『最後の声~死因究明から未来を描く解剖医~』

2022.09.02更新

報道・情報

第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:NST新潟総合テレビ)

遺体のCT画像を読影する高塚教授
死因究明教育センター・高塚尚和教授

『最後の声~死因究明から未来を描く解剖医~』

9月9日(金) 27時5分~28時5分

県内2人の解剖医が多死社会へ立ち向かう

新潟県内で唯一、司法解剖などを行う死因究明教育センターには、2人の解剖医がいる。事件・事故・孤独死などで全県の解剖を2人で担う日々は、精神的にも肉体的にも負担がかかる。
一方、死因究明の重要性を全国に問いかけたのは、15年前に県内を巻き込んで起きた“力士暴行死事件”だった。
解剖医が死者の“最後の声”から描く未来、そして高齢化の先にある“多死社会”へと向かっていく日本で、私たちに求められていることとは。

力士暴行死事件から15年、死因究明の現場は変わったのか

新潟県内で唯一、司法解剖などの“法医解剖”を行う新潟大学大学院の死因究明教育センターには、2人の解剖医がいる。事件・事故・孤独死…センターでは、亡くなった際の状況が明らかでない遺体の身元や死因を調べているが、全県の解剖を2人で担う負担は大きい。家族の理解も得ながら、プライベートな時間も仕事に従事する日々。また、時に残酷な事実を伝えなければならない死因の究明には、「伝えてよかったのか」「知らないほうがよかったのでは」という葛藤も。それでも2人は、死者の“最後の声”が未来につながると信じて活動を続けている。

遺体のCT画像を読影する高塚教授
死因究明教育センター・高塚尚和教授

大晦日の緊急解剖へ向かう舟山助教
死因究明教育センター・舟山一寿助教

一方、死因究明の重要性を全国に示したのは、15年前に新潟県内を巻き込んで発生した“力士暴行死事件”がきっかけだった。愛知県内で稽古中に突然倒れ、「急性心不全」「事件性なし」と判断された当時17歳の力士。しかし実家に戻ったその体は、全身傷だらけで変わり果てていた。不審に思った遺族は、「死因だけでも知りたい」と立ち上がり、新潟大学に解剖を依頼。すると、次第に相撲部屋で起きた事件が明らかとなっていった。

事件から15年。日本は高齢化が進み、厚生労働省によれば、2040年には全国で1日に推計で約4600人が死亡する“多死社会”が到来する。それに伴い解剖数の増加も見込まれるが、これまで解剖医の体制に大きな変化はない。一体なぜなのか。何が必要なのか。こうした議論をしている間にも解剖の依頼が途絶えることはなく、大晦日にも死因究明教育センターで緊急の解剖が行われたのだった。

死者の“最後の声”に耳を傾ける解剖医が、死因究明の現場から描く未来とは。そして“多死社会”へと向かっていく日本で、私たちに求められることを考える。

死因究明教育センターの解剖室

ディレクター・大竹智穂(NST新潟総合テレビ報道制作部) コメント

「“今”生きている私たちは、解剖医と出会うことはほとんどありません。死因究明に携わる人の多くは、光の当たらない中で活動しています。この作品では、そんな方々の死者と向き合う姿や、そこからわかったことを社会へ生かそうとする姿を描きました。
私が“死因究明”というテーマに興味を持ったのは、約5年前に力士暴行死事件の被害者の父親を取材したことがきっかけでした。“200%、背伸びして活動した”。そう語った父親は、息子の死の真相を求めて声を上げ続けた結果、体を壊していました。
事件から15年。死因究明の体制は、まだ脆弱(ぜいじゃく)です。“死人に口なし”とは言いますが、もし自分が死んだときに伝えられるべき事実が明らかにされなかったら、皆さんはどう思うでしょうか。
約1年間密着した死因究明教育センターは、緊張感を持って仕事をする一方、普段は明るさの絶えない現場でした。登場する方々が、時々見せる優しい表情にも注目してみてください」

【番組概要】

第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『最後の声~死因究明から未来を描く解剖医~』(制作:NST新潟総合テレビ)
≪放送日時≫
9月9日(金) 27時5分~28時5分
≪スタッフ≫
プロデューサー:丘山 慶
ディレクター:大竹智穂
構成:大竹智穂
ナレーター:杉山萌奈
編集:坂内秀平(株式会社コム)
MA:佐藤誠二(株式会社コム)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。