2023.07.09更新
報道・情報
オオサンショウウの生態を調査する広島大学の研究者・清水則雄准教授と学生たち
右)清水則雄准教授
<7月16日(日) 26時20分~27時20分>
広島大学で動物の生態を研究しながら、オオサンショウウオの保護活動も行う清水則雄准教授。“清流のヌシ”とも言われるオオサンショウウオは今、人間が手を貸さなければ自然界を生き抜けないほど環境が変化し、絶滅の危機に瀕しているのであった。番組では、もの言わぬ彼らに代わって、叫びを訴え続ける清水准教授を取材する中で、生き物の“命”との向き合い方について考える。
主に中国地方に生息する国の特別天然記念物・オオサンショウウオ。昨年4月、河口から約4.5キロしか離れていない広島の世界遺産・原爆ドームの前でその姿が発見され話題になった。“清流のヌシ”と呼ばれるオオサンショウウオが、なぜこのような都会の真ん中にいたのか。広島大学で生態の研究をする清水則雄准教授を取材する中で見えてきたのは、コンクリートで囲まれた川に生息する特別天然記念物の“過酷な実態”だった。
2022年4月、広島市の原爆ドーム前で発見されたオオサンショウウオ。
近年、度重なる豪雨災害によって、繰り返される護岸工事。その影響でオオサンショウウオたちは住みかを失い、下流へと流されている。さらに、水を貯えるために人の手によって作られた “堰(せき)”の存在が上流に戻ろうとする彼らの行く手を阻む。その結果、下流へ流されたまま元の場所に戻ることができない“清流のヌシ”が都会の真ん中に姿を現したのだった。
この状況に追い打ちをかけるのが、昨年広島県で初めて発見された “交雑種”の存在だ。中国と日本固有のオオサンショウウオの間に生まれた交雑種は、大型で凶暴なため、在来種の「住みか」や「えさ」を奪っているのだった。清水准教授はこのまま増え続けると、生態系が崩れて取返しのつかない未来がくると案じる。さらに、この交雑種について行政側も保護すべきか、処分するべきかの明確な答えを出せていない。同じオオサンショウウオに変わりない交雑種を巡って清水さんが下した決断とは。
岩を登って巣穴に向かうオオサンショウウオ
生きた化石ともいわれるオオサンショウウオ。しかし、今や人間が手を貸さなければ自然界を生き抜けないほど環境が変化し、絶滅の危機に瀕しているのであった。
法律によって厳密に守られるオオサンショウウオ。対して、駆除対象や、食料として命をとらざるをえない生き物もいるのが現状だ。「同じひとつの命ですから、そこをどうやって向き合うのか人間が考えていかないといけない」と清水さんは語る。
“繋ぐ命と扱う命”動物たちを思うからこそ、何度も選択を迫られ、様々な葛藤と戦ってきた。今ある以上の自然を後世に伝えていくために、清水准教授はもの言わぬオオサンショウウオの叫びを代弁していく。
「この番組では、主人公の清水さんの苦悩を描く中で、生き物の“命”について様々な問題提起をしています。災害から人間を守るために繰り返し整備される護岸は、生き物にとって住みにくいものです。そんな護岸がつくられ続けていいのか?また、在来種を絶滅の危機に追い込むオオサンショウウオの交雑種は、人間が持ち運ぶことによって増加していると見られています。罪のない交雑種は保護されるべきか?それとも駆除されるべきか?そして、人間に危害を加える害獣と呼ばれ、駆除されるイノシシと、保護されるオオサンショウウオの命は差があるのか?生き物の命をどう扱えばいいのか?これらの問いを見ている人にも考えてほしいと思いながら番組を作りました。
清水さんを取材していると、“人間が生きていくためには、生き物の命を奪わざるを得ないこと”に改めて気づかされました。生き物との繋がりを多くの人が共感してくれることを願います」
掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。