『ほっこり先生、きたよ~医療的ケア児の人生を診る~』

2023.06.25更新

報道・情報

第32回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:仙台放送)

田中総一郎先生がサンタ姿で往診するようす
手前:竹内楓翔くん、奥:田中総一郎先生

『ほっこり先生、きたよ~医療的ケア児の人生を診る~』

<7月2日(日) 26時20分~27時20分>

どんな時も笑顔で駆けつける小児在宅医 

仙台市の医師、田中総一郎先生(59歳)は宮城県内唯一の小児在宅医。24時間365日の対応で、命に関わる呼び出しも少なくないが、どんな時もやさしく笑顔で患者に話しかける。往診は笑い声であふれている。
医療の進歩によって救える命が増えたが、日常的に医療的ケアが必要な子供の数も増加している。「学校に通いたい」、「仕事をしたい」。子供たちの願いに寄り添い、人生を支える医師の想いと、医療的ケア児を取り巻く現状に迫る。 

「医療は目立たなくていい」 医療的ケア児の思いに寄り添い、人生を診る

宮城県内でたった一人の小児在宅医、田中総一郎先生。患者から「ほっこり先生」と呼ばれている。24時間365日の対応で、命に関わる呼び出しも少なくないが、どんな時もやさしく笑顔で患者や家族に話しかける。
奈良県で生まれ、東北大学を卒業。宮城県内の病院に勤務した後、2016年に小児の在宅診療所を立ち上げた。きっかけは東日本大震災で感じた後悔だった。
日本は「赤ちゃんが最も安全に生まれる国」といわれている。早産による低体重や先天性の病気で死亡する子供の数が減少した一方で、日常的に医療的ケアが必要な「医療的ケア児」は10年間で2倍に増えた。
医療的ケア児は、家の中では「患者」ではなく「家族」。三原結月ちゃん(生後1カ月)は心臓に負担のかかる先天性の病気のため、生まれてすぐNICU(新生児集中治療室)に入った。母親は妊娠中から赤ちゃんに病気があると告げられていたが、病院ではなく家庭の中で一緒に暮らす決断をし、田中先生に訪問診療を依頼した。
気管軟化症などを患う氏家詢くん(6歳)。春からは小学生だが、気管を切開し呼吸を助ける気管カニューレという処置を受けている。カニューレが抜けたら命に関わるが、緊急時を除いて、再挿入できるのは原則医師のみ。これまで宮城県立の支援学校の多くは、学校で気管カニューレが抜けてしまった場合、緊急時でも学校看護師が再挿入することを認めておらず、詢くんの通学の大きな壁となっていた。2021年「医療的ケア児支援法」が施行され、医療的ケア児の日常生活や社会生活の支援は国や地方自治体の「責務」と規定された。病気があっても当たり前を享受できる社会へ。田中先生らの働きかけにより、県教委も動き出した。
レット症候群という呼吸障害を引き起こす病気を患う高橋桃子さんは25歳。子供の時から田中先生の診療を受けている。言葉を発することができず、身体を自由に動かせないため、意思を周囲に伝えることが難しい。「この子のやりたいことは介護の中にはない」。母親は桃子さんの仕事を探し始めた。成人した医療的ケア者が社会で生きていくための挑戦が始まった。
「医療は目立たなくていい」。患者や家族に寄り添い、人生をまるごと支える田中先生の想いと、医療的ケア児を取り巻く現状に迫る。

ディレクター・安達琴乃(仙台放送 報道部)コメント

「田中先生が、患者の家族によく話す言葉があります。“元気に産んであげられなかったと謝るより、笑いかけながら子育てをしてほしい”。その言葉の通り、医療的ケア児やその家族はいつも笑顔で迎えてくれました。“よだれが出ちゃった”。“服が表裏逆だった”。ちょっとしたことで笑いあえる喜びが、田中先生に支えられています。
取材をして感じたのは、病気は大変だけれど、不幸ではないということ。そして、どう生きるかが大事なのだということです。
一方で、ご家族の笑顔の裏に大きな不安が隠れているとも感じました。“人として当たり前に生きたい”という思いがかなわない現実もあります。
もしも、自分の子供が重い病気だったら。いまの日本は“生きやすい”社会でしょうか。この番組が、医療的ケア児を知らない人、育児に悩む人、生きることが苦しい人、いろいろな人に届き、命を考えるきっかけになればと思います」

田中総一郎先生に就学の相談をする氏家詢くんと母親の華奈恵さん
右:田中総一郎先生 左手前:氏家詢くん 左奥:母親・華奈恵さん

仕事に挑戦する高橋桃子さん

【番組概要】

第32回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『ほっこり先生、きたよ~医療的ケア児の人生を診る~』(制作:仙台放送)
≪放送日時≫
7月2日(日) 26時20分~27時20分
≪スタッフ≫
ナレーション:Chiko(青二プロダクション)
撮影:倉岡 潤、佐藤陽一 
編集:上池隆宏 
CG:菊地 渉、矢澤里咲
タイトル:清野雅敏
MA:市原貴広(ヴァルス)
音効:角 千明(ヴァルス)
構成:菊地章博(仙台放送)
ディレクター:安達琴乃(仙台放送)
プロデューサー:澤田滋郎(仙台放送)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。