FNSドキュメンタリー大賞

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2019.10.6更新

スーパーボランティアと呼ばれる尾畠春夫さん

スーパーボランティアと呼ばれる尾畠春夫さん

第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
尾畠春夫 人生は恩返し ~スーパーボランティアと呼ばれた男~

11月27日(水)26時50分~27時45分

スーパーボランティア・尾畠さんの真の思い

2018年、山口県で行方不明となった2歳の男の子を無事救助し“スーパーボランティア”として脚光を浴びた、大分県日出町在住の尾畠春夫さん(79)。
テレビなどでは常に明るく振る舞う反面、脚光を浴びたことで生活が一変しストレスを感じることもある。
そして、唐突に見えた“東京から大分までのおよそ1100kmを歩く旅”。これも実は「長年の夢」として挑んだことだった。沿道に人が殺到し結局途中で断念したものの、挑戦の裏には尾畠さんらしい理由があった。恩返しに生きる尾畠さんの半生を通じて私たちが得られる教訓とは…。

ボランティアにかけるその半生と夢
2018年8月山口県で行方不明となった男の子を救助し、一躍時の人に

2018年8月山口県で行方不明となった男の子を救助し、一躍時の人に

いまや“スーパーボランティア”として広く知られるようになった尾畠春夫さん。
私たちテレビ大分は、2011年の「東日本大震災」の取材で尾畠さんと出会い、現在まで取材を続けている。
脚光を浴びてもひたむきな姿に変わりはない。取材を始めた当時から被災地に迷惑をかけないようにと、車に必要な食料や水を積み込んでボランティアに駆けつけ、車中泊をしながら活動を続ける姿を見続けてきた。
尾畠さんは去年8月、山口県内で行方不明となった2歳の男の子を無事救助したことで注目されたが、その際に長年取り組んできたボランティアの活動も称賛され、一躍時の人となった。こうして尾畠さんは“スーパーボランティア”と呼ばれるようになったのである。2018年の新語・流行語大賞のトップテンに選ばれたこの“スーパーボランティア”という言葉。しかし、当の尾畠さんはそう呼ばれることに対して「わしはスーパーでもコンビニでもない」と答えるのが定番のジョーク。新語・流行語大賞の表彰式は辞退した。「私は一ボランティアで、一尾畠春夫」と話し、脚光を浴びたとしてもその姿勢に変わりはない。

西日本豪雨の被災地で災害ボランティア(2018年8月・広島県呉市)

西日本豪雨の被災地で災害ボランティア
(2018年8月・広島県呉市)

世間が“スーパーボランティア”と称賛する中、長年取材してきた私たちテレビ大分だから伝えられる尾畠さんの姿があるのではないかと感じ、撮影を続けてきた。尾畠さんの行動の真意を探ることで、一人一人がボランティアについて考えるきっかけになるのではと思ったからである。

いつも明るく振る舞う尾畠さんだが、実は貧しい家の事情で子供の時に農家へ奉公に出された苦労人である。それでも、人の親切に触れて成長し、営んだ鮮魚店は地元の人たちに愛されてきた。趣味の山登りがきっかけで“登山道整備のボランティア”を始め、そこで培った経験がやがて“災害ボランティア”に生かされていく。尾畠さんがボランティアに汗を流すのは、これまで自分を助け支えてくれた人たちや社会に対する恩返しをという思いがあるからである。男の子の捜索に向かったのも「困った人の役に立ちたい」という思いからだった。
男の子を無事発見したことで、尾畠さんの生活は一変することになる。多くの人から称賛され、表彰も相次いで受けた。取材も殺到したものの、脚光を浴びるのは人生で初めての経験であり、自分のペースが保てないいら立ちもあった。
「“スーパーボランティア”、あれがなければ最高にいい年だった」そう語る尾畠さんだが、これもまた勉強と前を向く。自分はこれまで通りであり続けたいと感じていた。

東京から大分までの約1100キロの徒歩の旅に挑む(2019年2月)この番組で真の目的が明らかになる

東京から大分までの約1100キロの徒歩の旅に挑む
(2019年2月)この番組で真の目的が明らかになる

夢に挑戦する気持ちも変わりはない。これまでにも幾度か徒歩の旅をしていたが、今年1月には“東京から大分までのおよそ1100kmの徒歩の旅”に挑んだ。「長年の夢」だったと語るこの挑戦。ただ“スーパーボランティア”の挑戦に世間の関心は高まり、各地の沿道には人が殺到することになる。混乱を避けるため、尾畠さんは旅を1カ月余りで断念せざるを得なかった。旅の目的は「子供たちの幸福を願って歩く」ということ以外、多くを語らなかった尾畠さんだったが、番組では歩きの旅に込められた真の思いが明らかとなる。

近年、自然災害が相次いで起きている。次は自分の身の回りで起こるかもしれないという「あすは我が身」という時代だからこそ、私たちはどう生きるのか。尾畠さんがそのヒントになるのではないかと思う。この番組では恩返しに生きる尾畠さんの半生を、2011年からの秘蔵映像や関係者の話、取材を続けてきたディレクターの思いを交えて伝える。番組を通して“スーパーボランティア”とまではいかなくても、できる範囲で支援を行う「ボランティア」が一人でも増えることを期待したい。悲しい災害は避けられないかもしれないが、見返りを求めず行動する尾畠さんの姿を通じて、支援の輪が広まることはきっと今の時代の希望になると感じている。

コメント

ディレクター・白井信幸(テレビ大分 報道部)

「取材を始めて8年。私は尾畠さんが“スーパーボランティア”となる様子をずっと見続けてきました。これまでは知る人ぞ知る尾畠さんの活動でしたが、今では全国に知れ渡りました。尾畠さんはこれまでの取り組みもさることながら、明るい人柄やエピソードも豊富とあって、取材が殺到。一方で、私はこの熱狂に違和感もありました。そうした気持ちが芽生えたのは、これまでの取材を通して尾畠さんの見返りを求めず、陰ながら人を支えたいという思いにずっと触れてきたからだと思います。単なる“スーパーボランティア”や“人気者”として伝えることでいいのか。取材を続けてきた私たちだからこそ尾畠さんの真の思いを伝えなくてはと撮影に臨みました。支援に汗を流す姿を通して尾畠さんは今、多くの人に共感を与えていますが、実は尾畠さん自身も人から受けた善意に影響されてボランティアを始めました。番組を通じて善意の輪がさらに広がることを願っています」

番組概要

タイトル
第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『尾畠春夫 人生は恩返し ~スーパーボランティアと呼ばれた男~』(制作:テレビ大分)
放送日時
11月27日(水)26時50分~27時45分
スタッフ
ナレーション
野島亜樹
撮影
須賀則友
撮影・編集
荒木崇史
音声
佐藤大輔
MA
板井雅也(映像新社)
撮影・ディレクター
白井信幸
プロデューサー
小野宏治
チーフプロデューサー
園田雅之

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。