番組向上への取り組み

番組審議会

第546回 番組審議会議事録 概要

1.開催日時

2025年4月9日(水) 12時より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社ビル10階 大会議室

3.出席者
  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 岡室美奈子
  • 委員
  • 井上由美子、小山薫堂、最相葉月、齋藤孝、舞の海秀平、三浦瑠麗
  • 局側
  • 清水社長、大野取締役、安田取締役、塚越常務執行役員、鈴木執行役員、大辻執行役員、藤井編成局長、濱情報制作局長、出澤秘書室長
    坪田コンプライアンス推進室長、渋谷編成局次長統括、森安報道局次長統括、佐野考査・放送倫理部長、小池視聴者センター部長
    森本技術局電波担当、宮下情報企画開発部長
    番組関係者/西村情報制作局次長、CP・成田
    事務局/番組審議室
4.議事

(1)報告事項
1.放送番組種別の放送時間報告について
2.2024年度下期 視聴者センター部報告について

(2)『フジテレビ問題』
局から、3月31日に第三者委員会による調査報告書の受領、及びその受け止めと、同日公表した「再生・改革に向けて」について報告、説明した。

  • 第三者委員会の調査報告書を受け、指摘を真摯に受け止めている。事案発生時にどうしてあのような間違いを起こしたのか、その根底にある問題を改めて指摘された。今回、「再生・改革に向けて」を発表した。個別の施策の打ち出しだけでは、組織としての意識の定着にはならない。不断の努力を継続すること、経営のレベルでしっかりとコミットすること、世間へ開示することを何度も続けないと変わっていかないし、信頼も回復できない。

これらの報告に対して、委員からは以下のような意見があった

  • 改革の取り組みは、人権にポイントを置いて真摯に対応したプランだと思う。人権リスクマップなどは若手社員にも分かりやすく網羅され、とても取り組みやすいものだと思うが、コンテンツ開発やクリエイティブに向けた提言が少ない。
  • この事態を反省して、フジテレビが変わろうとしていることを一般の方に分かっていただく最も有効な方法は、やはり「番組」。今の状況だからどんな番組ができるか、どんな良質な番組に切り替えていけるのか、今までと違った方針を出していただきたい。
  • 報道をどうするのか。自分たちが叩かれる側に回った時、今までどおりの報道をできるだろうか。必要以上に正義の衣を装って人を糾弾する、不確定な状況で番組を成立させる在り方を見直した方がよいのでは。
  • 海外との関係において、アニメのアピール力には日本人の想像を超えた熱量がある。ただ単に内向きになるのではない、フジテレビの魅力をどう発揮していくのかを考えてみては。
  • 第三者委員会の報告書をもう一度読み直し、「今回の問題はどこでどう間違えたのか、この時に何かできることはなかったか」を検証すること。類似案件の検証も含め、頭の痛い苦しい作業だと思うが非常に重要。
  • 報告書の内容を知って会社が怖くなったという人や、分かっていたけど自分たちが声を上げられなかったことに自責の念を覚える世代もいると思う。会社の将来を不安視する人が居ても不思議ではない。それでもこの厳しい、恥を晒すような報告書を受け入れたことは一つ前進であり、そこが出発点だと思う。
  • 第三者委員会の報告があって、『再生・改革に向けて』が出されたが、その間が抜けている感じがする。第三者委員会から、これまでのことについて厳しい指摘があった。その「これまでのこと」についてどうするのか。具体的には、処分なり、損害賠償責任を問う訴訟を考える。その段階がない。
  • 社員よりもタレント優先にしてしまった、タレントを王様にしてしまった権力構造、力関係に対する観点が足りない。いびつな力関係を分析、報告してほしい。
  • フジテレビにとって大変厳しい内容ではあったが、非常に優れた報告書と感じた。根本的な大きな再生・改革の機会を与えてくれたもの。中途半端なものが出なくて本当に良かった。
  • 「再生・改革に向けて」の取り組みの概要は大変共感するものだった。人権を中心に改革を行っていくという方針も大変正しく共感した。ただ、大きな方針だけではどうしても抽象的に聞こえてしまうので、具体的なことに関して伺いたい。
  • 力を持ったタレントなどからハラスメント的な要望を受けた時に、どのように拒否できるのかはものすごく重要なこと。対応マニュアルなど具体策が必要ではないか。
  • アナウンサーという職能やその位置づけに問題があった。フジテレビには「女子アナ」としてタレント的に売り出してきた歴史があり、それが成功したという認識が局としてあるのではないか。「女子アナ」という言い方も改めたほうがよいのではないか。
  • 男性女性に限らず、アナウンサーは接待要員ではないということを徹底し、アナウンサーという職能として尊重していくために具体的な方策はあるのか。
  • 一番大事なことは、当初の対応がなぜ生まれたかということを、本当に根本に遡って、そこの中にフジテレビの体質というのがどのように表れていたのか、これをはっきり認識しないと出発点はない。
  • 自社の社員が傷を付けられても、スターの方に気を遣っているありようは、フジテレビの大文化の中の表れだということをはっきり認識しないといけない。その大文化の中に、それを肯定するものがあるから、怒りがなくて済まされる。
  • この際、本当にフジテレビは新しい時代の新しいテレビ局として生まれ変わるべき。その一番の心棒は、社員を大事にする会社。それがフジテレビに課された最も大きな使命だ。
    それを徹底的にできることが、信頼を取り戻し、視聴者の納得を得られ、スポンサーの理解を得られる出発点になる。
  • 今度の事件の本当の底にあるフジテレビのイデオロギーとは何なのだろう、それが今までフジテレビの原動力になってきたけれども、その文化から新しい文化に移らないとフジテレビの明日はない、そのくらいの気持ちでこの事件の心底を見極めて、そこから出発してもらいたい。
  • 「風土」は採用から始まる。『再生・改革プロジェクト』のテーマの中に、こういう風土を作ってしまった採用基準というものに対する「採用問題」の検討があって良い。

(3)番組審議 ※予定された番組審議をリポート審議とした
審議番組:『救命救急24時 2025』(3月25日放送)
各委員からは、審議番組に関して以下のような意見が出された

  • 現在、フジテレビは人権意識に著しく欠けていると批判されている。この作品は、神の手の人や国内外の人々の生命を懸命に助けようとしている人々を、温かくかつ正確に世に伝えようとしたものである。人の命の大切さとそれを守る人々の美しさを伝え続けることは、フジテレビに課された大切な使命ではないか。
  • もう少し対象やテーマを絞ってもよかった。赤ちゃんの救命医療を深く掘り下げるとか、看護師の待遇改善へと世論を高めるような番組など、社会にコミットしていく番組づくりの可能性があるとよい。
  • 構成力に優れ、過剰な演出やお涙の押し付けもなく、命の現場を真摯に記録していた。
  • タイトルが他局でもよくある救命ものと変わらないので、もっと印象に残る言葉をつけてもよかったのではないか。
  • 頭の中から次々と流れていってしまうようなコンテンツが多い中で、見終わった後も心に深く残り、様々なことを考えさせられるドキュメンタリー。
  • 刺激の強い映像を含む内容だっただけに、放送時間は食事時でないほうが、多くの人の目に触れる機会が広がるのでは。
  • 働く人々の言葉にも心に響くものがあった。看護師たちの人生が垣間見えたのも、取材班との信頼関係が丁寧に築かれていたためだろう。
  • とてもすばらしいドキュメンタリーだが、救急の現場に必ずある「死」を描かないのはなぜかと思った。
  • 学ぶことが随所に出てきた。番組を見た人が自分の仕事や生活に学びを取り入れる気持ちになったのではないかと思う。
  • 番組として成立させるためには、残念ながら、大きな事故や病気という要素が必要なのかもしれないと思うと複雑な気持ちになる。撮影や編集作業が長期・長時間になるのは想像に難くなく、スタッフの忍耐力にも感服する。
  • すごいドキュメンタリー。医療は命の現場で、医療技術の巧拙を超えた生死の不条理がある。冷静にきちんと不条理に向き合うものとなっており、かつ大きな希望を与えてくれるものでもあった。
  • 医療従事者の勇気やモチベーション、その責任感、能力に注目しつつ、リアルを描くという手法も共感できる意義深いもの。

これらの報告に対して、フジテレビからは以下のような意見があった

  • 「伝え続けることがフジテレビに課された使命」というご教示は肝に銘じたい。
  • 「長尺で長く感じた」というご指摘については、「救命救急病棟」と「赤ちゃん救急病棟」の二つの現場の伝え方・構成が、症例の段積みに見えてしまったと感じている。
  • 「看護師さんにフォーカスした番組が見たい」とのご提案については、今回も何人かの看護師に取材も行い、番組の全体構成や時間帯特性を考慮して後半に短い尺で放送した。次の機会があれば、「5年前に入った新人看護師の成長ぶり」なども描きたい。
  • 「タイトルが他局でもよくある救命ものと変わらない」というご指摘については、新たな視点を提示できるタイトル、打ち出しは、今後の課題であると思う。
  • 「刺激の強い映像を含む内容だっただけに、食事時でないほうが」というご意見をいただいたが、時間特性をより意識し、20時台に置いた「赤ちゃんの出産」を前半にも入れる展開でも良かった。
  • 人手不足と働き方改革により、医療現場の逼迫状況は深刻で、「残った看護師を育てる」から、今は「辞めさせないで育てる」に方針変更。その上で、「命を守る」という医療現場の命題も両立させる苦労もあった。それらは、他の領域の仕事にも参考になる課題、取り組みだった。
  • 長期取材のスタッフへの労いに感謝申し上げる。スタッフは昨年12月から約三ヶ月間、病院の密着取材を行って多くの死とも向き合った。その現場を、制作会社やフリーの制作スタッフがやり遂げてくれたことにも感謝している。本番組を支えるキーパーソンは、現場で患者や家族と最も近くで向き合うカメラマン。彼らが患者さんや家族との信頼関係を作っているからこそ、取材が許され、医師や看護師も番組制作に協力してくださっている。

以上