インタビュー

天才的な頭脳と集中力でどんな人物にも成りすますことができるコンフィデンスウーマン<=信用詐欺師>のダー子というキャラクターを演じてみての率直な感想からお願いします。
ターゲットを騙すために毎回いろいろな役柄を演じているので、ひとりの人間を演じているという感覚があまりないんです。だから、常に新鮮な気持ちでいられます。台本が素晴らしくて、どのシーンも楽しく……もちろん難しさもあるんですけど、やりがいを感じながら取り組んできました。
その難しかった部分というのは?いろいろな役柄を演じるというところでしょうか?
実は、いろいろなキャラクターに成り切る方が演じやすいんです。でも、ダー子という女性はつかみどころがないキャラクターなので。だから、いまだに(ダー子が普段生活している場所のひとつの)スイートルームのシーンは、「こうかな?ああかな?」って現場で思いついたことを取り入れながら演じているという感じなんです。
以前、「読めば読むほど良さを感じる脚本」とおっしゃっていましたが、改めて古沢良太さんの脚本の魅力は?
やっぱり、セリフが生きているっていうことですね。何度読んでも面白いんです。「こう来るだろうな」っていう、王道の笑いの部分もありつつ、でも何度読んでも面白い。その凄さは、まだ自分の中ではっきり答えが出ていないんですけど(笑)。物語の流れだったり、物事が最後まで解決していく間の感情だったり、その中にある王道の笑いだったり……というそのすべてに無理がないんです。
ダー子は、とにかくいろいろなキャラクターに変身しますよね。その楽しさや大変さは?
かなり、いろいろなキャラクターに成り切っていますね。初めは、ここまでやるとは思ってなかったんですけど、中には、「ちょっとコレ、ある人がやってたな……」というものあったりするんです。オマージュだと思ってやっているんですけど(笑)。世の中で流行ったであろうものも取り入れている感じがして、私的にはかなり面白いものになっているんじゃないかと。ただのコスプレにはなっていないと思います。
ビジュアルもかなり作り込んでいますよね。
そうですね。ダー子というキャラクターのユーモアも、ビジュアルでの遊びとして生かす、という感覚ではありますね。
中国人富裕層、くノ一、山形弁の40歳……と、いろいろな役を演じた中で、特に印象に残っているのは?
やっぱり、山形弁をしゃべる、大沼秀子という役は、台本を読んでいても面白くて、つかみの部分から大笑いしました。演じていても、見ているみんなが楽しそうなんです(笑)。「方言っていうのは不思議だなぁ」と思いました。ちょっと可愛らしくも見えるし、情をそそられる感じにもなるし。
コメディー作品の難しさを感じたことは?
今までにいくつか演じさせて頂いて感じてきたことなんですけど、笑わせようと狙っていかないのもコメディーではないし、とはいえ狙いすぎず、ちゃんとしたシリアスな芝居だっていうこともコメディーの大切な要素だと思うので、惰性でいかないようにするというのは気を付けています。やっぱり、演じていると楽しくなっていってしまうんです。共演者の方たちも凄くユーモアがあって、楽しい方たちばかりなので、どうしても現場が楽しくなってしまって、そのまま惰性でいきそうになることがあるんですけど、そういうことではなくて、着実に積み重ねることで生まれる笑いは必ずあると思っているので。丁寧に演じていけば人の心をつかめる、ちゃんと面白い作品になるんじゃないかと思うんです。「丁寧に」というのはテーマですね、この作品に対しての。
カメラが回っていないときの現場の雰囲気を教えてください。
小日向(文世)さんがムードメーカーで、ずっとみんなを笑わせてくれるのでとっても笑いの絶えない現場なんです。小日向さんは、「あれはどうなの?」といろいろと聞き出してくれて、そこから話が広がっていくんです。東出(昌大)くんはシャイな方なのかなっていう印象だったんです、初めは。でも、小日向さんにあれこれ聞かれて、すべてを引っ張り出されていますね(笑)。
では、そんな小日向さんに引っ張り出された、出演者の意外な一面は?
いや、小日向さんの話はしゃべれないことが多くて(笑)。プライベートな内容すぎて、みんなが口ごもってしまう、という流れが多いです(笑)。それはもちろん、現場をより良くしよう、柔らかくしようと思ってのことなんですけど……。今一番現場で盛り上がる話は、小日向さんが欅坂46の『二人セゾン』という曲が気に入っていて、それをみんなに「聴いてみて!」と言って聴かせるという(笑)。
ダー子が暮らすスイートルームでポイントとなる部分は?
スイートルームは基地となる場所なんです。広いんですけど、やっぱりダー子の部屋なので“ダー子らしさ”というものが凄く作り込まれているセットで、ホテルといえど家みたいな感じですね。
“ダー子らしさ”とはどういうイメージですか?
ゴチャゴチャしてるところ(笑)。ゴチャゴチャして、だらしがないっていうよりは、いっぱい詰め込んでいるっていう感じですね。いろいろな情報を自分の中に詰め込んでから騙しにかかる、そのための準備を念入りにするのがダー子の特徴なので、そういうダー子の頭の中みたいなものが表現されている部屋だと思いますね。
ダー子は、相手を信用させたり、心を開かせたりする作戦を立てたり、準備するために情報を大切にしています。そのほかにポイントとなるセオリーみたいなものは?
意外と感情というか、わりと情が深いんじゃないかなっていうのが見えてきていますね、回を重ねるごとに。ただの悪人ではなく、根の部分はとても愛情があって優しい子なんじゃないかなっていうところかもしれないですね。
では、長澤さんご自身が、相手に心を開いてもらうときのセオリーはありますか?
いや、ないですね(笑)。あまり、早く仲良くなれるタイプじゃないので、そこは頑張らないようにしています。こういう仕事をしていると、知らない方がいいなと思うこともあるんですよね。遊びに来ているわけでも、友達を作りに来ているわけでもないので、知らないくらいの方がお芝居しやすかったりもするから、「なるようになればいいかな」と思っています。
日本のTVドラマでは「コンゲーム」を題材にした作品はあまり見ないですが、このジャンルに関してはどんな印象を持っていますか?
小日向さんが、「石川五右衛門だ」と言っていました。昔からある「世直ししつつも自分が得をする」とはまたちょっと違うけど、意味のある結末を遂げるっていう。だから、新しいジャンルだという感覚はあまりないです。やっぱり、基礎あってこその新しさだと思うので、展開とか見せ方での新しさはあると思いますけど、根底にある物語は王道だし、古典的なものでもあると思っています。

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