日本科学未来館で開催中の企画展「The NINJA-忍者ってナンジャ!?-」(忍者展)は、忍術書や科学的な視点から「真実の忍者」の姿に迫る。小説「忍びの国」で戦国時代の忍者を活写した作家の和田竜さんに展覧会を体験してもらった。
展覧会の始まりは「忍者研究室」。忍者にまつわる小説やマンガにDVD、国内外で制作された映画のポスターなどがずらりと並ぶ。「司馬遼太郎の作品はほぼ読みました。これ、『梟(ふくろう)の城』とか」と和田さん。一方で、忍者ものの映画はあまり見ないという。「実際出来るのかという超人的な描き方など、どこかずれている感じがしますね」
和田さんの小説「忍びの国」は、戦国時代の天正伊賀の乱を舞台に織田軍と忍びの集団との壮絶な戦いを描く。主人公「無門」は金の亡者で怠け者。だけど戦いにはめっぽう強い。「子どもにとってのダーティーヒーローのつもりで書いてました。ガンダムでいえばシャア。僕の好みをバシバシ入れていった」
人気アイドルグループ「嵐」の大野智さん主演で映画化され、2017年夏に公開予定だ。「リアリティーがあり、スピード感のある映画にしたい。古くささを感じさせないものに」
「忍者のリアル」は忍術書や古文書を読んで知った。展示されている「万川集海(まんせんしゅうかい)」や「正忍記(しょうにんき)」などだ。いくつかは「忍びの国」にも引用した。例えば「地面をべろりとなめて塩の味がしたら人が普段通る道」。汗が落ちるからだ。忍者は見張りを避けるため、塩の味がしない道を選んだという。「あってもおかしくないし、理由も書かれていた。なるほどなって思いました」
手裏剣打ちの「修行」コーナーに来ると「やってみたかった」と声を上げた。和田さんは手裏剣を持ち、まっすぐ前に振り下ろす。だんだんコツを覚え、続けて的に命中させた。次は「忍び足」。足を高く上げ、つま先から差し入れるようにそっと歩く。足裏にかかる力が強いとセンサーが働きサイレンが鳴る仕組みだ。何度か挑戦したがあえなく失敗。「忍術書どおりだと歩きにくいことは分かりました」と笑った。
忍術書のレシピを元に作った忍者の携帯食も紹介されている。でんぷん質が多く体力を早く回復する「飢渇丸(きかつがん)」は「忍びの国」にも登場する。「食べたことないです。まずいって書きましたけど」。これらを再現した研究者によると、実際あまり味はなく、氷砂糖や桂心(けいしん)(シナモン)が入った「兵糧丸(ひょうろうがん)」のほうがおいしい、という。
イタドリやクズなど伊賀(三重)で採れる薬草の押し花も並ぶ。山伏から継承し、薬にも通じていた忍者。「大変な知識だよなあ」と感心していた。
忍者にいま学ぶことは? 「生きのびるためには敵を前にしても隠れて逃げる。一見勇ましくないけど破れかぶれで戦うよりよほどいい。武家の潔さに現代の人が引きずられると大変なことになると思っています」