FNSドキュメンタリー大賞

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2019.9.18更新

強制不妊手術訴訟の提訴のため仙台地裁に入る原告団

強制不妊手術訴訟の提訴のため仙台地裁に入る原告団

第28回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
きえない痛み~強いられた不妊手術~

9月15日(日)25時55分~26時50分

旧優生保護法によって奪われた人生
優生保護法

優生保護法

戦後半世紀近くの間、遺伝性とされた病気や知的障害のある人たちは法律によって子供を産むことを許されなかった。
「不良な子孫の出生を防止する」とうたった「旧優生保護法」。
不妊手術によって人生を奪われた人たちの「痛み」は、なぜ放置され続けてきたのか。
関係者の証言と全国の自治体に残された公文書から被害の実態に迫る。

知的障害児収容施設の子供たち(1960年)

知的障害児収容施設の子供たち(1960年)

情報開示請求書を書く飯塚淳子さん(仮名)

情報開示請求書を書く飯塚淳子さん(仮名)

今では障害者差別・人権侵害とされる旧優生保護法下の強制不妊手術は、敗戦後の日本を立て直そうと考えた人々の善意にもとづいていた。
遺伝性とされた病気や障害を持つ「不幸な子供」が生まれないようにすることが「公共の福祉」だと考えられていたのだ。
一方で、不妊手術を強いられた人たちは人権を踏みにじられ、公益の代償と言うにはあまりに深い傷を負わされた。

2018年、旧優生保護法の違憲性を問う全国初の国家賠償請求が、宮城県の仙台地裁に起こされた。しかし翌年、国会は判決を待たずして、救済法を成立させた。
法文には、皆に責任があるから皆で謝罪しようという趣旨の文言が盛り込まれた。責任の所在は明らかにされず、しかるべき糾弾もなく、被害の全容解明もいまだなされていない。
戦後最大級の人権侵害とされる割に、当事者不在のまま、事態の収束が図られていくのではないかと強い危機感を抱いている。

番組には様々な理由や状況で不妊手術を強いられた被害者が登場する。残酷な被害の一端を知ってもらうことで、この問題に少しでも向き合ってくれる人が増えてほしいと願う。

コメント

ディレクター・関隆磨(仙台放送報道部)

「この番組のローカル放送3日後に、仙台地裁で強制不妊手術をめぐる全国で初めての判決が言い渡されました。その内容は、旧優生保護法は憲法違反でありながら、救済策を長年講じなかった国に法的責任があったとは言えず、原告の損害賠償請求を棄却するというものでした。被害者にとっては、誤った法律によって無理やり体にメスを入れられたのに、国は謝ることも補償することもしないという、屈辱的な判決内容でした。原告は控訴し、今も闘いは続いています。
長年、この強制不妊手術の問題が表面化してこなかったのは、生殖能力を奪われた被害者がその屈辱ゆえに声を上げられなかったこと、この国において優生思想が根強く存在していたこと、マスコミも沈黙していたことなどが理由に挙げられます。今後同じ過ちを繰り返さないために、この番組制作をゴールとせず、引き続き取材を行いたいと考えています」

番組概要

タイトル
第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『きえない痛み~強いられた不妊手術~』(制作:仙台放送)
放送日時
9月15日(日)25時55分~26時50分
スタッフ
プロデューサー
菊地章博
ディレクター
関隆磨
撮影
下山雄生
編集
畠山由美子
CG
  • 小野寺貴文
  • 清野雅敏
  • 村上香
ナレーション
  • 井上富美子
  • 麻生智久(青二プロダクション)

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。