FNSドキュメンタリー大賞

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2019.8.13更新

辻政信20代の頃の写真(遺族提供)

辻政信20代の頃の写真(遺族提供)

第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
神か悪魔か

8月14日(水)26時50分~27時45分

謎多き男の生涯、今を生きる人は何を思うか

石川県・加賀市出身の辻政信(1902~1968?)は、戦時中に参謀として数々の激戦地を渡った元軍人。多くの犠牲を伴う作戦や残虐な事件の首謀者として責任を問われるが、終戦直後に行方をくらませアジア各国を潜行。戦犯追及を逃れると国会議員に転じ、最後は謎の失踪。波乱の生涯を歩んだ。
参謀としての手腕から「神様」と称えられたかと思えば、責任逃れ生き延びたことなどから「悪魔」とも評された人物。毀誉褒貶が激しい「謎の男」の生涯を、今を生きる人に多様に感じてもらう。

「神様」なのか「悪魔」なのか

歴史の教科書にも登場せず、全国的には知る人も少ない「過去の人」。郷土でも決して偉人扱いはされていない。しかし、あまりに数奇な辻の生涯をひもとくうち、ただ「過去の人」と扱って良いのかという思いに駆られ、取材を重ねることにした。

軍のエリートだった辻は数々の激戦地で独断的な行動におよび、多くの犠牲をもたらしたとされる。しかし辻は最終階級が大佐という、いわば「中間管理職」。軍という巨大組織において、なぜ独断が許されたのか、なぜ再三にわたり激戦地を任されたのか。取材を進めるうち、個人の問題では片付けられない疑問が浮かび上がる。
参謀として数々の作戦を立案した辻は、連合国軍、特にイギリス軍から目の敵にされていた。終戦後、捕らえられれば極刑は免れない状況の中、辻はタイ・バンコクで、突然部下とともに行方をくらませる。ある時は僧侶に、ある時は学者に扮しながら潜行を続けること約5年。ついに「お尋ね者」の身分が解かれる。潜行から70年、当時の辻を知る人に話を伺うことができた。

戦後の日本では多くの軍人が戦争責任を問われ、900人あまりが刑場の露と消えた。
一方、戦犯追及を逃れた辻は潜行中の記録を著し、ベストセラー作家に。その知名度をひっさげて国会議員に転身し、外交に力を尽くす。しかし1961年、公務出張先の東南アジアで謎の失踪を遂げ、そのまま死亡扱いとなった。
様々な批判を浴びながら生きた辻は、戦後の日本に何を思い、何を成し遂げようとしたのか。近年公開されたCIAの資料などから、その一端が明らかとなる。

辻が終戦直後に潜伏したタイ・バンコクの日本人納骨堂左から)田中島親コーディネーター、山本岳人ディレクター

辻が終戦直後に潜伏したタイ・バンコクの日本人納骨堂
左から)田中島親コーディネーター、山本岳人ディレクター

辻政信の手記を見せてくれた辻の次男・毅

辻政信の手記を見せてくれた辻の次男・毅

ディレクター・山本岳人(石川テレビ報道部)コメント

「戦後につづられた多くの本で、辻政信は“悪役”として登場します。私が知っていた辻政信の人物像も、そうした本から作られたものでした。しかし、軍人時代の辻がどんな言動をしたのか知る手がかりは、個人の証言や手記が大半。どこまでが“史実”と呼べるのか非常に悩みながら、番組を作りました。
戦争で命を落とした人々の無念を思えば、責任を逃れて生きた辻への批判はあってしかるべきだと思います。一方、これから戦争を語りつぐ上で、その責任が“個人”にばかり向けられていることに、私は違和感を覚えました。戦争の悲劇は、誰かがいたからではなく、誰も止められなかったから起きたと考えるからです。
これからの日本はどうあるべきか、国民が決められる時代になって70年以上がたちました。後ろ指を指されながらこれからの日本を考えた“悪役”の生涯から、何かを感じて頂ければ幸いです」

番組概要

タイトル
第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『神か悪魔か』(制作:石川テレビ)
放送日時
8月14日(水)26時50分~27時45分
スタッフ
プロデューサー
竹内章(石川テレビ)
ディレクター
山本岳人(石川テレビ)
ナレーター
武田祐子(acari)
撮影
伊登寛芳(フリー)
編集
渡辺信行(フリー)
音効
大川育三(アナヴァンミュージック)

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。