番組審議会

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第506回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

2021年4月14日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8
委員長以外の委員、およびフジテレビサイドの一部がテレビ会議形式で出席。

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、岸本専務、和賀井専務、松村常務、大多常務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、矢延制作局長、大野情報制作局長、齋藤編成部長、齋藤考査・放送倫理部長、森本聡電波担当、西村週刊フジテレビ批評担当、加藤コンテンツ事業センター局長補佐、大國視聴者サービス推進部長、後藤プロデューサー、橋爪プロデューサー、牧野制作センター局次長、保原第一制作部長、高田編成担当、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室局長職兼部長、熊谷番組審議室
    (欠席・金光取締役・FMH代表取締役社長)

4.フジ・メディアHDの外資規制問題について報告

  • 2012年4月から2014年3月にかけて株式会社で言う議決権数の過誤があり、それを基礎数値とする外国人の議決権比率も放送法が規制する上限を、オーバーしていたことを公表した。関連会社である会社を100%子会社にした際に発生した相互保有株式の確認漏だった。
  • この件については、発覚した段階、2014年9月時にいわゆる議決権数値は適正な数字に戻っている。更に速やかに再発防止策および、違反の状態があったことを確認して総務省に報告、厳重注意を受けた。
  • 番組審議委員の皆様、関係者、視聴者の皆様には大変ご心配をかけ、深くお詫び申し上げる。

5.議題

審議番組:月9ドラマ「イチケイのカラス」
2021年4月5日(月)21:00~22:24放送

各委員からは、審議番組に関して以下のような意見が出された。

  • 原作はマンガだそうだが、ドラマとして名作だと思った。登場人物のキャラクター、伏線の張り方、回ごとのテーマ、アニメーションを用いた例え話、秀逸で分かりやすい。
  • 精神疾患が関係する刑事裁判で精神鑑定を務めた精神科医を取材したことがあるが、判決文は、たとえ有罪でも被告の納得いく文章であることが治癒的でもあるという話を聞いた。入間みちおの「本人が納得してない刑を下すとどうなると思う?全て分かった上でこの事件に関わった人全員にとって一番良い判決を下したい」という台詞は、全ての裁判官に向けて重要なメッセージを発している。
  • 竹野内豊のキャラクターが秘めている思いは、これからドラマが進むにつれていろいろ明らかになってくると思うが、司法の今までの在り方に対する何らかの思いというか、あるいは復讐心もあるのかもしれないし、そういったものが出てくるのを楽しみにしたい。
  • 実際に裁かれる側の被告人の方のストーリーについては、表層だけ見ていると明らかな有罪に見えたり、あるいは大したストーリーに見えなかったりするが、その裏にはいろんな人の人生のストーリーが詰まっていることが分かる仕立てになっているのは非常に良い。
  • オーソドックスを恐れずに作っていて、逆に勇気が要ることだ。途中にアニメーションを入れる遊び心もあり、コスプレのくだりもストーリーに帰していたので、演出の監督、頑張っていると思った。
  • 竹野内豊の型破りなキャラクターは、『HERO』の木村拓哉にそっくりで新しさがないという声もちょっとあった。衣装が自由で学歴がなくてふるさと納税で部下に堅物の女性がついているという設定は、通販好きな久利生公平に似ているとは感じたが、ある意味型破りというのは定番でもあり、竹野内は無理なく余計なことを考えずに伸び伸び演技をしていて、このまま突き進んでほしい。
  • 口当たりが良い世界観の分、ストーリー上、甘く見える要素もある。例えば電車の運転士は目撃していなかったのか、そっちに聞けばもっと早く解決したのではと感じる人もいただろう。
  • 『HERO』を思わせるところがあって、やや見慣れた感があるが、それでも面白くて、すぐに原作のマンガを読んだ。驚いたのが、キャラクター設定が結構異なっていて、黒木華演じる坂間が男性だったところに衝撃を受け、そもそも男性同士だったものを入れ替えたところが素晴らしい。正直テレビ版の方が面白かった。単なる原作マンガの焼き直しでないところに拍手を送りたい。
  • もしこのドラマに欠点があるとするならば、面白過ぎるところが欠点かなと。分かりやすく面白くしようとするところが逆に作為ととられ、だんだん見透かされていったり飽きられたりしないかなと、そこだけ心配になった。
  • オマージュなのか、なぜ『HERO』に似せたのか。せっかく面白いドラマなのに過去の作品を真似しているように見えてしまうのはちょっともったいない。
  • 黒木華の役は、男性でも良かったのではないか。男女だとどうしても恋愛要素が絡んでくるように期待してしまう。必ずしも原作に忠実である必要はないが、なぜ女性にされたのかは後でお伺いしたい。
  • 『HERO』も『リーガルハイ』も『イチケイのカラス』も、事件の真相を解明するに当たって男性の型破りな主人公の方が、圧倒的に物事がよく見えている存在として描かれている。やがてその型破りな男性に感化され、優等生で常識に囚われていた女性の方が変容していくという筋立て。『HERO』から20年、『リーガルハイ』からも約10年経過している。そろそろ型破りな男性に導かれて真面目で堅物な女性が開眼、覚醒していくという筋立てではないものが見たい。ぜひステレオタイプにならないようにして頂きたい。
  • 女性裁判官が語った、「裁判官は憲法と法律、良心にのみ拘束される」という条文が憲法の中にある。その良心というのが正面から問われていることだと思う。最高裁判所の中に、裁判をしない裁判官が300人いる。そのトップが最高裁長官であり、事務方のトップが事務総長。その司法官僚システムに操られているというか、その典型があの女性エリート裁判官である。それにいわば対抗する“自由な良心”を演ずるのがこの主人公だ。
  • その点に問題意識を出してきていることは、裁判官が置かれている真実を国民が知る上で良いことだ。その挑戦する姿勢に敬意を表したい。
  • ただ残念なことには、専門家から見てもおかしくないリアリティーがないと、ドラマとしての存在感が減じてくるのではないか。裁判官の「捜査」という言葉が使われているが、裁判官が「職権調査」をすることはあっても裁判官のやることに「捜査」という言葉は使わない。
  • 専門家から見て気になる点は、弁護活動だ。このドラマは弁護人の存在感が弱い。弁護人側の存在感がなくて、「職権調査」の時に弁護人が立ち会っていない。そういうところに当事者主義と言われている今の刑事法廷の進行が見えない。ここを直さないと。法律に詳しくない人のところへ行っても、本当の意味での説得力を失うのではないか。面白かったけどそういう点が残念だった。
  • 私も『ガリレオ』を見て、科学としてはおかしいよねということも実際多々あったが、ドラマ全体として見た時に、なるほどそういう考えで進めていくと、真実の証明の実験の手順が多少どうであれ、ドラマとしては面白いし、科学者としてのイメージが新しく見直された。今回の裁判官の似ている気がする。
  • 日本の司法は独特であり、戦前、旧刑訴というのがあり、その時代は、検事は全然捜査をしないで、予審判事が捜査の中心になっていて、予審判事が警察に命じて捜査をさせる独、仏系の刑訴をやっていた。
  • 戦後になり、予審判事制が無くなった。つまり警察を使いながら捜査をしていくという役割を検察が担ったために、検察官は絶対に有罪になる以外の事件は起訴しない日本独特の体系が出来上がってしまった。そうであるからこそ逆に検事が起訴したのは有罪ではないかと裁判官が思う面が出てきたのも、それもまた本当だろう。
  • 裁判員裁判が行われるようになり、直接裁判官の役割、きちんと有罪の投票権、科刑についての投票権も持った市民が現れてきて、裁判官はこの人たちに分かりやすいように手続を説明し、今の動きを説明しなきゃいけないという立場になり、裁判官の在り方が変わってきた。今はむしろ、検事と弁護士が闘っているのを見て、その闘いの中から有罪であると確信できれば有罪、そうでなければ無罪という、アンパイアに徹しようという方向に行っている。
  • このドラマで裁判長が職権で検証する場面が出てくるが、裁判官が自ら真実を探求することが、むしろ遠くなってきている。裁判官は与えられた捜査結果、あるいは弁護側の主張を裏付ける証拠結果を見て右か左か判断していくという方向に行きつつある。
  • このドラマはそれに全く反する方向で作られている。確かに法律には裁判官が自ら検証することができるという規定もあるし、規定を利用すれば裁判官が自分自身で真実に近づこうとすることも可能ではある。そういう意味では、このドラマは、実態とはかけ離れているけれども、本来の裁判官がこうあってほしいという意味の裁判官像には割合に近づこうとしているという、非常に面白い試みだ。

フジテレビサイドからは以下の発言があった。

  • 裁判官物をやるに当たって、リアリティーを重視した上でファンタジーも入れて、やってきている。専門家、法政大学大学院教授に全面的に裁判官部分の監修をお願いした。それ以外にも、元書記官の方や、検察担当の方、刑務監修の方、警察監修の方など、通常の事件物に比べると監修パートには力を入れた。
  • 「裁判官が捜査はしない」との指摘があったが、これは監修の先生方から強く反対をされたところ。裁判官の権利として「検証」はするが「捜査」するとは言ってほしくないと。ただ、ファンタジーとして描く時に「裁判所主導で検証します」よりも「裁判所主導で捜査します」と言った方が面白くなるなと思い、監修の先生方とさんざん議論して、そこまで思いがあるのであればと言っていただいた。
  • マンガの主人公は男性だが、このキャラクターを黒木華さんがやったら面白そうだな、ハマりそうだなと思ったのが何よりも大きかった。
  • 確かに型破りな男性が堅物の女性を振り回すというドラマはよくあるが、その逆は意外とない、次回以降の企画でそこは意識してみたい。
  • 委員長がおっしゃっていたが、本来の裁判官はこうであってほしいと。この企画をやろうと思った原点はそこだと思った。裁判官って良いな、なりたいなという若い人たちが1人でも2人でも出てきてくれたらいいと思うし、日本の司法がこのドラマをきっかけにあるべき方向に向かってくれたらこの上ない。

6.その他の番組、放送に対するご意見

ワクチン報道。副反応の範囲と、ワクチン接種アプリの周知について。

  • 医療関係者から再三再四、有害事象全般、と副反応とされるものをしっかり分けてほしいという要望が出されている。アナフィラキシーとはされないものがアナフィラキシーと分類されている。医療界の見解を踏まえて報道することが各局とも求められるのではないか。
  • 現状、日本で今認可されているのはファイザー社のワクチンのみで、今後、武田モデルナ、アストラゼネカのワクチン。この3社に関しては、基本的には共通に採用するアプリで接種記録をとり、おそらく健康保険組合などと連携しながら健康情報や医療情報とワクチンの接種記録をつなげていく。あるいは特定のロットに不具合が生じた時の対応に役立てることが検討されている。実際には効かなかったワクチンのロットが出た場合、どのロットのワクチンを打ったかという記録を取っておくことがとても重要だ。この3社が共に採用するアプリであれば、十分に公益的な意味で周知ができる。

ご意見に対して、フジテレビサイドから以下の発言があった。

  • もちろん国だけに頼るわけではないが、なかなか製薬会社等のことも含めてそのままダイレクトに放送、周知するについては、危険性の問題とか、この辺りは現場の方で適宜専門家の意見も聞きながら、どうやったら上手く周知ができるのか研究したい。

7.報告事項

(1)BPO放送人権委員会「リアリティ番組の遺族からの申し立て」に関する委員会決定について

  • 3月30日に放送人権委員会の決定の意見書が公表された。番組放送の決定過程で出演者の精神的な健康状態に対する配慮が欠けていた点において、放送倫理上の問題があった。
  • 昨年の7月30日に公表した検証報告書においても、出演者へのケアについての認識、及びSNSの炎上への対応における不十分さについては既に報告していたが、改めて重く受け止めている。
  • 木村花さんがお亡くなりになったことについて、改めて重く受け止め、今後の対策を着実に実施すること、効果に応じて改善を続けることなどをして、今回のようなことが二度と起こらないように努めてまいりたい。
  • 3月8日に総務局内にコンテンツ・コンプライアンス室、SNS対策部を発足。この組織を中心にSNS上の対策や出演者の心のケアといった課題に取り組んでまいりたい。

この報告に関して、委員からは以下のご意見があった。

  • 取材をして書く、それを公表するに当たっては、相手の方にも十分説明して、そのことの意義、公表することの意義、それだけのリアクションがあるかもしれないということを予め説明して覚悟を持っていただくことを、特に近年の取材ではSNSの影響も非常に大きくなってきたので、私自身が感じている。

そのほか、報告事項として、下記の2件が報告された。
(2)「放送番組種別」について
(3)2020年度下半期の視聴者からのご意見

8.その他

  • 次回は5月12日水曜日12時の予定。
  • 審議番組は『めざまし8』
  • 開催方法については、後日決定の上連絡する。

以上。