番組審議会

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第513回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

2022年 1月12日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8
但木委員長以外の委員、およびフジテレビ出席者の一部が、テレビ会議形式で参加。

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤副会長、金光社長、小川専務、清水常務、小林常務、石原取締役秘書室長、矢延取締役編成制作局長、加納執行役員報道局長、大野情報制作局長、坪田コンテンツ・コンプライアンス室長、中村編成部長、芹田考査・放送倫理部長、森本電波担当、西村週刊フジテレビ批評担当、穂積番組審議室長、中本番組審議室部長、熊谷番組審議室

4.議題

審議テーマ:『コロナ禍のテレビ』

フジテレビ側より、審議テーマについて以下の説明があった。

  • 2020年4月に緊急事態宣言が発令され、日本中が巣ごもり生活を強いられる中、テレビの役割は変化してきた。当初、正確な情報を求めてニュース番組を中心に視聴が増加。その後はエンターテインメント性が強く求められるようになった。さらに動画配信への加入も加速した。
  • 人々の行動形態や嗜好の変化を受け、テレビはどう変わっていくべきなのか、今後、どのようなエンターテインメントを届け、どのようにニュースや情報を正確に伝えていくべきなのか、その責任も問われている。

各委員からは、審議番組に関して以下のような意見が出された。

  • テレビが強いと感じたのはドラマ。いろいろなアイデアが生まれた。中でもとても良い企画だと感じたのは、『めざましテレビ』とYOASOBIが、コラボし、5000以上の応募作の中から選ばれたの『めぐる。』。BPO青少年委員会のモニター報告で中学3年生の女の子が、「凄く心が温まってほっこりした、2週間と言わずずっと続けてほしい」という感想を述べていた。
  • お笑い番組にも大きな変化が感じられるようになった。『ドリフに大挑戦スペシャル』については中学1年生の女の子が「痛みを伴う笑いということで一括りにしてしまうと何もできなくなるのではないかと思った。痛みを伴う笑いだから子どもに悪影響だなどと言ってしまうと、一部のシーンを見てそれに至る経緯や流れを見ずにこの番組は良くないと真っ向からしてしまうことは少し違う気がしました」と述べていた。文脈を読み取る力の大切さを指摘する貴重な意見。
  • 高校3年生の女の子は最近のニュースを地上波テレビで視聴しない理由として「ジェンダーや様々な事柄の多様性への欠如、固定観念に縛られたような質問などに不快感を覚えたから」と書いていた。中高生であってもリテラシーがあれば極端な見方はしない。批判も含めてまだまだテレビへの期待を感じる。
  • データを提示する時には客観的なデータを提示する、不確実性を予め織り込んだ幅のあるリスクイメージを提起する、拡大したウイルス画像をおどろおどろしい音楽と共に流さない、言論弾圧でもなく、理想主義に流れ過ぎるのでもない中でできることはあるはず。
  • 検証はメディアに馴染まないと思った。自分たちが過去言ってきたことや分科会の発言の振り返りが何故そんなに怖いのか。未知のウイルスを最初から分かっている人はいない。だからこそ、過去を振り返りながら現在、明日に生かしていくというのが正しいやり方ではないか。
  • どんな人がコロナ自粛で被害を受けたのか検証されず、何となくお金を出せば休んでくれるだろうという感じで今まで来ている。
  • コロナ禍には個別具体的なそれぞれの人のストーリーが存在している。社会全体に乗り切らないものを、エンタメを含めて報じていくのがメディアの役割。
  • この2年で視聴者として一番感じた変化は、命に関わる状況が起こった時、最初に接触するメディアはテレビではなくなったということ。まずはスマホでSNSをチェックし、その後正確な情報を得るためテレビをつけて確認する。コロナによってむしろ共有できる情報を得るためのメディアとしてテレビの役割は大きくなっている。
  • 今のテレビの報道には速報性よりも正確さが求められている。ネットでは流言やデマが多く、デマのせいでワクチン接種を見合わせた人が多出した。デマを信じた理由として、それを否定する情報がなかったからと答えている人がほとんど。これからのテレビの報道はこれらのデマを防ぐ安全弁になることを目指していけば、テレビへの信頼性が長く続くのではないかと思う。
  • 視聴者のテレビに対する不満の一つに、「チャンネルを換えても同じ内容を同じ順番で放送している」というものがある。フジテレビは伝統的に個性を追求してきた局なので、もう少し独自性を強調する方向に工夫をしてほしい。
  • コロナによって存続の危機に見舞われている文化のジャンルを支援する企画を立ち上げてはどうか。例えば、フジテレビではドラマ『のだめカンタービレ』がヒットした実績もあり、何かフジテレビらしい企画でクラシック界を支えるというアイデアはいかがか。
  • テレビはその時代の一番弱い人たち、困っている人たちを照らすスポットライトでなければいけない。『料理の鉄人』を立ち上げた時、当時の社会ではなりたい職業のベストテンには絶対入ってこなかった料理人という生き方が注目され、やがてそれが日本の食ビジネスの発展に貢献した。テレビには世の中の「気」を創り出す力がある。
  • テレビの一番の強みは、この指止まれの指が魅力的な強烈な力を持っていること。「磁場」、たくさんの人たちを巻き込む力がある。テレビだからこそいろいろな人が寄ってくる、協力をしてくれるということがある。この指を社会のため、未来のためにどう使うかがテレビマンに問われる。
  • 強力な磁場であるテレビには、価値あるお祭りを作る使命があるのでは。テレビによって価値が生まれた例がたくさんある。町、業界、人を巻き込むことを世のプラスとするお祭り的な番組をテレビ界が力を合わせてやってはどうか。
  • テレビは未曽有の状況の中、娯楽は不要不急という空気や、様々な制約を乗り越え素晴らしいドラマを作った。コロナ禍でも、アイデアやよい脚本と技術、そして何より根底に流れる思想があれば“お手軽”では終わらない充実した作品が作れるという証明ができた。一方で、実現できなかった作品や公演などがある。コロナ禍でどんな発明があってどんな工夫がなされて何が出来たのか、何が出来なかったのか、それも記録にとどめて将来役立てて欲しい。
  • ドラマには、データには残らない人の心のありよう、コロナ禍で私たちが何を考え、何を感じ、どう受け入れたかが記録できる。テレビと配信の区別がつきにくい状況だが、テレビは私たちの日常に密着したメディアなので、新しい日常をきちんと受け止めてこれからのドラマ作りをして欲しい。
  • コロナについて、社会防衛、防疫の面が語られるが、医療問題として考えることが大事。社会防衛の典型的な体験として、海外から帰国した日本人は10日間ビジネスホテルに閉じ込められる。いわゆる自主隔離を体験した日本人を取材したことはあるか。
  • オミクロン株の日本への流入の一つの有力なルートとして、検疫を免除されているアメリカの軍人・軍属があげられている。政府批判の問題としてではなくて、医療の問題として考える必要がある。
  • 病院態勢、保健所態勢、厚労省の戦略、それから日本の外交問題としてのアメリカへの対応ついて、テレビの持っている力をもっと発揮してほしい。フジテレビはどのような取材と論陣を張っているのか。
  • テレビ環境が急速に変わっている。インターネットという新しいツールがテレビ界を巻き込み、新しいビジネスモデルができつつある。例えばスタジオに重鎮を呼ぶ必要はなくて、自由に上手くコーディネートすれば新しい番組が作れる。対面ができないからという発想を変えれば新しく面白い番組はできる。
  • これからテレビに期待されるのは予測。フジテレビのスタンス、将来こうありたいということと、生活者がこういう考え方を持つと社会も良くなるということを、多くの人に伝えること。
  • 全国民に受け入れられることはあり得ない。フジテレビが提案する基準に賛同する数を増やしていくには、信頼性というキーワードを使って新しいビジネスを作ることではないか。
  • この2年間、コロナの危機が報じられてから今に至るまで、日本人は、マスコミが報道するように行動してきた。これは一見、政府の方針をメディアが伝え、国民がそれを守ったように見えるが、実際はマスコミの感性や批判がテレビから流れ、国民はそれを選んで行動してきた。
  • だからこそメディアは間違っている報道を絶対してはならない。日本国民はメディアが流す報道を見て行動するということを覚悟した上でテレビは報道しなくてはならない。
  • エンターテインメントの面では、もしテレビがなく、ずっと家にステイホームしていたら、今の落ち込み状態では済まされなかった。そういう意味でもテレビの果たした役割は非常に大きかった。
  • マスメディアとSNSの違いもいくつか見られた。コロナに関して言えば、SNSの影響を受けた人もいたが、科学的知見に基づいたマスメディアの報道を是として行動した人のほうがはるかに多かったといえる。フジテレビにはそうした力があるのだから、それを前提にした報道をしていかなければいけない。

フジテレビ側からは以下の発言があった

  • 自主隔離のケースや制度が変わり、その渦中に放り込まれた状況の人たちの実態をなるべく取材しようと考えている。リモート取材が多いが、時には自分で撮影し報告してもらうなど、手法を工夫しながら、今どういうことが起きているのか取材しようとしている。
  • 米軍基地を入口とした感染拡大については、『日曜報道 THE PRIME』に岸田首相が出演した際に質問するなど、番組で様々な意見を取り上げている。
  • テレビというメディアとしてどこまで提言的なものができるのか考えなければならない。物ごとを判断するための座標軸を示していくことはできるのかなと考えている。記者や解説委員などの発言には、そういう材料、要素は入っていると考える。
  • スタジオにとどまるばかりではなく制作に取り組めるという発想は各現場にも浸透している。更にそれを新しい切り口として取り組んでいく。
  • テレビの使命は、正確な情報を送り届けること、そして王道の娯楽を送り出すことだと再認識した。
  • 「テレビでは、コロナ禍の困窮者、少数者、弱者、あまりフィーチャーされずに日本の文化を担っている人々などにスポットライトを当てるべきだ。」という意見が複数あったが、全くその通りだと思う。
  • ただ、その時の扱い方が重要。ニュースや情報番組でストレートに扱うことや、ドキュメンタリーで追いかけることはシンプルな手法の1つだが、テレビの役割には、いかにエンターテインメントに昇華し、より多くの方に届けるか、ということもある。テレビは学校ではないので、単純に「伝える」「教える」というスタンスではなかなか見てもらえない。例えば、『のだめカンタービレ』でクラシックのファンが増えた、あるいは『料理の鉄人』で、店ではなく料理人に日が当たったように、興味を持ってもらうために様々な手法を使えるので、そこに力を込めるべきだろう。
  • 社会問題の解決にはならなくても、単純に『楽しい』という役割も否定したくない。その上で多様な使命を果たし、これからもテレビの可能性を追求していければと思う。

7.その他

  • 次回第514回は、2月9日(水)の予定。
  • 審議番組は『爆買い☆スター恩返し』1月28日(金)20時放送

以上。