『エキストラの宴 俳優介護士9年目の挑戦』

2022.09.30更新

報道・情報

第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:OHK岡山放送)

劇団「OiBokkeshi」主宰で演出家の菅原直樹さん

『エキストラの宴 俳優介護士9年目の挑戦』

10月7日(金) 27時30分~28時30分

劇団が目指す新しい舞台は「新たな居場所」

老いや認知症、死をテーマに演劇をする岡山の劇団「OiBokkeshi(オイ・ボッケ・シ)」、主宰の菅原直樹さんは東京の劇団の元俳優で介護福祉士の資格を持っている。介護に演劇を取り入れ演出家として注目された菅原さんは、この春新たな舞台に挑む。出演者は認知症の患者や脳性まひの女性など、演劇に縁がなかった人たち。菅原さんは生きづらさを抱える人たちの「居場所」を作ろうとしていた。

舞台に立つのは、生きづらさを抱える人たち…。演劇を通して彼らが見つけたものとは。

老いや認知症をテーマに活動を続ける岡山の劇団「OiBokkeshi(オイ・ボッケ・シ)」。主宰の菅原直樹さん(38)は、東京の劇団に所属していた俳優で、東日本大震災をきっかけに岡山に移住し、介護福祉士として働いていた。認知症のお年寄りと過ごす中で、介護に演劇を取り入れることを思いつき“ボケ”は正さず演じて受け入れるという考え方を伝えていった。

菅原さんのワークショップにやってきたのが、妻の認知症で悩んでいた当時88歳の岡田忠雄さん。芝居好きで、老後は映画にエキストラ出演することを楽しみにしていた。今村昌平監督の映画『黒い雨』にエキストラとして参加した経験もある。菅原さんとの出会いで、再び芝居を始めることになった岡田さんは“おかじい”と呼ばれる看板俳優となり、95歳になった今も活躍している。

観客と役者が街の中を移動しながら上演する作品「よみちにひはくれない」では、菅原さんとおかじいが共演、演劇は高い評価を受け多くの賞を受賞、菅原さんは演出家として注目された。

劇団「OiBokkeshi」看板俳優・95歳の岡田忠雄さんと菅原さん

劇団の旗揚げから9年目、菅原さんは新たな舞台に挑もうとしていた。参加するのは、認知症の主婦と介護する夫、脳性まひで体が思うように動かない女性など、何かしら生きづらさを抱えた人たち。稽古場で即興芝居をしてもらい、そこで見つけたものやそれぞれの人生経験を役柄や場面設定に反映し脚本を練り上げようという。演劇を通じて普段言えないことを言ったり、稽古場で対話を繰り返す時間を大切にしたりして、彼らの“居場所”を作ろうとしていたのだ。

初めて舞台に立つ認知症の女性と介護する夫。女性は脚本を覚えられないため、夫の問いかけに答えればいいように演出されている。何をやっても受け入れてもらえる稽古場の雰囲気は、自宅で笑わなくなった彼女を笑顔にした。

新型コロナウイルスの影響などで、公演は延期に。代わりに、できた所までを観客に見せる公開稽古を行うことになった。初めて舞台に立ち演じた個性豊かな役者たちは、自分らしく演じることができたのか。舞台の上に、菅原さんが目指した“居場所”はあったのか。演劇を通して多様性や共生を問いかける菅原さんの挑戦は始まったばかり。

劇団「OiBokkeshi」の舞台

ディレクター・語り:竹下美保(OHK岡山放送報道部) コメント

「劇団の取材は2014年の立ち上げから始まりました。笑いと拍手に包まれた舞台の終わりに、観客が涙を浮かべる姿を度々見てきました。主宰の菅原直樹さんの演出や95歳の看板俳優の熱演には、老いることは決してつらいことではないというメッセージが込められ、生きる勇気をもらえます。実生活でできないことが増える95歳の“おかじい”も、舞台の上では生き生きと輝く。演劇には不思議な力があるのだと菅原さんは言います。自らも演劇に出会って変わることができたという菅原さんは、“生きづらさを抱えた人たちに寄りそうことが自分の生きる道”だと話し、その信念は9年たった今も変わっていません。
舞台には、一人一人違った個性豊かな役者が必要で、それぞれを尊重しあって物語は完成します。そんな物語は、私たちの社会にも生まれていくはずです。多様性との共生を。そんな菅原さんの思いが、生きづらさを感じる多くの人に届くことを願っています」

【番組概要】

第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『エキストラの宴 俳優介護士9年目の挑戦』(制作:OHK岡山放送)
≪放送日時≫
10月7日(金) 27時30分~28時30分
≪スタッフ≫
プロデューサー:太田和樹
ディレクター・語り:竹下美保
構成:梅沢浩一(フリー)
撮影・編集:平井大典(OHKエンタープライズ)
タイトルデザイン:あさののい(フリー)
音効:桧山賢至(メディアハウスサウンドデザイン)
MA:黒須智貴(メディアハウスサウンドデザイン)
取材:白井大輔

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。