『カノジョと私の家族のカタチ』

2022.08.05更新

報道・情報

第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:カンテレ)

同性婚訴訟の本人尋問に臨む原告団(右から2人目が麻智さん、その隣がテレサさん)

『カノジョと私の家族のカタチ』

8月12日(金) 26時55分~27時55分

好きになった人は同性。結婚はできない?

国の制度上では、“いない”ことにされているが、パートナーとともに人生を歩みたいと願い、家族を築いている人たちがいる。多くの家族と違いがあるとすれば、好きになった人が同性だったということだけ―。
同性婚を求める裁判で、国側は「結婚は子どもを産み育てる男女を保護するための制度だ」と繰り返し主張する。しかし、子どもを育てている同性カップルは増えている。2組の家族の日常を通して、“家族”とは何かを見つめる。

好きになった人が同性だったというだけで、家族になれない人たちがいる。家族って何?

同性カップルを結婚に相当する関係と認め、同居する子どもも家族として公認する。2020年、兵庫県明石市が全国で初めて導入した「ファミリーシップ制度」だ。子育てをする同性カップルを視野に入れた制度は画期的でありながらも、時代を映していた。近年、子育てをする同性カップルは急増していた。

日本では、同性婚は認められていない。様々な事情で生みの親が育てられない場合、育ての親として子どもを迎える「特別養子縁組」も認められていない。では、子どもを産み育てる場合はどうか―。

そんなときに出会ったのが、大阪に暮らすある家族だった。教師のゆい(37歳)と会社員のユリ(31歳)、そしてユリが出産した子どもの3人家族。海外の精子バンクを利用した。ゆいは自身では初めての、家族としては2人目の子どもを妊娠中だった。「結婚が認められていない中で、理解があるとはいえない社会で、子育てをする困りごとや不安は?」。

取材当初、このようなことをいくつか聞いた。その事実もあるが、それだけではない。一般的とはいえない家族のカタチかもしれないが、子どもにメロメロで、一生懸命育児に奮闘している姿は、“家族”以外の何物でもない。不安や心配は、一瞬にして吹き飛ばされた。

右から)ゆいさん、ユリさん、二人の子ども

そもそもどうして結婚は“男女”に限られているのだろう。その答えを求めて、裁判の傍聴に向かった。同性婚を求める裁判(同性婚訴訟)は全国で提訴され、麻智(43歳)とテレサ(39歳)は大阪地裁で戦っていた。

京都の古い町家を改修して暮らす2人。ご近所にも“ふうふ”として公認だ。「テレちゃん」「麻智」と呼び合い、歩くときには自然と腕を組むことも。10年以上連れ添う2人から、互いを思いやる大切さを日常から教わる。テレサの故郷・アメリカでは婚姻関係だが、日本では赤の他人。何かがあったときに家族として扱ってもらえるのか、不安を抱える。

左から)麻智さん、テレサさん

麻智はセクシュアリティに負い目を感じながら生きてきた。最も理解してほしい親にも受け入れて貰うのに時間がかかった。2人で支え合いながら、一つ一つ乗り越えてきた。声に出せない人たちの思いも背負って「私たちはここにいる」と伝え続けている。

裁判で国は、「結婚は子供を産み育てる男女を保護するための制度で、同性婚は想定していない」と主張し続ける。同性同士で家族なりたいと願い、家族を築いている人たちは存在する。好きになった人が同性だったら、家族になれない。家族って何?

ディレクター・竹中美穂(関西テレビ報道センター) コメント

「取材中、何度も“ふふ”っと頬が緩みました。笑顔にあふれた家族を築いている人たちがいます。時にはけんかもします。それでも、人生を共に歩むことを決めた2組のカップルには確かな絆のようなものがありました。恋人や子どもを大切に思う気持ちは変わりません。多くのカップルと違いがあるとすれば、好きになった人が同性だったということだけでした。
“好きな人を好きだと言って、安心して暮らしたい”。麻智さんとテレサさんが結婚を望むのは、パートナーを守りたいという願いからでした。特別な権利を求めているわけではありません。日本では同性カップルが安心して暮らせる法律がないと伝えても、国からは“想定していない”と言われ続けています。この状況を変えたい、私たちの姿を見せることで勇気づけられる人たちがいるのでは、と2組の家族は批判も覚悟で取材を受けてくれました。家族になれるのは“男女”だけ?家族って何なのでしょうか」

【番組概要】

第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『カノジョと私の家族のカタチ』(制作:カンテレ)
≪放送日時≫
8月12日(金) 26時55分~27時55分
≪スタッフ≫
プロデューサー:柴谷真理子
ディレクター・構成:竹中美穂
ナレーター:大東駿介(A.L.C.Atlantis)
撮影:永田耕一
編集:芳本 武(遊写)
MA:中嶋泰成(シャガデリック)
効果:山中寛子(シャガデリック)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。