FNSドキュメンタリー大賞

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2019.10.1更新

夕日の街・松江

夕日の街・松江

第28回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
夕日の街の男たち ~人生100年時代の歩き方~

10月1日(火)26時15分~27時10分

人生100年時代の今、長い余生の生き方とは

壊れたおもちゃをボランティアでなおす「おもちゃの病院」。
島根県松江市では月に数回開催されており、職場など現場の第一線から引いた男性たちが、喜々としておもちゃをなおしにやってくる。
「人生100年時代」という言葉が現実味をおびてきているが、
“その生き方は”というと誰も教えてくれず、皆が手探りで探し求めている。
松江おもちゃの病院で活動する3人の男性たちをみつめ、もちろんひとつではないその生き方を考えた。

人生の終盤、夕暮れの頃に「松江おもちゃの病院」に出会った3人
おもちゃをなおす野口三郎さん(左)と石原久芳さん(右)

おもちゃをなおす野口三郎さん(左)と石原久芳さん(右)

松江市立病院に隣接する建物内にある、子育て支援施設「あいあい」。入学前の子どもたちの遊び場となっていて、毎日親子連れが訪れている。
そして、その一角で毎月第2土曜日に開かれる「松江おもちゃの病院」。
「松江おもちゃの病院」は1994年に始まり、25周年を迎えた。こうした活動は、子どもたちに物を大切にする心を育てる重要な仕事として以前から行われ、1996年に全国組織化されている。現在約600の団体が所属し、全国に約1600人のドクターがいる。
松江の病院には足が取れたぬいぐるみやラジコン、レジスター、音の出る本、30年以上前のものなど、様々なおもちゃが持ち込まれる。治療にあたるのはボランティアのドクター。料金は基本的に無料。かかる費用といえば材料の実費代で数百円程度。ICチップが壊れたものやボロボロのプラスチックのおもちゃは治療できないが、それ以外はほとんどなおる。その場での治療が難しいものは入院となり、ドクターが自宅で治療する。そんなドクターの多くは中高年の男性。番組では、中でも職場など現場の第一線を退き、年金生活をしている3人の男性に注目した。

松江おもちゃの病院の代表、野口三郎さん(67歳)
大手電気機器メーカを退職後、妻の故郷でもある島根にIターンしてきた。現役の時は技術職をしていたこともあり、基板を使ったおもちゃも難なく治療する。おもちゃの病院以外にもボランティア活動などをしていて、現役の時よりも多忙な日々を送っている。

おもちゃをなおす小川忠造さん

おもちゃをなおす小川忠造さん

最高齢の小川忠造さん(89歳)
戦争も体験した元船員。陸にあがってからは自動車修理工場などに勤務していたが、68歳の時におもちゃの病院に出会った。老眼も進み、ハンダ付け作業もなかなかうまくできないが、それでもなんとかおもちゃをなおしていく。

石原久芳さん(69歳)
36年前、東京・府中の「おもちゃ病院」の立ち上げにも参加したベテランドクター。壊れた箇所を予測し、手際よく治療していく。独身で自由気ままな東京ライフを送っていたが、親の仕事を継ぐため10年前に東京からUターンした。

3人は毎月、喜々として「松江おもちゃの病院」にやってくる。時間を忘れ、次々と持ち込まれるおもちゃの治療に没頭している。しかしその一方、進む老眼、衰える体、視野に入ってきた自分の最期、東京への未練、孤独など、それぞれがつらさも抱えている。

「人生100年時代」という言葉が現実味をおびてきている。平均寿命は伸びる一方。雇用の再延長がおこなわれているとはいえ、仕事をリタイアした後、長い余生をどう生きるのか?今や多くの日本人にとって重要な社会問題となっている。本屋をのぞけば「定年入門」「人生の終い方」など高齢者向けの本がずらりと並んでいる。しかし“その生き方は”というと誰も教えてくれず、皆が手探りで探し求めている。

自分の存在価値はどこにあるのか?
生きる意味は何なのか?

そんな中、3人の男性は人生の終盤、夕暮れの頃に「松江おもちゃの病院」に出会った。一見、彼らがおもちゃをなおしているように映る。しかし、この病院がなおしているものは本当におもちゃなのだろうか? 夕日の街・松江で3人の男性をみつめ、残りの人生をどう生きるのか?もちろんひとつではない答えを考えた。

コメント

ディレクター・奥村亜希(TSK山陰中央テレビ報道部)

「子どもが壊したおもちゃ。残念だけど、ほぼ捨てていました。そんな私の中の常識がある日覆りました。取材で訪れた“松江おもちゃの病院”。ぬいぐるみもプラスチックのおもちゃもみんななおるのです。おもちゃをなおすドクターの多くは高齢者。報酬はないのに、皆楽しそうにおもちゃの治療に励んでいました。そして、なおるととびきりの表情をするのです。そんな中3人の男性に注目しました。皆人生の終盤、夕暮れ時になってから“松江おもちゃの病院”に出会いました。老いていく体、残り少なくなる時間への焦り、孤独。それぞれが、不安を抱えていました。それでも3人はおもちゃの病院に来ると輝くのです。人生100年時代。多くの人が長い余生の生き方に不安を抱いています。でも新たな出会いはいつやってくるか分かりません。明日出会うかもしれないのです。終盤の人生をどう生きるのか?答えを探しあてるヒントになればと考えました」

番組概要

タイトル
第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『夕日の街の男たち ~人生100年時代の歩き方~』(制作:TSK山陰中央テレビ)
放送日時
10月1日(火)26時15分~27時10分
スタッフ
ナレーター
目黒光祐
MA
上松紗弓
音効
金子寛史
撮影
野田貴
構成
関盛秀
ディレクター
奥村亜希(TSK山陰中央テレビ)
プロデューサー
古川淳(TSK山陰中央テレビ)

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。