FNSドキュメンタリー大賞

FNSドキュメンタリー大賞

2019.8.19更新

中学校教諭・槙原淳幹さん

中学校教諭・槙原淳幹さん

第28回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
マッキー先生 全力投球 みんな野球が教えてくれた

8月21日(水)27時~27時55分

マッキー先生全力投球 エース15年の軌跡
「岡山桃太郎」のエース・槙原さん

「岡山桃太郎」のエース・槙原さん

「夢は教師になって子供たちに野球を教えること」。
岡山県津山市の中学校教諭・槙原淳幹さん、29歳。
幼い頃の事故で右腕の自由が利かないが、小学校から大学まで野球一筋に打ち込んできた。彼は岡山県の障害者野球チーム「岡山桃太郎」のエースとしても活躍。教師になって7年目、人生の転機を迎えた槙原さんは、彼を支えた「野球」の奥に大切な意味があったことに気が付く。教師になった障害者野球のエース・槙原さんの15年の軌跡を追う。

取材を始めたきっかけ

彼の取材を始めたのは2005年、障害者野球チーム「岡山桃太郎」に“左腕だけでボールもバットも自由自在にあやつる高校生の野球少年がいる”という取材がきっかけだった。当初はテレビの取材が入ることによって学校に迷惑をかけたくないと、父親から取材許可を得られなかったが、何度も手紙を書くなど思いを伝えることで理解して頂き、テレビでは唯一岡山放送だけが取材を許された。その後、家族の協力を得ながら、約15年にわたる取材を行い、このドキュメンタリーが実現した。

高校生の時に障害者野球と出会い、人生の転機を迎え葛藤しながらプレーを続けていく

槙原さんは生後10カ月の時に車の事故で右腕が不自由になったものの小学生の時に野球を始め、左腕だけで何でもこなし、健常者の中でレギュラーを勝ち取るなど、野球一筋に打ち込んでゆく。

中学3年の時に、岡山県の障害者野球チーム「岡山桃太郎」に入団し、エースとしてメンバーを引っ張ることになる。「岡山桃太郎」のメンバーは下は中学生から上は70代までと幅広く、障害や職業も様々で、野球を愛する憩いの場だった。障害者野球チームの入団が社会勉強になればと願った父親の思いとは裏腹に、槙原さんはとにかく勝ちにこだわり、全国優勝を目指して練習を続ける。ある日、槙原さんは「障害者野球は福祉じゃない!」と反発し、父親と言い合いになる。15年の中で槙原さんは、父親の思いを受け止めることができるのか。

教師を目指し大学に進んだ槙原さんは、障害がある子供たちに野球をもとにしたスポーツ「ティーボール」を指導し、東日本大震災の被災地・宮城県南三陸町で野球少年と交流するなど、積極的にボランティア活動に参加した。若さゆえ時には周りの大人たちをハラハラさせるほど突っ走ることもあったが、厳しい環境で頑張る子供たちへのエールを送り続ける。

2012年、念願の教員採用試験に合格し、教師となる。最初に配属されたのは岡山県北部・津山市の中学校。野球部の顧問にも就任し、難しい年頃の生徒を相手に奮闘する日々が始まる。そして、そんな新人教師を悩ませる生徒が現れた。生徒の心を開かせようと必死になる槙原さんの思いは届くのだろうか…。

槙原さんは、仕事が忙しいなかでも時間をつくり「岡山桃太郎」でのプレーを続ける。

2018年7月の西日本豪雨は、岡山県にも大きな被害をもたらした。障害者野球チーム「岡山桃太郎」のメンバーも被災し、チームが使っていたグラウンドも崩壊した。足の不自由なメンバーを気遣って被災地にやってきたのは「岡山桃太郎」のチームメイト。自宅が浸水しながらも復興に向かうメンバーは、野球の友がいるから頑張れると笑顔を見せる。そこには障害者野球で育まれた絆があった。

教師7年目をむかえ、表れた大きな変化
手作りのあたたかな結婚式

手作りのあたたかな結婚式

2019年3月、槙原さんの結婚式。手作りのあたたかな披露宴会場には、今まで出会った様々な人が訪れる。

教師になって7年目、槙原さんには大きな心の変化が表れた。
何でも工夫し一人でこなしてきた槙原さんが、子供たちにいろいろ任せるようになっている。先頭に立って引っ張ってきた、これまでの指導法を変えていたのだ。
槙原さんは「岡山桃太郎」と、槙原さんが率いる中学校野球部の交流試合を計画する。片方の腕だけでプレーする選手や70歳を過ぎてもフルスイングする障害者野球の選手たち。槙原さんは生徒たちに何を感じて欲しかったのだろうか。

教育現場での葛藤、エースとしての限界…。人生の転機を迎えた槙原さんは、教育者として成長する一方で、彼が夢中になり、彼を支えてきた「野球」の奥に、大切な意味があったことに気が付いたのだ。
大人になった彼が見つけたもの、彼が野球を通して子供たちに伝えていくもの、それは彼にしか伝えられないメッセージだった。

コメント

ディレクター・竹下美保(岡山放送報道部)

「当初、槙原さんの取材許可は得られたものの、父親からはなかなか了解が頂けませんでした。時に泣きながら父親と言い合うこともありましたが、ようやく熱意が通じ取材は始まりました。以来一番協力してくれたのは槙原さんのご両親。取材を通じて、その凛とした姿に光を当てたい思いも生まれました。槙原さん自身の努力はもちろんですが、障害を理由に言い訳することなく、何にでも情熱をもって取り組む青年に育てあげたご両親。取材を始めて3年、槙原さんの大学進学が決まった頃に、母親が槙原さんの右腕の自由を奪った事故の様子や、事故のあと野球をやると伝えられた時に感じた気持ちを、涙ながらに話してくれたことは衝撃でもありました。槙原さんの成長の節目節目に、少しずつ肩の荷を下ろしていく両親の思いも、汲み取っていただけるとありがたく思います。
私は番組の中で、槙原さんを障害者として描いていません。一人の教育者としての成長を感じてもらえる作品だと考えています。一時、人事異動で私が継続して取材出来ない期間がありましたが、報道部の先輩や後輩たちがサポートしてくれたこと、カメラマンも同じ思いで追い続けてくれたことが、槙原さんや教え子たちの成長を捉えることになりました。槙原さんの取材は私のライフワークでした。報道部に復帰した今、前にも増して番組化への意欲が高まり実現した“15年間の執念のドキュメンタリー”といえるかもしれません。
自分らしく生きる素晴らしさを感じてください」

番組概要

タイトル
第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『マッキー先生 全力投球 みんな野球が教えてくれた』(制作:岡山放送)
放送日時
8月21日(水)27時~27時55分
スタッフ
ナレーター
風間俊介
構成
梅沢浩一
撮影・編集
浦上順司
音効
桧山賢至
MA
馬場由布子
CG
加藤裕理
ディレクター
竹下美保
アシスタント
プロデューサー
白井大輔
プロデューサー
吉留康弘

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。