FNSドキュメンタリー大賞

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2017.9.30更新

自らの宿命に立ち向かう人間の生き様

第26回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
筋強直性ジストロフィーという難病を発症して 医師になったぼくは

10月3日(火)25時40分~26時35分

明地雄司さん(32歳)。松山市内の病院で研修医として働いています。明地さんが医師の道を選んだのは、遺伝性のある病気と診断されたのがきっかけでした。「筋強直性ジストロフィー」。遺伝子の異常が原因で発症し、筋肉の低下や様々な合併症を伴う難病です。明地さんは、自らが患者でありながら、同じ病気で苦しむ人を救いたいと神経内科医を目指しています。この病気は根本的な治療法が見つかっておらず、明智さんは去年、発足人の一人として患者会を立ち上げ、治療薬の治験への協力も図っています。

重い宿命を背負うことになった病気に挑む道を選んだ明地さん。家族の苦悩や思いを軸に、この病気の現状や医療の課題などを取材しました。

1万人に一人が患うという筋ジストロフィーの1種・筋強直性ジストロフィー。19番目の染色体の中の遺伝子の異常で起こる遺伝性の難病です。今の医療では完治できません。症状は筋肉の衰えで、筋肉がこわばるミオトニアが主な症状だが、白内障や呼吸機能の低下、嚥下(えんげ)障害など様々な合併症が出るケースが多くあります。また症状が出ない人から重症まで幅広く、遺伝する確率は2分の1といわれています。この病気は1世帯に複数人が発症するケースもあり、患者や家族は逃れられない宿命を背負います。

愛媛県松山市の研修医・明地雄司さんの弟・純さんは、2008年に筋強直性ジストロフィーと診断されました。そして翌年、自らも遺伝していることが判明。約8年後の今も症状がゆっくり進行していることを定期検査で実感しています。

番組ではこの病気の判明前後の苦悩などを記した明地さんの日記やエンディングノートを公開していただき、患者本人にしか分からない生の心情を伝えます。また一般の人が営む異性との付き合いや結婚などへの思いや、遺伝させてしまい責任を感じる両親にも、どうこの病気を受け入れていったか心情を語ってもらいました。

この病気は現在、完治できず患者数が少ない上、専門知識のある医師も少数です。このため肺機能の低下や白内障に嚥下障害など様々な合併症に気付けない、診断に至った場合でも適切に対症療法に取り組めていないことも。その上患者自身が治療をあきらめてしまい、心身ともに困難な生活環境に置かれるケースがあるといいます。正しい病気の情報があることは家族・患者の精神状態にも大きな影響を及ぼします。去年設立された筋強直性ジストロフィー患者会では患者・家族の支援やこの病気の正しい向き合い方を知ってもらい、患者が希望を託す治療薬の治験への協力の一助となるよう、この病気の患者の病状をデータベース化している患者登録への協力を呼びかけています。

その待ち望まれる治療薬については、国内外では治療薬の開発があと一歩の段階まで進んでいるといいます。この病気の日本の最先端拠点・大阪大学では、既に認可されている薬の中に、原因に直接作用する有効性があることを見出しました。近く治験に取り組み、数年先の実用化を目指しています。この薬の具体的な作用や今後を取材しました。

この番組は、患者・医師の立場で、この難病に挑む男性研修医の活動・苦悩・思いを軸に、患者・家族が背負う宿命、病気を巡る現状や課題などにスポットをあて、世間にこの病気に理解を深めてもらう一助になればという思いで制作に臨みました。

コメント

ディレクター・浮穴和心(テレビ愛媛報道制作部)

「筋強直性ジストロフィーは1万人に一人発症するとされる指定難病です。1万人に一人というと国内で簡単に計算すると大雑把に1万人の患者がいる計算です。しかし一般の医師にはあまりなじみがなく、医療機関を数カ所行って診断されるケースが多いということです。合併症などを総合的に診て、この病気と診断できる診察のレベルアップも必要と実感しました。また、患者と家族は病気から逃げることができず、重い宿命を背負ってしまう一方、支え合って生きるという固い絆が生まれていることも分かりました。まだまだ遺伝子に関する病気への進まない理解、患者が置かれる環境、倫理に関する問題などこの病気に限らない問題も見えてきました。正しい情報があることが、患者自身にとっても諦めずに治療に取り組む力になること、これは私たち、そして医療者にもいえることです。
取材させて頂いた患者・家族は覚悟をもって、カメラの前で本音を語って頂きました。多大なご協力に感謝します」

番組情報

タイトル
第26回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
『筋強直性ジストロフィーという難病を発症して 医師になったぼくは』(制作:テレビ愛媛)
放送日時
10月3日(火)25時40分~26時35分
スタッフ
プロデューサー
片上裕治
ディレクター
浮穴和心
構成
水沼智寿子
取材
八木貴士
撮影
内山実
ナレーター
名護谷希慧

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。