『福島県双葉町 ~10年目のふたば、ふたたび~』

2020.07.22更新

その他

第29回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品(制作:福島テレビ)

かつて賑わっていた双葉海水浴場
中谷祥久さん

『福島県双葉町 ~10年目のふたば、ふたたび~』

7月29日(水)26時50分~27時45分

避難10年目~双葉町民の選択 

震災・原発事故の発生後から全域で避難指示が続いてきた福島県双葉町。発生から丸9年が経過しようとしていた2020年3月4日に一部地域の避難指示が解除された。「帰還」の道が見えてきた一方で、町民たちには避難生活を続けてきた“9年”という年月が重くのしかかる。町に帰りたい父親と避難先が新たな故郷となった娘。町の復興に関わりたいと大学に進む女性。避難指示解除の裏で揺れる2つの家族の思いと選択とは。

震災・原発事故から9年。「帰りたい」「帰らない」…思いが揺れる双葉町民の選択とは。

3月4日に避難指示解除・検問ゲートが外される瞬間

福島県内で唯一、町の全域で避難指示が続いてきた双葉町。震災・原発事故の発生から丸9年が経つのを目前に控えた2020年3月4日午前0時、一部の区域ではあるものの初めて避難指示が解除された。
ただ、避難指示が解除されたエリアに住民が住むことは許されていない。双葉町が住民の居住開始を目指すのは、さらに2年後の2022年春。「帰還」という選択肢が現実味を帯びてきた一方で、町民たちには震災・原発事故から避難生活を続けてきた9年という時間が重くのしかかる。

双葉町で生まれ育った中谷祥久さん(39)は娘2人を持つ父親。震災・原発事故が発生するまでは町の消防団の一員として地域を守る活動はもちろん、江戸時代から続く町の伝統のダルマ市を支えてきた。地元に対する思いは人一倍強く、避難生活を送りながら双葉町に帰りたいと願い続けてきた。
しかし、双葉町では、荒れてしまった建物の解体が進んで更地が目立つようになり、「復興シンボル軸」と名付けられた道路の建設も進む。そして、家族内の意見も避難生活を送る中で分かれてしまった。震災直後は「自分の家に帰りたい」と言っていた子どもたちも、時間が経つにつれて避難先での生活になじみ、ついには故郷のことを口にしなくなった。避難先のいわき市にはすでに新たに自宅を建てていて、双葉町の自宅も2019年に解体してしまった。

町内の消防屯所前でたたずむ中谷祥久さん

そんな中、国と福島県・双葉町は2020年3月4日に町の一部地域の避難指示を解除することを決定。会見の席上、双葉町の伊澤町長は、「戻りたい、戻ろうとする人たちのための町をまず“新たに建設”する」と発言した。原発事故に伴い避難指示が出された市町村の中で最も復興が難しいとされた双葉町に復興の兆しが見えてきたが、それは、中谷さんたちが望む「かつての双葉町に戻る」という希望とは異なるものだった。
震災当時7千人いた町民は、9年が経過しても全国で避難生活を続けていた。その町民の絆をつなぎとめようと、中谷さんが中心となり、避難先のいわき市でダルマ市を開催。会場には多くの町民が集まり、久しぶりの再会を喜んだ。ダルマ市を一緒に作り上げた消防団の仲間と杯を交わすうちに、“自分の原点・源”と考える故郷への思いがこみ上げ、「震災前の双葉町に帰りたい」と本音を漏らした。

帰還困難区域の自宅に一時立ち入りをした澤上美羽さん

一方、家族全員で双葉町に帰る予定の澤上美羽さん(18)。双葉町で生まれ育ち小学3年生の時に被災した。同級生のほとんどが避難先の中学校に進学する中、澤上さんは親の反対も振り切って、いわき市に新設された双葉中学校に進む道を選んだ。15歳の誕生日を迎え、震災後初めて帰還困難区域へ一時立ち入りをした澤上さんを待っていたのは、野生動物に荒らされてしまった自宅。かつての記憶とは違った様子になってしまった町の現状を目の当たりにしながらも、澤上さんは「双葉町に帰りたいし復興にも関わっていきたい。“自分で帰れるようにしたい”と思いました。“双葉町は帰りたい場所で帰るべき場所”だと思います」と話した。澤上さんがそう考える原点にあるのは、双葉町で過ごした震災前の楽しかった記憶。「双葉町の役に立てるように色んなことを知っておきたい」と考え、震災から10年目の春に家族と離れて大学に進学する道を選んだ。

同じころ、中谷さんの娘・結愛さんは高校に進学した。「娘にとっての故郷はもしかしたら(避難先の)いわき市かもしれない」と考えるようになった中谷さん。たとえ避難先のいわき市と双葉町に分かれて暮らすことになったとしても、町に帰ることができるようになったら、町に帰る町民の1人として頑張っていこうと考えている。

ディレクター・小野田明(福島テレビ報道部)コメント

「中谷祥久さんとの出会いは2013年に仮設住宅で開催された盆踊りでした。“双葉に帰れるまで”と避難先でも町の伝統行事をつないできた中谷さん。当初は正直、お祭り好きの兄貴分というイメージでした。しかし避難生活が長引くにつれて、なぜこの人は町のためにそこまで頑張れるのだろうという思いに変わりました。中谷さんの魅力にひかれつつ、その原動力を知りたいと思いました。
一方、澤上美羽さんと初めて会ったのは2014年、避難先で再開した双葉中学校の入学式です。“親に反対されても入学したかった”と話す少女に驚かされました。初めての一時帰宅、荒れていた自宅に最初は戸惑った様子の美羽さん。その数時間後には、自分で帰れるようにしたいと目標を掲げる15歳にまたまた驚かされました。避難生活も今年で10年目。それでも双葉町に帰りたいと願う2人の姿からは、原発事故からの復興において大切なものが見えてくると思っています」

【番組概要】

第29回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『福島県双葉町 ~10年目のふたば、ふたたび~』(制作:福島テレビ)
<放送日時>
2020年7月29日(水)26時50分~27時45分
<スタッフ>
ナレーター:桜庭梨那(声優・フリー)※双葉町出身
撮影・編集:貝沼大輔(福島映像企画)
音声:佐々木 鎮
MA:新國伸太郎、熊谷和浩(福島映像企画)
CG:一條和央理(福島映像企画)
取材・構成:小野田 明
プロデューサー:瀬谷健太

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。