2019.7.24更新

雪に埋もれた山熊田集落(新潟県村上市)
第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
ヤッホヤッホで春が来る
7月31日(水)27時~27時55分
~伝統が守られる「狩猟のムラ」~

山熊田集落の猟師・大滝国吉さん(58才)
新潟県村上市の山あいにある山熊田集落は人口40人あまりの小さなムラだ。狩猟や機織りといった伝統文化が大切に受け継がれてきた。ムラの猟師、大滝国吉さんはムラの山にすむクマと30年以上対峙してきた。しかし過疎化の波は容赦なくムラを襲い、狩猟の伝統は存続の危機にある。
4月、山熊田では伝統のクマ狩りが行われる。大滝さんたち猟師はこの春、山の神様から恵みを授かることができるだろうか。
「ヤッホヤッホ」の声が響く、春のクマ狩り

山熊田集落の伝統行事・クマ祭りで、猟師たちがクマを追い立てる「鳴り声」をあげ、山の神様に感謝をささげる場面
前列左から)マタギ頭領の大滝剛、大滝国吉
後列)猟師の方々
番組の舞台となる山熊田集落は、まわりをぐるりと山に囲まれ、毎年2メートル以上の雪が積もる。30年近く前まで除雪車が入らず、冬は外の世界と隔てられてきた。厳しい自然環境の中で先祖代々受け継いできた「狩猟」と「機織り」の伝統があり、それがいまもムラの人によって大切に守られているところに特徴がある。
新潟県内には地域ごとにさまざまな伝統文化があるが、県内ではほかに聞いたことのない「狩猟のムラ」ということばに以前から引かれていた。人口40人あまりの過疎化の進むムラで連綿と続く伝統が、どんな人たちによって守られているのか、心を刺激されたことが取材のきっかけとなった。
山熊田の猟師たちは、会社勤めなどのかたわら、週末に山に入り、野生のシカやウサギなどを狙う。大滝国吉さん(58)はそんな山熊田の猟師のひとり。山の暮らしを愛し、狩猟に対する哲学を持っている。
大滝さんはなぜ、大雪の日でも山に入りクマやウサギをねらうのか。また、獲物の肉は平等に分け、仲間と食べ尽くすのはなぜなのか。そこには、狩猟の伝統を背負う誇りや、生き物の命に対する敬意が秘められている。
4月、大滝さんたち山熊田の猟師は、1年で最も大切にする春のクマ狩りに臨む。手法は、勢子が声を上げてクマを追い上げ、山の頂上で撃ち手がしとめる、伝統の「巻き狩り」だ。山には勢子たちの「ヤッホヤッホ」という声がこだまし、ムラに春の訪れを告げる。
しかしムラに押し寄せる過疎化の波により、かつて30人あまりいた猟師はわずか4人にまで減少。ついに去年の春はクマを1頭もしとめられない事態となった。ことしの巻き狩りにかける大滝さんの思いとは。そして巻き狩りの結果やいかに。残雪の山をめぐる猟師たちの奮闘に密着した。
さらに、木の皮を糸に加工して織りあげる「しな布」について、伝統の継承に情熱を燃やす移住者の女性の思いに迫る。
コメント
ディレクター・倉品浩行(新潟総合テレビ報道部)
「山熊田集落では、山と密接に結びついた暮らしがいまも続いている。狩猟やしな布の機織りだけでなく、薪ストーブに使う薪も、春の山菜採りも山から得るものだ。そのどれもが手間のかかるもので、はた目には“どうしてそこまで”と思うこともあった。そんな中、心を揺さぶられたのは、取材でお世話になった大滝国吉さんのひと言だった。
“楽な暮らしをすればするほど感情が少なくなる。大変だからこそ、できたときの満足感は大きい”。
山熊田の人たちは労力をかけて暮らしをつむぐことで、生きている実感を得ているのではないか。そう思うと、このムラの営みがかけがえのない尊いものに思えてきた。
小さなムラの伝統に魅せられて始まったこの取材だが、いつのまにか、一生懸命に生きるムラの人の姿にも魅了されていた」
番組概要
- タイトル
- 第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ヤッホヤッホで春が来る』(制作:新潟総合テレビ)
- 放送日時
- 7月31日(水)27時~27時55分
- スタッフ
-
- プロデューサー
- 酒井昌彦
- ディレクター
- 倉品浩行
- ナレーター
- 小幡研二
- 編集
- 手塚顕
- MA
- 佐藤誠二
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。