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本展総合監修 山田雄司先生が語る企画展「The NINJA」の魅力!

日本科学未来館で開催中の企画展「The NINJA-忍者ってナンジャ!?-」(忍者展)は、忍術書や科学的な視点から「真実の忍者」の姿に迫る。本展総合監修 山田雄司先生(三重大学人文学部教授) に企画展「The NINJA」の魅力を語ってもらった。

今なぜ忍者が面白い?

本展総合監修 山田雄司(やまだゆうじ)・三重大学人文学部教授

ま再び忍者ブームが来ていると言われます。昨今のブームはクールジャパンの代表として忍者が捉えられていることが大きいでしょう。忍者は日本独自の存在で、江戸時代からすでに文学などで親しまれ、現代では小説や映画、マンガ、アニメと大きく展開されて人々から愛されています。まさしく日本文化を代表するコンテンツだと思います。
しかし本当の忍者の実態はいまだによく分かっていません。今に残されている忍術書をひもといてみると、医学・薬学・天文・気象・記憶術・呪術といった多方面の総合的知識が記されています。これらの知識は主に忍者が生き延びて、目的を果たすために必要な知識や技でした。



回の企画展「The NINJA-忍者ってナンジャ!?-」は、これらの忍者の知識や技をひもとき、科学の視点で意味を考えようという展覧会です。 これまでいろいろなところで忍者展が開催されてきましたが、多くは歴史や道具の展示にとどまっていました。本展では忍術書や古文書に書かれていることを読み解き、その情報を理科系などの専門の先生に提供し、科学の視点から研究をしていただきました。その結果、忍術書に書かれていることは理にかなっていたのかどうか、どのような意味を持っていたのかなど、分かったことを展示に反映しています。初めて忍者を実証的にとらえた展覧会だと思います。

者の一番の仕事は“情報を得て主君に伝えること”でした。そのために“戦わずに生きて帰ってくること”が大切だったのです。忍者といえば手裏剣を投げたり、相手を煙にまいてドロンと消えたりといった派手なアクションに目が行きますが、あれはのちの時代に一種のショーとして出てきたものですね。
忍者の日常は案外地味なものだったのです。忍者は地道なトレーニング(修行)を毎日続けていましたし、対象となる屋敷に忍びこもうとすれば地下道を通すために日々地面を掘り続けたり、木の塀に穴をあけるために塩水をかけ続けたり、案外地味な作業の積み重ねをしていたんですよ。昔と今とでは時間の感覚が違いますが、こういったコツコツとした積み重ねも大事なのです。コツコツ本を読む、コツコツ勉強して自分を高めていく。現代の私たちはすぐに目に見える成果を求めがちですが、忍者のように試行錯誤しながら地味でもコツコツ積み上げ、いつか大きなことを成し遂げる。我々も忍者に学べる点が多いにあります。

々もこの展覧会(企画展「The NINJA-忍者ってナンジャ!?-」)を主催の日本科学未来館さんを始めとする制作スタッフの皆さん、クリエイターの皆さんとディスカッションを重ねながら、3年もかけて準備してきました。私は三重在住なので毎回は来られませんでしたが、最後の1年間はほぼ毎週金曜の午後、缶詰で会議を重ねてきたんですよ。これもコツコツですね。

者は様々な知識を結集して、自分の環境に応じて創意工夫を重ねながら新しいものを作り上げていきました。時代を前進させるのはまさにそのような力です。
また忍者は活動している時、何が起こるか分からないわけです。自分の命もかかっている。そういった時、自分の頭で考えて判断し、臨機応変に対応できなくてはならない。意外なことですが、忍者は「戦わない」ことを最善としていました。戦えば双方に大きなダメージが生じます。忍術のことを詠んだ歌にも「逃げるが勝ち」とあります。

くましく生きた忍者に学ぶことはとても価値があります。「もうダメだ」と決して思わない。生きて生き抜く忍者の精神。こういった忍者の姿勢を我々の生き方にも活かしていければ良いと思います。