2017.8.23更新
高齢化進むニッポン介護現場から見えるもの
第26回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
ニッポンは好きだけど カイゴ開国10年の現実
9月22日(金)27時10分~28時5分
人手不足が深刻な日本の介護現場で、救世主とも言える存在の外国人。EPA(経済連携協定)の制度に基づき、これまで2800人が来日しました。岡山県笠岡市の特別養護老人ホーム・天神荘でも職員の2割にあたる16人のインドネシア人の若者が働きながら学んでいます。
しかし受け入れ開始から10年、これまでに国家資格を取得した人の3割はすでに雇用契約を終了、または帰国したという現実があります。世界に類を見ないスピードで少子高齢化社会を迎えた日本で、彼らは老いの支え手となるのでしょうか。奮闘の日々と揺れる胸の内を追いました。
今、老人ホームなどの高齢者施設で、多くの外国人が働いています。人手不足が深刻な日本の介護現場で、救世主とも言える存在です。外国人の受け入れが始まって9年が過ぎ、これまで2800人が来日しました。優秀な人材の確保は介護施設にとっては死活問題です。インドネシアの首都・ジャカルタでは日本各地の施設が参加して説明会が開かれ、人材の「争奪戦」が繰り広げられていました。
厚生労働省が「2025年には全国で38万人、岡山県でも5700人の介護職員が不足する」という予測を発表したことを受けて、2年前に取材を開始。夕方のニュースで「人材を海外に求める動きが加速」と紹介したのが、笠岡市の社会福祉法人・天神会でした。EPA(経済連携協定)に基づき、天神会は岡山県内で最も多い約30人のインドネシア人を受け入れています。“外国人が最前線で活躍する日本の介護現場とは”2008年の受け入れ開始から10年がたとうとしていますが、多くの人は介護施設で働くインドネシア人をあまり目にしたことがないのではないでしょうか。彼らの勤勉さ、目上の人、お年寄りに優しく寄り添う姿に触れ、施設の日常を知ってもらいたいと考えました。
「きょうの服は何色が良いですか?」。
「上手なお歌を聴かせていただいてありがとうございます」。
優しく入所者に声をかけているのはアイ・スルヤニさん(27)。大学在学中に受けた日本語の短期講習をきっかけに日本への興味が高まり、EPAに基づく受け入れに応募しました。日本の文化が好きで、特に小さい頃からよく見ていたアニメは大ファンです。働きぶりもまじめで入所者や家族からの信頼は厚く、介護福祉士の国家試験に向けた勉強も毎日2時間欠かしません。
天神荘からは初めて、アイさんたち4人が2016年の国家試験に臨みました。しかし、試験を前に、アイさんに思わぬ問題が起きました。国家試験に合格したらインドネシアに帰国するよう家族から促されたのです。
しかし、この問題を抱えていたのはアイさんだけではありませんでした。取材を進めると、せっかく難関の介護福祉士の国家試験に合格しても、日本に留まらず帰国する人が多いことを知りました。2008年の受け入れ開始から10年、国家資格を取得した人のうち3割はすでに雇用契約を終了、または帰国しているといいます。一体なぜなのでしょうか。
EPAによる外国人の受け入れは、あくまで国同士の経済連携強化を目指したもので、介護現場の人手不足を解消するためのものではありません。しかし、世界に類を見ないスピードで少子高齢化社会を迎え、2025年には全国で38万人の介護職員が不足するとされるこの国には、外国人の力を“老いの支え手”として頼らざるを得ない現実があります。番組では来日する若者と受け入れる側双方の思いや抱える事情を描き、老人大国ニッポンの現実を考えます。
コメント
ディレクター・新田俊介(岡山放送報道部)
「多くのお年寄りの中心で働くのはカラフルなイスラムの装いの若者たち。そんな光景に最初は面食らったことを、今でも思い出します。介護施設で活躍する外国人。テレビや新聞で何となく見たことはありましたが、その現場に立つのは初めてのことでした。取材に入ると、彼らの働きぶりに驚かされました。入所者に優しく声をかけ、手を差し伸べる姿をいつも見ていると、なんだか自分の家族への接し方を反省させられる思いでした。これから先、さらなる超高齢社会に突入する日本。その介護現場の最前線で奮闘する彼らの姿を通して、誰もが迎える“老い”に思いをはせていただければ幸いです」
番組情報
- タイトル
- 第26回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『ニッポンは好きだけど カイゴ開国10年の現実』(制作:岡山放送)
- 放送日時
- 9月22日(金)27時10分~28時5分
- スタッフ
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- プロデューサー
- 塚下一男(岡山放送)
- ディレクター
- 新田俊介(岡山放送)
- 構成
- 梅沢浩一
- ナレーター
- 前田亜季(アルファエージェンシー)
- 撮影・編集
- 平井大典(OHKエンタープライズ)
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。