『クマとタマ~軽井沢・ベアドッグの取り組み~』

2021.08.25更新

その他

第30回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:長野放送)

ハンドラー・田中純平さんと、2代目ベアドッグの「タマ」

『クマとタマ~軽井沢・ベアドッグの取り組み~』

9月1日(水)26時55分~27時50分

日本初!クマを森へ追い払う「ベアドッグ」

長野県軽井沢町では、1990年頃から別荘エリアに出没するツキノワグマが増大。町から委託を受けてツキノワグマ保護対策管理事業に取り組むNPO法人「ピッキオ」は、人里近くに出没するクマに対し、ほえて森へ追い払う特別な訓練を積んだ犬「ベアドッグ」をアメリカから導入。「人とクマの共存」を目指して活動を続けている。そして今回、日本で初めてベアドッグの繁殖、育成プロジェクトに取り組んだ。番組では、ハンドラー(飼育兼訓練士)田中純平さんに密着し、2代目ベアドッグ「タマ」の出産から子育て、そして子犬がデビューするまでの3年間を追った。

捕獲されたクマにほえる親子のベアドッグ

人とクマの共存を目指す日本有数の観光地・軽井沢 3代目ベアドッグのデビューまでの3年間の成長記録

日本有数のリゾート地、長野県軽井沢町は浅間山麓に広がる森の町。この森の中に多くの住宅や別荘が点在し、人と野生動物が近接している環境にある。軽井沢では1990年頃からツキノワグマが人里近くに出没。ごみ集積所を頻繁に荒らすようになり、観光地や住宅地にも出没する件数が増え、人身被害の危険性も高まった。そこで、豊かな自然を大切にする軽井沢町は2000年、クマを駆除せずに「人と共存する町づくり」を目標に掲げ、NPO法人「ピッキオ」に委託しツキノワグマ保護対策管理事業に取り組んだ。

野生動物の専門知識を持つピッキオのスタッフがまず始めたのが、クマに荒らされないゴミ箱の開発。そして、人里近くに出没したクマを追い払うために、アメリカで育てられたカレリア犬「ベアドッグ」を導入した。ベアドッグは特別な訓練を積んで、大きな声でほえてクマを森へ追い払う。また、捕獲したクマには電波発信器を取り付けて行動を管理。昼と夜に発信器をつけたクマの居場所を確認して、人里に接近するクマがいると、早朝ベアドッグが追い払いをする。

森に逃げるクマを追い払う親子のベアドッグ

プロジェクトに着手して20年、その成果は顕著に現れ、クマの出没や被害を大きく減らすことができた。町内の住宅地でのクマの目撃件数は、最多だった2006年の36件に対し、2016年は9件まで減少、ベアドッグがその一翼を担っている。そして2018年、ピッキオは日本で初めてベアドッグの繁殖プロジェクトに挑んだ。

番組のきっかけは、別番組で出会ったピッキオのスタッフからの情報提供。メスのベアドッグ「タマ」の出産から次世代のベアドッグデビューまでを追うこととなった。プロジェクトの中心となるハンドラー(飼育兼訓練士)の田中純平さんに密着し、2代目ベアドッグのタマの繁殖から出産、子育てと3年間にわたって撮影。取材は、アメリカから来たオス犬との出会いから始まり、タマは無事に6頭を出産。田中さんとタマの子育てが始まった。実はこの出産、すべてが順調だったわけではなく、1頭は仮死状態で生まれ、田中さんが懸命に蘇生して命を救ったのだ。さらに、すべての犬がベアドッグになれるわけではなく、生後2カ月に行われる厳しい適性テストに合格した犬だけに資格が与えられる。そのテストを通過したのが2頭で、このうち1頭は仮死状態で生まれてきた犬「エルフ」だった。2頭は訓練を積んで翌年1歳になりベアドッグデビューを果たした。母親タマの仕事ぶりを子どもたちが見習うという、田中さんがずっと描いてきた夢が現実となった。

訓練を重ねる「エルフ」と新ハンドラー・井村潤太さん

そして2020年、ひとり立ちした3代目ベアドッグ。また新たに若い青年がハンドラーに加わった。仮死状態で生まれたエルフもたくましさを備え、音や匂いに敏感に反応する優秀なベアドッグに成長した。今日もまた、人とクマの共存を目指し、ピッキオのスタッフとベアドッグは軽井沢の森の中で活躍している。

仮死状態で生まれたエルフが、現在ベアドッグとしてタマと共に活躍
左から)井村潤太さんとエルフ、田中純平さんとタマ

出産から3代目ベアドッグが誕生するまでの訓練、そしてデビューの様子などが番組の見どころ。一方、出没したクマを森へ帰すことには反対の声もあり、ピッキオは理解が得られるよう、時間をかけて働きかけを続けている。また、小学校に出向いての出前講座や、人への安全学習にも力を注いでいる。しかし、人とクマの共存には難しい問題もある。二度三度と人里近くに出没するクマは駆除せざるを得ない。田中さんは二度と駆除されるようなクマが出ないようにと奮起する。

2020年度、全国でクマの出没件数、人身被害が最多を記録する中、この番組を通じて改めて「人と自然の関係はどうあるべきか」を考えるきっかけにしていただきたい。

ディレクター・東澤鈴美(長野放送管財)コメント

「初めて会ったベアドッグ・タマの凛(りん)とした気品。クマを大きな声でほえて森へ帰す学習放獣の仕事ぶりを見て、すっかりタマにひかれました。でも、なぜネコみたいな名前なのか不思議に思ったのが3年前です。そこにはベアドッグと寝食を共にして、ツキノワグマの保護管理に携わるハンドラー、田中純平さんの秘めた熱い思いがありました。“人と野生動物が共存できる町づくり”を目標に、20年以上、住民に働きかけ続けて来たピッキオのスタッフの努力が、実を結び始めています。世界的にも知られる観光地でありながら、クマを駆除せずに人との共存を図る町の決断を知り、田中さんに密着する中で私自身、野生動物が暮らせる環境作りや人間の生活などを改めて見直す機会となりました。そして、田中さんのベアドッグへの教育は、人の子育てと相通じる点も感じました。この番組を通して、考えていただくきっかけになれば幸いです」

【番組概要】

第30回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『クマとタマ~軽井沢・ベアドッグの取り組み~』(制作:長野放送)
<放送日時>
9月1日(水)26時55分~27時50分
<スタッフ>
ナレーター:香里有佐(青二プロダクション)
撮影・編集:吉川勝義(長野放送管財)
音効:矢島善紀(マイサウンドカンパニー)
ディレクター:東澤鈴美(長野放送管財)
構成・プロデューサー:春原晴久(長野放送)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。