FNSドキュメンタリー大賞

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2019.9.4更新

青年冒険家、日本人未踏破ルートに挑む!

南極でソリを引く阿部雅龍さん

南極でソリを引く阿部雅龍さん

第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
夢を追う男~冒険家・阿部雅龍~

9月5日(木)26時20分~27時15分

南極点到達までは約900キロ、日本人未踏破ルートに挑む!
南極旅行会社で打ち合わせ

南極旅行会社で打ち合わせ

秋田県出身の冒険家・阿部雅龍さんの夢は、100年前に南極探検に挑み道半ばで引き返した白瀬矗(しらせ・のぶ/秋田県出身)と同じルートを歩き、その後を継いで南極点に立つこと。“白瀬ルート”は今まで誰も踏破したことがない非常に難易度が高いルート。そのルートに挑戦するための実績作りとして2018年11月に日本人未踏破の“メスナールート”での南極点到達に挑戦した。この挑戦は単独・徒歩で南極を目指すだけでなく、途中で一切補給を受けないというもの。そのため道中で消費する全ての食糧や燃料を積み込んだソリを引いて高低差2000メートル以上、距離900キロを進むという過酷な冒険になった。番組では“メスナールート”挑戦についての記者会見から南米での準備、南極点到達、そして帰国後に次の冒険に出発するまでの半年間を追った。

単独、徒歩、そして補給なしの計画。その準備とは?

冒険家の傍ら、東京・浅草で人力車業を営む阿部さん。出身地の秋田や東京で、阿部さんの夢を後押ししてくれるメンバーが壮行会を開催、専門外の仕事でありながら阿部さんの思いに共感しソリを作ってくれた人もいた。

そんな皆の思いを胸に、阿部さんは着々と準備を始めた。秋田、東京、チリ最南端の都市プンタ・アレーナスでは、なかなか見ることができない「南極冒険」の準備風景が印象的であった。冒険家にとって装備の重量というのは想像以上に重要なものらしく、歯ブラシの柄をくりぬいたり衣類のタグを切り取ったりとわずか数グラムを軽量化するために様々な工夫をしていた。安っぽく見える自作装備品も実はこれまでの経験から考え出されたものであったり、地道な作業の積み重ねが成否を分けるポイントだったり、着替えはほとんど持っていかなかったり…など、華やかに見える冒険の裏で、冒険家はコツコツと頑張っている。

南極冒険の最初のスタート地点となるプンタ・アレーナス。阿部さんが街に着いてから南極に向けて出発するまでの10日間。旅行会社との綿密な打ち合わせでは英語に加え、スペイン語も勉強して臨んだ。また、最終的な装備の積み込み、食糧も消費カロリーなど緻密に計算して装備品を軽量化するための工夫などやれることはやった。南極点到達までは約900キロ、日本人未踏破ルートへの挑戦がスタートした。

南極での自撮りの様子

南極での自撮りの様子

南極での食事風景

南極での食事風景

すべての判断は“自分”のみ
南極点到達

南極点到達

撮影クルーは同行していないため阿部さんが自ら撮影した南極の映像も見どころ。自らカメラを設置し、引き返して画角内を歩き、さらに引き返してカメラを回収するという通常の冒険より何倍も手間のかかる方法で撮影を行っている。南極の自然や日々の記録、そして南極での食事など冒険中のさまざまな映像を紹介した。南極冒険の模様は阿部さんが自身のフェイスブック上で日記として公開されていて、当時の心境を交えながら南極の過酷な環境がわかった。

南極ではマイナス30度の空気を吸い込み、体温であるおよそ35度にして吐き出すため、呼吸をするだけで膨大なエネルギーを消費する。そのため南極での1日の消費カロリーは約7000~8000kcalにもなり、そのエネルギーを毎日補充するためにバターやサラミなど脂質の多い食料が中心となる。それでも冒険後は冒険前より5キロほど体重が減るという。南極冒険とはそれほど過酷なものなのだ。

また、2018年~2019年シーズンの南極の天候は例年に比べ積雪が多く、冒険家たちは皆苦しめられたという。積雪が増えるとソリが雪に沈み込み、前進する速度が遅くなる。阿部さんも事前の計画では1日20km以上の予定だったが実際には1日8~9km程度しか進めない日が多かった。当初予定していた「食料の補給はなし」という計画が変更になり食糧補給を受けてからの動画はほとんど無かったが、フェイスブック上の日記からその様子を知ることができた。

阿部さんは、この過酷な環境下で、ベースキャンプが撤収になる期日当日に何とか南極点到達に成功した。

100点満点ではないけれど…。

帰国後、阿部さんは、自宅で完全な成功とはならなかった今回の南極冒険について振り返り、悔しさをにじませながらも「次につながる良い経験になった」と前向きに話してくれた

東北6県人力車の旅。極寒の南極とは対照的に暑くなり始めた東北を人力車を引きながら歩く阿部さんの姿があった。最後に阿部さんが「(夢を)一生追い続けたい。夢を追う男であり続けることが生涯の目標」と語っていたのが印象的だった。半年の取材期間中、常に明るく笑顔を絶やさなかった阿部さん。何事も前向きに捉え、夢に向かって突き進んでいく青年冒険家の姿に注目してもらいたい。

コメント

ディレクター・布谷慎太郎(秋田テレビ報道部)

「阿部さんと私は1歳違い。同年代の冒険家が夢に向かって周囲を巻き込みながら進んでいく様子を取材できたのは面白い経験でした。チリでは予定が変更になり南極への出発が数日遅れたのですが、それでも“こういうことでいちいちイライラしないことが冒険家には必要”と語っていたのが印象に残っています。
阿部さんが目指しているのは前人未到の“白瀬ルート”。そのための実績作りとして挑んだのが今回の“メスナールート”でした。今回のチャレンジはトラブルがありつつも最終的には成功となりましたが、次に控えている“白瀬ルート”はさらに難しい冒険になります。この番組を通じて1人でも多くの方に阿部さんの存在を知ってもらい応援していただければと思います」

番組概要

タイトル
第28回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『夢を追う男~冒険家・阿部雅龍~』(制作:秋田テレビ)
放送日時
9月5日(木)26時20分~27時15分
スタッフ
制作統括
星野隆(秋田テレビ)
プロデューサー
藤田浩之(秋田テレビ)
ディレクター・構成
布谷慎太郎(秋田テレビ)
ナレーター
シャバ駄馬男
撮影
映民社
MA
伊藤直人(秋田ステージ)
美術
  • 武藤優(秋田ステージ)
  • 佐々木夏子(秋田テレビ)

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。