FNSドキュメンタリー大賞

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2018.7.10更新

清流四万十川の異変…川漁師たちの嘆きとは

第27回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
ときは流れ 水のながれ~四万十川、沈下橋とともに~

7月11日(水)27時5分~28時放送

日本最後の清流と呼ばれて久しい四万十川は、近年その姿に異変が見られます。
建設から50年を過ぎた四万十川中流に架かる沈下橋が、突然“くの字”に折れ曲ったり、地元の川漁師は、アオノリの漁場に砂が積もり、ノリが生えなくなってきたと嘆きます。屋形舟経営者は、“暴れ川”としての四万十川の素顔を生々しく語ります。
番組では、そんな清流・四万十川をめぐる人々の姿と思いに迫ります。

“日本最後の清流”と呼ばれて久しい四万十川ですが、近年はその姿に異変が見られます。2017年11月、中流域にある沈下橋の橋げたが突然、“くの字”に折れ曲りました。建設から50年を過ぎた沈下橋は今、老朽化に悩まされています。変わりつつある四万十川の素顔を取材し、記録にとどめようというのが、今回のドキュメンタリーのスタートラインでした。

四万十川の川漁師・黒澤雄一郎さんは近年の川の異変を危惧するひとりです。アオノリの漁場に砂が積もり、年々ノリが生えなくなっているというのです。アオノリは小さな石ころが敷き詰められた川底でなければ育ちません。堆積する土砂は、天然ウナギの生息環境も脅かしていると言います。川底の石の間をすみかにするウナギは、川底に土砂が堆積することで、すみかを奪われ、その数を急激に減らしていると言うのです。黒澤さんは、「今なら、四万十川はまだ間に合う」と語気を強めます。

四万十川上流域に住む牧野章さんも、土砂の堆積で川が変わったと証言するひとりです。牧野さんが私たちを案内してくれた場所には、目を疑う情景がありました。小川のそばの石垣から生えた1本のスギの木。一旦は下に向かった幹が、ねじれるように向きを変えて上へと伸びていて、まるで、せせらぎでもがく大蛇のような姿です。

土砂の堆積が進む四万十川を救う方法はないのでしょうか。四万十川の異変に科学の視点で立ち向かう男性がいます。高知高専の岡田将治准教授です。岡田准教授が注目するのは、かつて全国的に行われていた“川砂利採取”です。高度成長期にあわせて半世紀近く前、四万十川でも盛んに行われていた砂利採取ですが、土砂の堆積が増えたのは、砂利採取が行われなくなった後のことだと岡田准教授は分析します。つまり、その昔、砂利採取をしていた頃はアオノリがよく採れていたが、砂利採取が行われなくなると土砂の堆積が始まり、アオノリやウナギの生育環境が脅かされるようになったのだと言います。清流の環境を破壊しているようにも見える砂利採取が、実は土砂の堆積を抑える効果を生み出していたというのは、何とも皮肉な事実です。岡田准教授は四万十川の再生を目指し、実験を繰り返してきました。実験に使うのは、愛媛大学にある“もうひとつの四万十川”、下流の汽水域を精巧に再現したコンクリート製の模型です。川岸の形を変えることで水の流れをコントロールし、土砂の堆積を抑えられないかという実験は、根気のいる作業の繰り返しです。実験で導き出された、四万十川再生の方策とはどのようなものでしょうか。

四万十川の人気の観光資源のひとつが屋形舟です。船着き場には連日大型バスが押し寄せるようになり、外国人観光客も急増しています。そんな屋形舟を経営する岡村実さんは、“暴れ川”としての四万十川の素顔を生々しく語ります。2005年9月、台風で増水した四万十川の水位は18メートルにも達しました。刻々とせり上がってくる濁流を前に、岡村さんは家の2階にボートをくくりつけ、いざという時に備えました。夜になってもおさまらない雨。岡村さんは暗闇の中、ボートを漕ぎ出し、濁流から逃れたと話します。そして、たどり着いた先にあったトンネルでは、思いがけない出会いがありました。岡村さんは「ここは“神様トンネル”だよ」と振り返ります。

“くの字”に折れ曲がった沈下橋は、橋げたの撤去工事が進められていました。橋脚と橋脚の間の1枚の橋桁は、重さが40トンもあり、クレーンで持ち上げるのは不可能です。そのため、橋桁は4本の柱状に切断され、撤去の日を待っていました。2台のクレーン車が呼吸を合わせて橋桁をつり上げます。緊迫の作業をカメラが追いました。

番組では、水中カメラやドローンを駆使し、四万十川の素顔を多角的に追いながら、清流・四万十川をめぐる様々な人々の姿と、その思いに迫ります。

コメント

プロデューサー・ディレクター・構成 明神康喜
(高知さんさんテレビ報道制作部)

四万十川は高知県西部を流れる総延長200キロの大河です。ダムなど規模の大きな構造物がないことから“日本最後の清流”と呼ばれていますが、そこに暮らす人たちの声に耳を傾けると、清流の危機を感じずにはいられません。2017年11月に、中流域の人気観光スポット“岩間沈下橋”が、老朽化のため“くの字”に折れ曲がりました。今こそ、あらためて清流の姿をカメラに記録しようと、取材を始めました。

番組の中心になるのは、川漁師の黒澤雄一郎さんです。黒澤さんは、川底に土砂が堆積し、天然ウナギやアオノリの生育環境を脅かしていると嘆きます。水中カメラで撮影すると、川底に砂がたまり、アオノリが育たなくなっているのがよくわかりました。

番組制作にあたって、四万十川を季節ごとにドローンで撮影しました。雪景色の沈下橋など、清流の美しい映像もみどころです。

番組概要

タイトル
第27回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ときは流れ 水のながれ~四万十川、沈下橋とともに~』(制作:高知さんさんテレビ)
放送日時
7月11日(水)27時5分~28時
スタッフ
プロデューサー
ディレクター・構成
明神康喜(高知さんさんテレビ報道制作部)
ナレーター
正木麻由(高知さんさんテレビ報道制作部アナウンサー)
重塚利弘(ボズアトール)
撮影・編集
澤村栄治(ゴクローサン)

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。