FNSドキュメンタリー大賞

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2017.6.27更新

日本を支えるマンパワー その深層に迫る!

第26回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
透明な外国人たち 彼らに支えられた街TOKYO

7月1日(土)26時20分~27時15分

東京で生活する中でよく見かける外国人労働者。そこにいることが当たり前になりすぎて、なのに、彼らのことを何一つ知らない……。彼らはまるで透明人間のように、“見えない存在”なのかもしれない。

中でも技能実習制度の外国人たちの職場は、日本の若者の働かない場所。彼らはなぜ日本に来て、どういう思いで生活しているのか? クリーニングと総菜製造。二つの現場で働くベトナム人を取材した。やがて一人が突然の失踪。再び巡り合った時、彼が語った失踪の理由は意外なものだった……。

日本で働く外国人労働者の数が去年100万人を超えた。東京で生活をしているとさまざまな場所で働く外国人を見る。コンビニ、居酒屋、ファストフード、工事現場…etc。もはや、東京は彼らなしに成り立たない。しかし、私たちは、その現実に見て見ぬふりを続けてきた。こんなに身近な存在なのに、まるで透明人間のような存在。政府も外国人労働者の存在を正面から受け止めようとしていない。そもそも外国人の単純労働は認められていないのだ。その代わりに、まるで“抜け穴”のような制度が次々と定められ、足りない労働力が補てんされていく。技能実習制度もその一つだ。名目は国際貢献だが、彼らの職場は日本の若者が働かない場所。最低賃金という条件で、日本人がいない穴を埋める。

これまでも多くの問題点が指摘されてきた技能実習制度。何度かの法改正を経た今、その現状には変化が起きていた。急激に増えるベトナムからの実習生。彼らは母国での事前研修の費用として、多額の借金を背負って日本にやってくる。そして毎年、増加する失踪者の数。彼らはどんな思いで日本に来て働くのか?

今回、番組ではクリーニングと総菜の技能実習生としてベトナムから来日した二組の実習生を追った。

クリーニング工場で働くナム(24歳)とンギャ(20歳)

去年8月、クリーニング工場で働くため来日したベトナム人技能実習生、ナム(24)とンギャ(20)。実家は店を経営するお金持ちで都会育ちのンギャと、貧しい農村出身で家族のために稼ぐナム。境遇のまったく違う二人が同じクリーニング工場で働き、同じ部屋で生活していた。彼らの仕事は、東京・埼玉の店舗から工場に届けられる1日2000点の洋服のクリーニング。40度を超える室温。繰り返される単純作業が嫌われるのか日本の若い人は働かない現場だ。60代以上のおばちゃんたちに囲まれ仕事をしていく中で二人はそれぞれの悩みを持つようになる。

日本に来るためにベトナムで50万円の借金をしたものの、思うように稼ぐことができず悩むナム。クリーニングの技術を学ぶために日本に来たはずなのに、思うようにクリーニングの仕事ができないンギャ。そして、ある日突然、ナムが失踪してしまう。

去年、失踪したベトナム人技能実習生の数は2025人。そのうちの一人になってしまったナム。なぜ彼は失踪してしまったのか? 彼を探す取材が始まった。

総菜工場で働くトゥエン(23歳)

去年8月、医療用総菜の専門工場で働くために来日したベトナム人技能実習生、トゥエン(23)。彼女は4人姉妹の末っ子。二人の姉がベトナムの日本企業で働く姿に憧れ、技能実習生としてお金を家族に送りながら、日本で勉強したいという思いで来日した。仕事は東京などの老人ホームや病院で出される総菜作り。トゥエン以外にも7人のベトナム人技能実習生が工場では働いている。

アパートの部屋で4人の女の子たちが共同生活する様子は、一見とても楽しいように見えた。しかし、ある日の研修で、彼女たちは突然、涙を流し始めた。彼女は言う。「技能実習は出稼ぎ目的には犠牲が大きすぎる。何かを失う覚悟がないとできない」。彼女たちが失ったものは何だったのだろう?

向井秀徳ナレーション初挑戦

番組のナレーションを担当したのは、ロックバンドZAZEN BOYSの向井秀徳。彼にとって、テレビ番組のナレーションは初挑戦となる。比類なき楽曲と歌声で聴衆を魅了してきた向井の声が、ドキュメンタリーのナレーションで見せた存在感も番組の見どころのひとつだ。

コメント

ディレクター・温井精一(フジテレビ情報制作センター)

「自分が東京に出てきて12年たちました。この12年でも東京は少しずつ変わり続けているように感じます。特に明らかに変わったのは、自分がお店やさまざまな場所で出会う外国人の数が増えたことだと思います。

彼らはどうして日本に来て、どういう思いで働いているのか? そんなことが知りたくて始めた企画でしたが、“抜け穴”のような制度だけ作り、正面から外国人労働者と向き合おうとしない政府のことや、自分たちの目には直接見えない、クリーニング工場や総菜工場にも外国人労働者がいることを知りました。

そして、報道されていた技能実習生の失踪が自分の目の前で起こりました。確かに予兆はあったと思います。でも、あのナムさんが失踪するとは思いませんでした。しかも、その理由は意外なことでした。

この番組を放送することが、自分たちの生活を支えてくれている外国人のことに、少しでも関心をもつきっかけになればうれしいです」

番組情報

タイトル
第26回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
『透明な外国人たち 彼らに支えられた街TOKYO』 (制作:フジテレビ)
放送日時
7月1日(土)26時20分~27時15分
スタッフ
ディレクター
温井精一
プロデューサー
宮下佐紀子
構成
石井成和
編集
芦垣均
撮影
  • 望月あずさ
  • 嶋田佳代子
ナレーター
向井秀徳

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。