番組審議会

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第517回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

2022年5月11日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 岡室美奈子
  • 委員
  • 小山薫堂、井上由美子、最相葉月、三浦瑠麗、齋藤孝、舞の海秀平
  • 局側
  • 遠藤副会長、金光社長、小川専務、清水常務、小林常務、石原取締役秘書室長、矢延取締役編成制作局長、加納執行役員報道局長、大野情報制作局長、中村編成部長、坪田コンテンツ・コンプライアンス室長、芹田考査・放送倫理部長、森本電波担当、立本制作センター室長、保原第一制作部長、宋プロデューサー、三竿プロデューサー、編成部・髙木、穂積番組審議室長、中本番組審議室部長、番組審議室・大橋

4.遠藤副会長より

  • 審議番組「やんごとなき一族」に出演中の上島竜兵さん死去に際し、哀悼の意を表した

5.議題

審議番組:『やんごとなき一族』

各委員からは、審議番組に関して以下のような意見が出された

  • 設定は古いが、一周回って新しく感じる。それは作り手たちが迷わずにあり得ない話、いわば魑魅魍魎のホームドラマを楽しんでほしいと思って制作しているからだと思う
  • 作品に突破した個性があり、最終回まで中途半端にひかず振り切れば、フジテレビドラマ全体の底上げにつながるのでは
  • 状況説明が多く、勢いを削いでいる面もあった。このようなドラマは視聴者が現実に戻らないよう、ぐいぐい引っ張る方が良い。順番に描く構成がお行儀良すぎるのでは。視聴者の予測を裏切る展開があれば、もっと楽しめる
  • 松本清張風のドラマなのかなと思いきや、意外に爽やか。ドロドロしているが、ヒロインを応援したいと思うようになっている。どれだけ応援したくなって、次も目が離せなくなるかがポイント
  • このような時代錯誤な設定の場合、単にヒロインがお嫁さんとして成功するだけではなく、現代っ子としての自立心を表現して欲しい
  • 80年代の『昼ドラ』の愛憎劇との違いは「時代」。当時は軽やかな希望が持てたバブル時代。今はウィズコロナでもう一度元気を取り戻す必要がある。そのような時代に木10の時間帯で格差婚に加え、現実に近すぎる父権主義、男尊女卑、ハラスメントのオンパレードを見せられると厳しく感じる
  • 現代の格差を描くのであれば『パラサイト』のように振り切って毒を放つような作品でないと難しい。予定調和に良い話で終わるのはやめて欲しい
  • ドラマでは登場人物に「輝き」があって欲しい。今回は佐都の「はばかりながら」という決めゼリフの後に気っぷの良い啖呵が切られ、毎回カタルシスがあれば、1回ごとの達成感があり、主人公もより一層輝くのでは
  • 『マイ・フェア・レディ』のように毎回何か1つ習得できるといいのでは。イジメではなく、正当なトレーニングとして、ヒロインが何か学んでいくと、視聴者にとっても知識として面白い
  • 最近見なかったぶっ飛んだドラマで面白い。佐都の実家の食堂が懐かしく思えて、食堂での人間模様をもっと見たい
  • サウナの中のハンマーのように、あり得ない設定があると現実に戻されてしまうので、もっと巧妙な演出を考えて欲しい
  • 主人公・佐都がしっかりしすぎている。脱走するくらいのことがあっても良いのでは。力士は稽古がつらくて何度も脱走し、戻されていく内に強くなるので、佐都にも脱走するくらいの立場でいて欲しい
  • リアリティーとコメディーのバランスが取れていないのでは。コントほどの突き抜け感はなく、細部にリアリティーはあるものの、全体的にはリアリティーがないので、リアルな情報が余り伝わらなくてもったいない
  • 番組連動型CMについて。松本若菜さんが役柄ではなく、女優に戻ってしまうので、視聴者を冷めさせてしまっているのでは。このようなCMには主要キャストを登場させてはならないと考えている
  • 最終回では深山家がやっつけられる逆転ホームランのようなものを期待する
  • このドラマは、腐敗した上流階級に嫁いだ庶民の女性が自らの常識や正義感を武器に闘うところに爽快感がある。原作では佐都に学ぶ姿勢があり、庶民と上流階級のコミュニケーションが生まれる。しかしドラマでは深山家が理不尽で、佐都が正しいように描かれるので薄っぺらいドラマにならないか心配
  • 今後は勧善懲悪的にただ単純に問題を解決してスカッとするだけではなく、リアルな部分もきっちり描き、大人も楽しめる格差間、異なる文化間のコミュニケーションのドラマにしていって欲しい
  • 本作はおとぎ話ではなく、リアリズムに満ちたものでもない。原作の持つスカッとした表現力を上手く映し出せたら面白いのでは
  • 極端なところは極端なままで。設定自体も超金持ちの人たちの生活を描くので、それはそれで割り切ってそういうものとして演出してはどうか。それをどう受け取るかは見る人に任せれば良い

フジテレビ側からは以下の発言があった

  • コロナ禍でのドラマ制作の現状について。社内の感染症対策本部の方針に加え、各番組独自に策定した感染安全対策マニュアルを遵守している。スタッフ、キャストの安全第一との方針で撮影を進めている
  • 深刻化している格差社会に庶民という理由だけでさげすまれている主人公がどのように立ち向かって権力に物申していくかを描き、その勇気と爽快感が視聴者の日常の辛さを忘れさせ、明日も頑張ろうという気持ちになって欲しいとの思いで制作している
  • このドラマは、女性がどう自立していくかもテーマの一つになっている。佐都が試練にどう立ち向かって自立するか。さらに佐都以外の女性たちの自立をどう描くかもテーマになっている
  • 「はばかりながら」は毎話登場し、皆さんにスカッとしてもらいたい。「はばかりながら」に続くセリフが優等生過ぎず、言うべきことをきちんと言うようにしていきたい
  • ドラマ中のCMについて、ドラマのスタッフがメインで制作している。制作が難しく、キャラクターが徹底していない部分があった
  • このドラマを制作するに当たり、女性が戦ってスカッとするというドラマを目指している。佐都をヒーローとして捉え、健太という夫の方がヒロインだという裏設定を持ち、思い切り振り切ってやろうと話し合っている

6.その他の番組、放送に対するご意見

委員から以下の意見があった

  • 長年第一線で活躍してきた芸能人の死が相次いでいる
  • 震災復興でも見られた傾向だが、非常に苦しい状況下よりむしろ周りが立ち上がっていく時、自分の状況との違いに苦しみ自殺する人が増えることが、統計上確認されている
  • コロナ禍における自殺者も、緊急事態宣言中は例年と変わらないが、日常化に進んだ時に増えているというデータを示す医師もいて、今、非常に気をつけなければならない時期なのだと思う
  • 著名人の自殺報道について局としてどのように考えているのか、また、ドラマのスタッフ・共演者など関係者をどのようにフォローしているのか

フジテレビ側からは以下の発言があった

  • 報道に当たっては、基本指針を作成している。一律的な判断ではなく、個々の検討を基本としている。WHOのガイドラインにも沿っており、「センセーショナルな表現は避ける」「手法についての詳しい報道は避ける」などとなっている
  • 報道の後に「いのちの電話」等を紹介し、「1人で悩まないように」という呼びかけを必ずしている。今後も慎重に進めていきたい
  • 上島竜兵さんは『やんごとなき一族』で次の出演も予定されていた。長く時間を共有されていた共演者の心中はいかばかりかという思い。コロナのまん延等で制作現場も逼迫しているが、このタイミングで共演者にプレッシャーがかからない環境を作るべく努力する。制作スタッフに対しても現場全般を追い詰めないような形で進めて行きたい

委員から以下の意見があった

  • せっかく伏せても、最後の「いのちの電話はこちら」というところで自死だと分かってしまう
  • いのちの電話の必要性は分かる。しかし、自死が一つの病死という考え方もある。学校ではショックを広げないため、病死と取り扱うことがある。いのちの電話の告知を広める別の形もあるのではないか

フジテレビ側からは以下の発言があった

  • 必ずしも関連付けて報道するのではなく、切り離しても良いのではないかという考え方を改めて検討したい
  • 自分と近い人が亡くなった時にはかなりショックを受け、悩みが出てくることもあると思う。病死、自殺という区別もどうなのかと新たに感じたので、検討していきたい

委員から以下の意見があった

  • コロナ禍、ウクライナ情勢と、センセーショナルで大きな物語が自分たちの人生に被さってくると、高揚する人もいれば不調になる人もいる。もう少し足もとの問題も併せて考えていくべきではないか
  • 軍事情勢や、経済制裁の効果とその繋がりについて、より大きな世界観で行く末を論じるようなディスカッションはほとんど見かけない
  • 次の参院選を前に、どういう選択をするのか分からないのは良くない。主権者教育にもなる番組を作っていってほしい

フジテレビ側からは以下の発言があった

  • 『めざまし8』の「分かるまで解説」のような解説コーナーといった手法はできるが、専門家の討論となると時間的な制約もありなかなか難しい
  • 『日曜報道THE PRIME』では比較的可能。ご提案の重要性は痛感している。良い方法を考えたい

7.金光社長より挨拶

  • 連続ドラマの1話についての論評は、難しいテーマ設定だと思う。その中で、金持ち論やリアリティーとのギャップ論など、様々な角度から建設的なご意見をいただいた
  • テレビ局の在京キー各局はコロナ禍を脱して概ね業績好調と思われるが、4月以降の状況は、ウクライナ情勢や極端な円安の影響で、広告市況が低迷し始めている。その克服が経営課題だが、そういう中でもメディアとしての役割を全うしていきたい

8.連絡事項

  • 次回第518回は、6月8日(水)の予定
  • 審議番組は5月23日(月)放送『あしたの内村』

以上。