2022.09.20更新
報道・情報
深田さんと秋山さん
左から)秋山雅貴さん、深田拓哉さん
9月27日(火) 26時50分~27時50分
石川県金沢市が終戦の翌年に設立した金沢美術工芸大学。キャンパスに足を踏み入れると不思議な空気が流れている。自然の中の秩序を見出そうと、アリの巣をじっと見つめる学生、鉄と会話しながら彫刻を作る学生…。そこに効率化を求めてせわしなく生きる現代人はいない。いるのは、画一的な生き方を求めない若者たちだ。番組は大学院生2人の卒業までの2年間に密着。2人の姿から、常識とは何か、正解とは何か、問いかける。
金沢美術工芸大学の大学院生、深田拓哉。築70年のシェアハウスに、彼女の北原明峰とペットのゴキブリと暮らす。部屋の障子は破れ、着るものには無頓着。バイト代の大半は作品の制作費に消えていく。深田が作るのは鉄の彫刻。飛び出し注意の看板を巨大化させたり、鉄の塊をモーターで回したり。一見何を言いたいのか分かりづらい作品たちを、彼の指導者はこう理解する。
「絶対的にバカバカしいことや無駄なことを、ひっくり返して物を言う」。
深田のシェアハウスには同じ美大生、秋山雅貴も住んでいる。将来の目標は「有名人になること」。肖像画家を目指す彼はあっけらかんと語る。深田と違い、親からの仕送りがない。学費と生活費はアルバイト代と奨学金から捻出する。コロナ禍でバイト先が長期休業になるや、自分の作品を売って学費を稼いだ苦労人だ。
美大生の作品を受注販売する会社を起業するなど、華やかな肖像画を描いては得意のビジネストークで販売までも手掛ける秋山。そんな秋山に対する懐疑的な思いを深田は隠そうとしない。
「片手間で書けるほど僕は器用じゃない」。
「一生懸命考えて作ったものが3万円とか、すごく切ない」。
「絵が面白くない。これを30年続けるとすると、どうなんだろう」。
だが当の深田はというと、言葉による表現の未熟さから、印象に残る作品を生み出しても作品のコンセプトをうまく伝えられないジレンマに陥る。そして、作品が金沢市内の公園に展示されるや市役所が深田に突きつけたのは、「表現としてふさわしくない」という撤去要請だった…。
深田さんの作品「忘れられたモノたちに」
秋山さんの作品「THE FACE OF AKIYAMA」
「カメラの前で取り繕うことなく、喜怒哀楽をさらけ出す姿に惹(ひ)かれ、彼らの取材を始めました。番組に出てくるのは築70年のシェアハウスに暮らす深田さんと秋山さん。そして深田さんの彼女でもある北原さんの3人の若者。物事の考え方や創作姿勢は三者三様。時に学生意識の甘さを痛感したり、社会の不寛容さに直面したりしながらも、それぞれの道を切り開いていきます。取材を進めるうちに、彼らが日常の中での“違和感”や“引っかかり”から作品制作をスタートさせていることに気づきました。その違和感自体はほんの些細(ささい)なものです。でもそれは、今の社会が“同調”や“分かりやすさ”を重視するあまり、見逃してしまっているものなのではないでしょうか。番組を通して、どこかに“引っかかり”を感じて頂けたら嬉(うれ)しいです」
掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。