FNSドキュメンタリー大賞

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2018.11.18更新

五輪挑戦で得たもの…スケートST吉永一貴

第27回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
この冬の向こうに 平昌五輪ショートトラック 吉永一貴

12月5日(水)26時50分~27時45分

ショートトラックでオリンピック出場を目指した高校生の1年4カ月の道のりに密着しました。若くしてオリンピックを目指すことの重み、プレッシャーや葛藤と戦いながらつかんだオリンピックの舞台…結果は惨敗に終わったのです。しかし、吉永一貴選手はこの1年4カ月の挑戦で得たものがあったのです。それは…

スーパー高校生がオリンピックに挑んだ1年4カ月の記録

ショートトラック平昌オリンピック日本代表・吉永一貴選手。元ショートトラック500m世界女王を母に持つサラブレッド。18歳 高校3年生にして、日本ショートトラック史上最年少でオリンピックという夢の舞台への切符をつかんだのですが、結果は惨敗に終わりました。しかし、18歳の吉永選手は夢の舞台に挑んだ道のりの中で結果以上に得たものがありました。東海テレビでは、日本ショートトラック界のホープ吉永選手が母と二人三脚で挑んだオリンピック出場までの1年4カ月に密着、18歳の少年がさまざまなプレッシャーや葛藤と戦いながらも前へと進む姿を取材しました。

2017年1月、オリンピックまであと1年。名古屋市内の高校に通う吉永一貴選手(当時高校2年生)は、全日本ショートトラックスピードスケート選手権で総合2位になるなど、若くしてすでに日本のショートトラック界の中心にいました。全国の舞台で残してきた数々の実績もさることながら、高校生にして、リンク上でみせるその立ち居振る舞いには、目を見張るものがありました。そんな吉永選手を地元の有力選手として応援していこうと、オリンピック挑戦への道のりを追いかけ始めたのです。

吉永選手を語る上で、欠かせないのが母・美佳さんの存在です。美佳さんは、1981年ショートトラックの世界選手権で優勝した経験もある元トップスケーター。それゆえ、美佳さんが同じ競技に打ち込む息子に対して求めるものは高く、小学生の頃から厳しい練習を課し、「継続することが大事。続けることが自分の力になる」と言い続けてきました。そんな母を象徴するエピソードが…。ある日の練習中、転倒に巻き込まれた吉永選手が、前の選手の靴の刃で頬を切り裂き、10針以上縫う大ケガを負いました。その時も、母は「顔でよかった。足じゃなかったからまた明日も練習ができる」と言い放ったのです。こんな厳しい環境のもとで育った吉永選手は、平昌オリンピックを1年後に控えた高校2年生の冬には、はっきりとオリンピック出場を意識できるレベルにまで成長していたのです。

オリンピック代表を決めるシーズン開幕前の去年5月、高校3年生となった吉永選手は母と2人で半年間、スケート技術にさらなる磨きをかけるため、ショートトラックの強豪国・韓国に武者修行に乗り込みました。韓国では、母と2人で生活をしながら、バンクーバーオリンピックで8つのメダル獲得に貢献した元韓国ナショナルチームコーチのチョン・ジェモクさんのもとで練習漬けの日々を送りました。ジェモクさんの指導に加え、韓国の有力選手と日々切磋琢磨する中で吉永選手はメキメキと力を付けていったのです。

一見、順風満帆に見える吉永選手のオリンピックへの道のり。しかし、ジェモクさんは、あることに気付いていました。それは、吉永選手の若さゆえ出る心の問題でした。そして、この問題はオリンピックを目指して戦いを進めていく中で、度々顔を出すことになるのです。18歳の若さでオリンピックを目指すことの重みからなのか、2017年12月のオリンピック代表を決める最終選考会に向かう時、さらにオリンピック本番に向かう際の吉永選手の言動に、プレッシャーや葛藤と戦う姿が凝縮されていたのです。

そして、「何もできなかった」と悔し涙を流した平昌オリンピック、それを経験し吉永選手は何を感じ、何を得たのでしょうか…。2018年4月に新たに大学生となった吉永選手の言動にその答えがみえた気がしたのです。18歳 高校3年生で経験したオリンピック。4年後は、22歳 大学4年生で迎えることになります。東海テレビが密着した1年4カ月で、普通の18歳では見られないような成長曲線を描きました。この先の4年間、決して順風満帆とはいかないでしょうが、吉永選手ならいかなることでも、きっと乗り越えてくれるはず。そして、次の冬季オリンピックの北京では最高の笑顔の花を咲かせてくれると期待しています。

コメント

ディレクター・伊貝純矢(東海テレビ スポーツ局スポーツ部)

「オリンピックを目指す、オリンピックで戦うということは、プレッシャーが伴います。しかも、取材対象は多感な高校生。私はオリンピックが終わるまで、吉永選手がリラックスしている様子をほとんど見ることができませんでした。常に何かを背負い、何かと戦っているようでした。
そんな吉永選手ですが、オリンピックを終え、あるイベントでこれまで一度も見せたことのないほどリラックスした様子で、とびっきりの笑顔をみせていました。これを見たときに私は、ただオリンピックを終えてホッとしたというだけでは片づけられない、吉永選手の“心の成長”を確信しました。
いろんな苦悩やプレッシャーと戦い、それを乗り越えてきた吉永選手には、賛辞を贈るとともに、4年後、北京の舞台で表彰台のテッペンに立っていてほしいと心から願うばかりです。」

番組概要

タイトル
第27回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
『この冬の向こうに 平昌五輪ショートトラック 吉永一貴』(制作:東海テレビ)
放送日時
12月5日(水)26時50分~27時45分
スタッフ
プロデューサー
吉野健(東海テレビ)
ディレクター/構成
伊貝純矢(東海テレビ)
撮影
森恒次郎
編集
岡本泰明
ナレーション
山本左近

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。