『エジソンの町工場』

2022.11.05更新

報道・情報

第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:鹿児島テレビ放送)

松元機工株式会社・松元雄二社長

『エジソンの町工場』

<11月12日(土) 26時50分~27時50分>

町工場の3年間、今を生きるヒントがある。

鹿児島県南九州市頴娃町。全国から注目を集める町工場がある。
農業機械メーカー、松元機工株式会社だ。
この工場で生まれた世界初の茶摘み機は鹿児島を全国2位のお茶所にした。
工場を運営するのは松元雄二社長(48)、12年前、「鹿児島のエジソン」と呼ばれた先代の父から工場を受け継いだ。
“農家の声を聞いて作る。作ったモノで人々を喜ばせるー”。
小さな町の小さな工場の3年間、今のニッポンが忘れちゃいけない大切なココロがある。

戦後の復興を技術で支えた町工場。“作ったモノで人々を喜ばせるー”。混迷の時代を生きる道標があった。

鹿児島、薩摩半島の南端に小さな町がある。南九州市頴娃町。ここに全国から注目を集める小さな工場があった。
松元機工、農業機械を製造する町工場だ。創業64年、従業員100人。看板商品の茶摘み機は世界で初めてこの工場が作ったもので、鹿児島を全国2位のお茶所にした。

工場を運営するのは松元雄二社長(48)。見学に訪れた子供たちに自分たちの仕事をうれしそうに話す。工場の一角を走るミニ機関車は“子供たちを喜ばせよう”と先代で父の芳見会長が作ったものだ。桜の木の前で雄二社長はつぶやく。「父は今、どう思っているのだろう」。

先代の芳見会長は戦後、たった一人で岩山を切り拓き、数々の農機具を発明していった。
「鹿児島のエジソン」と呼ばれた全国有数の技術者、ポリシーがあった。
“農家の声を聞いて作る。作ったモノで人々を喜ばせる―”89歳でその生涯を閉じるまで油にまみれ、人々の暮らしを豊かにし続けた。
末息子の雄二社長は先代から12年前、工場を受け継いだ。しかし、業界は不況にあえぐ。
衰退する農業、これまでのようには機械が売れない。先代の父とは違って、技術者でない自分に悩みながら、試行錯誤を繰り返していた。

「鹿児島のエジソン」こと先代の芳見会長

世界初の茶摘採機

先代が作った町工場

先代から技をたたき込まれたベテラン技術者・西牟田昭人は農家に頼まれ、若手と新たな収穫機を作っていた。何度も作り直す。若手を叱咤激励する。
“誰のために、何のために、仕事をするのか―”、若手が改良した機械を西牟田はこっそりのぞきにいく。かつての自分もそうだった。先代に厳しく教えられ、温かく見守られ、技術を身につけた。収穫機が完成する。農家が喜ぶ。これが町工場のモノ作りだ。

町工場はまた、世界初に挑む。無人で動く、ロボット農業機械への開発だ。完成すれば人手不足に悩む農家の救いの一手となる。町工場のこれからを担う3人が抜てきされた。
先代から基礎をたたきこまれたプロジェクトリーダーに、先代を知らない2人の若手技術者。
開発は失敗の連続だった。でも諦めない。やがて新世代の技術者たちは学んでいく。
「仕事は人を喜ばせるためにある」。
計画から2年、ロボット機は、ついに実用化試験を突破した。

他者を思って作る町工場の仕事がたたえられた。お茶の産出額で鹿児島が静岡を抜いて初めて日本一に輝いた。
工場にある桜。農家が先代に贈った桜だ。満開に咲き誇る。

鹿児島の小さな町工場の3年間の物語、今のニッポンが忘れちゃいけない大切なココロがある。

ベテラン技術者と若手

無人ロボット機の開発

満開に咲いた町工場の桜

語り:山田孝之

プロデューサー・四元良隆(鹿児島テレビ放送制作部)コメント

「SDGs達成を目指す時代―“より良い社会”を目指した取り組みが推奨される今、その理想に現実が追いついていないような気がします。
働き方改革が提唱されたものの、精神疾患で苦しむ人は約400万人に上り、20年間で2倍に激増、コロナ不況による派遣切りも相次ぐなど、社会の生きづらさが顕在化しています。

“人は何のために働き、何のために生きるのかー”、
行き先が見えず、揺れる時代、鹿児島の小さな町にある町工場がその意味を教えてくれました。

創業者の先代は“作ったモノで人々を喜ばせる”ことにこだわり続けました。受け継いだ末息子と技術者たちは不況に、農業の衰退、後継者不足と時代の荒波にもまれながらも先代の教えを胸に“誰か”のために必死にコツコツ、作り続けています。
戦後の日本の復興を技術で支えてきた町工場、今も伝わる“誇り”と“ココロ”。
感じてください。その先に困難な時代を生きるヒントがきっと見つかるはずです」

【番組概要】

第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『エジソンの町工場』(制作:鹿児島テレビ放送)
≪放送日時≫
11月12日(土) 26時50分~27時50分
≪スタッフ≫
語り:山田孝之
プロデューサー・構成:四元良隆
ディレクター:前田慎伍
取材:水谷清華
撮影:鈴木哉雄
編集:牧 祐樹
音響効果:久保田吉根(東海サウンド)、江崎健大(東海サウンド)
整音:河合亮輔(東海サウンド)
題字:南 祐子
制作:鹿児島テレビ放送

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。