『じいちゃんの棚田はいま…~百選の里の20年~』

2020.09.02更新

その他

第29回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:テレビ愛媛)

棚田で農作業をする上岡さん夫婦

『じいちゃんの棚田はいま…~百選の里の20年~』

9月9日(水)26時50分~27時45分

棚田を守るじいちゃん 美しい棚田と現実…

「棚田のじいちゃん」と呼ばれる上岡満栄さん76歳。愛媛県内子町で先祖から受け継いだ棚田を守っているが、一昨年、頭の骨を折る事故にあい、棚田での米づくりが厳しくなった。
この棚田は美しい風景から「日本の棚田百選」に選ばれ、地元で守る会を設立した。あれから20年…高齢化が進む中で後継者はおらず、「棚田を守る」ために年々厳しい現実に向き合うようになる。棚田を守るじいちゃん、そして家族の思いを追ったドキュメンタリー。

愛媛県内子町で棚田を守るじいちゃん 年々米作りが難しくなる中、今年の田植えをどうするのか…

愛媛県内子町の「泉谷の棚田」

「棚田」の風景を見ると、「美しい」と感じる人も多いだろう。でもそれはなぜだろう? 「日本の原風景」を思わせるから?そうだろうか?ここで苦労してお米を作っている人がいることを無意識にでも感じて、心が動かされるから尊いものと思うのだろう。
上岡満栄さん(76)は愛媛県内子町の山間に広がる「泉谷の棚田」で60年以上お米を作って暮らしてきた。この棚田は、満栄さんの“じいちゃん”たちが切り開き、“父親”たちが拡げてきたもので、子どもが一人できると田んぼを一枚増やしたという。「泉谷の棚田」は、1999年に「日本の棚田百選」に選ばれた。この棚田を守るのは、たった3軒の農家。当時55歳で一番の若手だった満栄さんが中心となって「棚田を守る会」を結成。棚田のオーナー制度や地元小学生の体験学習など、棚田を都市部との交流の場所として育ててきた。米農家は、他人が田んぼに入るのを嫌うものだが、満栄さんは、いつも笑顔で人を受け入れてきた。それから20年、満栄さんも70歳を過ぎ、みんなから“棚田のじいちゃん”と呼ばれるようになった。

棚田を守る上岡さん夫婦
左から)上岡淳恵さん、満栄さん

2018年11月、満栄さんは棚田で作業中に転落し、頭蓋骨を骨折する重傷を負い、5カ月に及ぶ入院治療をうけた。棚田を守る会は会長不在のまま、田植えができるのか悩んでいた。2019年3月、満栄さんが退院し山に帰ってきた。今までどおり田んぼの作業をやってみるが、思うように体が動かない。いつも笑顔だった”棚田のじいちゃん”も、イライラすることが多くなった。6月末に、何とか田植えを終えた満栄さん。しかし、来年のことは分からないという。

2019年8月、満栄さんは東京にいた。棚田をずっと守ってきた満栄さんが、「棚田学会」から表彰されることになったのだ。同時に賞を受けたのは、フィリピンにある世界遺産の棚田を研究している大学だった。満栄さんと苦楽をともにしてきた「棚田を守る会」のメンバーは、表彰されたことを誇りに感じていた。しかし、満栄さんは浮かない顔をしていた。満栄さんは、棚田の作業が「怖くなった」という。もう一度けがをするのが怖いと…。そして、人に会うのが負担に感じるようになったとも…。
満栄さんは、20年務めた「守る会」の会長を辞めたいとみんなに告げた。「守る会」のみんなも20年分年を取り、高齢だ。来年の田植えはできるのだろうか…。

愛媛県内子町の「泉谷の棚田」の夕景

日本の田舎は、ある時は「限界集落」や「消滅可能性都市」と呼ばれ、ある時は「憧れのスローライフ」や「定年退職後の楽園」と呼ばれる。そのほとんどが、短時間で、おいしいところだけ「つまみ食い」するように取材して作り出される「日本の原風景」のイメージだ。しかし、そこで生まれ育った人たちから見れば、「日本の原風景」だから守っているわけではなく、自分の生まれた故郷を守りたい、ただそれだけだろう。
“棚田のじいちゃん”が20年かけて棚田オーナーや地元小学生の心に伝えたもの、それは「自分の故郷は自分たちの手で守る」という、故郷を思う心なのだ。

カメラマン/ディレクター・友近晶二(EBCプロダクション)コメント

「上岡満栄さんは、“先祖が大切に守ってきた”ものを受け継ぎました。それが“棚田”でした。しかし、自分が“じいちゃん”になったのに、後を任せられる人がいません。満栄さんは20年に渡り、棚田オーナーや小学生たちに田植えや稲刈りを体験してもらいましたが、大怪我をしてオーナー制度をやめると決めました。私は満栄さんが、“家族以外の人間に田んぼをまかせよう”と思ったことをご先祖に申し訳ないと考えたのだと、そう受け止めました。家族にも、地域にも、それぞれの事情がある。この棚田で満栄さんと田植えをした多くの子どもたちに“自分の生まれた故郷”を大切に思う心がきっと伝わったと思います。満栄さん夫婦には“もう無理しなくていい、何も間違っていない”と声をかけたいのです。この番組は“棚田を守れ”という番組ではありません。それぞれの家族により、受け継ぐものは違います。それが守れなくなったとき、あなたは何を考えますか?」

【番組概要】

第29回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『じいちゃんの棚田はいま…~百選の里の20年~』(制作:テレビ愛媛)
<放送日時>
2020年9月9日(水)26時50分~27時45分
<スタッフ>
プロデューサー:片上裕治
ディレクター/撮影/編集/構成:友近晶二(EBCプロダクション)
ナレーター:橋本利恵
CG:木下恵梨佳(EBCプロダクション)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。