していた。
昭和19年生まれの佐々木清男は、家業の和紙作りを受け継ぐ3代目だ。今では、十文字和紙のたった一人の伝え手となってしまった。地元中学に和紙の卒業証書を贈り続けて30年になる。
和紙作りの工程は、数十に及ぶ。原料となる植物の楮(こうぞ)。刈り取り、蒸し上げて皮をむき、さまざまな工程を経て餅状の繊維となる。清男が体力の低下や足腰の衰えを感じ後継者を探す中、伝統の技術を後世に伝えようという地域の仲間の輪が広がり「十文字和紙愛好会」を結成。15人ほどのメンバーが、清男とともに和紙づくりに励みながら、和紙の魅力をたくさんの人に伝える活動に励んでいる。

十文字和紙愛好会のメンバー

ここ数年、愛好会の活動に広がりがみられる。2023年に初めて愛好会の活動に参加した高校教諭は、美術の教材として十文字和紙を取り入れ、「和紙はSDGsにつながる素材」だとして生徒たちと伝統工芸の未来に考えを巡らせた。また、愛好会メンバーは、コロナ禍で見送っていた県外でのワークショップを開催。客との出会いを通じ、メンバー自身も新たな和紙の可能性に気付かされるのだった。
清男が考える「後継」とは。一方で後継者として認められたい愛好会メンバーの思い。灯が消えそうな伝統工芸をめぐり、さまざまな人間模様が交錯していた。

十文字和紙の卒業証書

ディレクター:田口慧一(秋田テレビ 報道部)コメント

「秋田県横手市に伝わる十文字和紙。200年以上前の人々の暮らしを私たちに垣間見させてくれる“生ける遺産”は貴重だ。かつて、農業を中心とした循環型の社会の中で作られていた和紙。その道具には手刈りした稲わらが用いられ、一方では和紙製のコメ袋が活躍していた。今では、稲わらは手に入りにくく、和紙の使われ方も嗜好品としての色合いが強くなってきている。現代の十文字和紙は、大人気だ。展示会には、和紙で作られた帽子やアクセサリーを買い求める人、それにランプシェイド作りを楽しむ人など人の流れが途絶えることなく、コロナ禍が理由なのかわからないが最近注目されることが多くなったそうだ。たった一人の職人である佐々木清男。地元中学に30年贈り続けてきた和紙の卒業証書だけは絶やすまいと、伝統の技を仲間に惜しみなく伝えていた。十文字和紙が愛され続ける限り、その伝統は未来へつながっていくのだろうと取材を通じて感じた」

【番組概要】

第32回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『温もりをつなぐ 雪国の和紙』(制作:秋田テレビ)
≪放送日時≫
7月30日(日)27時30分~28時25分 ※関東ローカル
≪スタッフ≫
プロデューサー:貝田信洋
ディレクター・構成:田口慧一
語り:真田かずみ(フリーアナウンサー)
撮影:西宮隆介 菅原陽久(ヴィジュアルスペース)
音声:江畑隆一 伊藤圭衣
音響効果:伊藤直人(AKITAメディアテクノロジーズ)
CG:武藤 優(AKITAメディアテクノロジーズ)
編集:吉川 博(AKITAメディアテクノロジーズ)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。