2022.10.25更新
報道・情報
役者に演技指導をする穂村和彦さん(41歳)
10月29日(土) 26時30分~27時30分
2005年に結成した演劇ユニット「斜陽 MotionPictureSoundTrack(しゃよう モーションピクチャーサウンドトラック)」主宰の穂村和彦さん(41歳)は、日々の暮らしで感じたことや、今の世の中の状況を小さな世界に置き換え、社会風刺を織り交ぜた不条理劇で観客へと伝え続ける。プロの道を選ばずに、地方で演劇活動を続ける中、いよいよ最新作『人工失楽園』の稽古が始まった。コロナ禍でも活動し続ける地方演劇の一幕を追った。
現代はサブスク、ネット配信などで自宅から映画や音楽ライブをいつでも好きな時間に見ることができる便利な時代となった。もちろん演劇もライブ配信で見られるものもある。
そして日々、だれもが自由にコンテンツを投稿し、常にネットワークの中を駆け回っている。
しかし、そんな便利な時代に、たった数回の公演を行うために、寝る間を惜しんで脚本を書き、何日も稽古を重ね、演劇活動をし続けている社会人演劇人たちがいる。
昼間は仕事をし、夜に集まって稽古に打ち込む姿を見て、いったいこの情熱はどこから湧いてくるのだろう…と思い取材を始めた。
僕の友人でもある穂村和彦さんは、演劇を始めて18年。
地元佐賀で、一貫して不条理劇を作り続けている。
「自分が見たい芝居を作ったら、それが不条理劇だった」という穂村さんは、団体名を、劇団っぽい名前にしたくなかったからという理由で「斜陽」と名付けた。しかも、名前の由来は太宰治かと思いきや、「アートスクール」というバンドの曲からとったという。舞台で表現したいものも、従来の演劇を参考にする以外にも、音楽のPVや映画のワンシーンからインスピレーションを受け、演出に組み込むという。独自の感性で作る不条理劇は、他では見ることができない唯一無二のものとなっている。
「芝居以外やりたいことはない」と話す穂村さんは、日中は仕事に従事し、公演日が決まると、プライベートな時間はすべて演劇につぎ込んでいる。「日常の方が、不条理で理不尽で矛盾している」と語る穂村さんは、不条理劇を作り続けることで、世の中へ何かを訴えているのかもしれない。
この2、3年は感染対策を行いながら稽古を行っているが、それでもいつ、だれが感染してもおかしくない状況の中で、彼らは公演に向けて準備をしている。
新作『人工失楽園』の稽古が始まった。今回は、どんな芝居を観客に披露するのだろうか?
コロナ禍の世の中や、身近で感じたことなどを、不条理劇で表現する「斜陽」の芝居は、不条理なことだらけの世の中で、日々生きている我々に、なにかしらの“気づき”を与えてくれるのかもしれない。
稽古中の様子
脚本を執筆する穂村さん
「穂村さんと出会ったのは2006年の夏。当時僕が自主製作映画を作っていた頃に出会い、役者として出演してもらったことがきっかけで知り合いになりました。映像と舞台、それぞれ創作活動を続けていましたが、僕は今の会社に就職。仕事優先の毎日を送る中で、次第に自主製作活動からは離れ…。だんだんと穂村さんとは疎遠になっていました。それから約10年ぶりに穂村さんから連絡があり、彼の芝居を見に行くことに。穂村さんは出会った頃から変わらずに、今も尚、精力的に不条理劇を作り続けていました。
彼はなぜそこまで芝居に打ち込むことができるのか?佐賀で、ひたむきに演劇活動を行う人たちの一幕をご覧頂けたらと思います」
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