番組審議会

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第503回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

2021年1月13日(水)午後0時より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8
委員長以外の委員、およびフジテレビサイドの一部がテレビ会議形式で出席。

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛(リポート出席)
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、岸本専務、和賀井専務、松村常務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、金光取締役・FMH社長、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、矢延制作局長、大野情報制作局長、加藤コンテンツ事業センター担当局長、齋藤編成部長、齋藤考査・放送倫理部長、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室担当局長兼部長、熊谷番組審議室

年頭にあたり、遠藤社長、但木委員長から挨拶があった。

4.遠藤社長挨拶

  • 世界の情報の垣根が一気に取り払われている。それは時に虚実入り乱れ、匿名でのヘイトの発信も可能となり、大きなうねりだ。今、テレビを始め、メディアはどのような役割を担うべきなのか。まず、テレビが今求められているのは「信頼性」、そして「正確性」のある情報。同時に、厳しい状況下で、人の希望になる何かも求められている。2番目に、テレビ局のコンテンツビジネスの位置づけ。従来の「放送収入」、そしてイベント・映画等の「放送外収入」、これに加え、有料動画配信、見逃し配信、そしてこれから起こるであろう常時同時配信、これを「放送隣接収入」として位置づけて、3本の大きな柱として表現していく。三つ目は、コンテンツの危機管理について。従来の地上波番組の危機管理に加えて、配信コンテンツの危機管理、またSNSの利用、SNSの反応への対応など、今日的なものに対応するためにコンテンツコンプライアンス室を設置する。
  • フジテレビの2021のスローガンは、『その目に希望を』だ。引き続きコロナ禍に人の命と生活を守るための情報を届けながら、人の心を少しでも明るく保つメディアでありたいと考える。

5.但木委員長挨拶

  • 本年も皆さんの自由闊達な意見で当審議会を盛り上げていっていただきたい。
  • ネット、SNSの役割は実に全世界を支配する、あるいは凌駕するような勢い。これまでは、割合簡単な割り切りで済んだが、今やフジテレビの非常に重要な事業部門がネットに関わっており、そういう単純な話では済まなくなってきている。本日のテーマは「テレビの役割、ネットの役割」だが、年に1回の自由討議の場なので、緊急事態下の報道のあり方とか、新型コロナウイルスに関する報道のあり方とか、皆さんが今心に強く思っていることをそのまま率直にお述べいただきたい。

6.議題

審議テーマ:「テレビの役割、ネットの役割」
*ほかに報告事項として
(1)「SNS対策委員会・検討報告書について」
(2)「世論調査における一部データの不正入力 再発防止策について」

各委員からは、審議テーマ「テレビの役割、ネットの役割」に関して以下のような意見が出された。

  • コロナのテレビに対する最大の影響は、全ての世代、全ての職業、生活においてオンライン化が進んだことだ。中高年から超高齢者、仕事でZoom会議をする必要のない職業の方や専業主婦の方々が、スマホを媒介としてオンラインでの買い物やエンタメに急速に親しんだのは、コロナの副産物と言える。
  • Netflixのような配信だけではなくてオンラインライブやオンラインシアターなどのライバルが生まれた。これは元に戻ることはなく、視聴者の時間を奪い合う新たな商売敵が異業種から参入してくるのは抑えようがない。
  • そんな中、本来のテレビの武器であるライブが今こそ見直される時ではないか。この数年、テレビは配信を見据えた番組作りが増え、企画会議でも、配信でもウケる企画、世界に配信できるドラマを、と言われ、意気に感じることも増えた。ただ一方で、配信に利用できるバラエティ、オンラインで、世界中で見てもらえるドラマのようなものを求める流れが大き過ぎるのではないかとも感じる。
  • 映画業界でも応援上映などの新しい見方を提供しているし、コミックでも読者投票によって映画化や連載中止を決めるなどの試みが行われている。テレビにも、じっくり見られるクオリティーの高い作品を配信する一方で、その時の瞬間風速として盛り上がりを地上波で提供できる企画作りに、優秀な人材を投入して、車の両輪方式でテレビ界を盛り上げていっていただければ。
  • フジテレビは富士山であってほしい。誰からも見える、誰からも愛されている、同時性や即時性を強みとしながら、正確な情報を確実に伝達する仕組みを構築しているという信頼を持っている、そういうテレビ局のブランドがこれからは価値として語られていく時代になっていく。
  • 例えば『FNS歌謡祭』は、素晴らしい番組だ。そのブランドに多くの才能、アーティストが集まってその場が生まれている。スポーツで言うならば国立競技場みたいな場所を作り上げている。これはネットの世界ではなかなかできない。地上波だからこそ国立競技場的なたくさんの才能を集める場が成立する。
  • 一過性の娯楽を追い続けていくと、ネットコンテンツには勝てないのではないか。むしろネット先行でコンテンツをテレビ局が作り、その中のいいものを地上波で放送するそういうシステムがあってもいい。
  • 少し古い手法ではあるが、『We Are The World』、『Do They know It's Christmas』のような、何かエンターテインメントの力で人々を結束させる、共感させるような番組を作り、非常事態宣言の発出ばかりを煽るんじゃなくて、どうすれば非常事態宣言の必要がなくなるかを考えるきっかけになるような、そういうメッセージ性のあるエンターテインメントがあったらいいのではないか。
  • 元旦にNHKで放送された『2021 あたらしいテレビ』が、衝撃的だった。テレビのプロデューサー、脚本家、クリエイティブディレクター、音楽クリエイター、10代のタレントさんが出演し、2020年の心を動かした映像コンテンツトップ10をそれぞれ発表したのだが、ほとんどがネットコンテンツだった。
  • ネットと共存していくことは今強く求められ、重要なことではあるが、改めて放送、ブロードキャスティング、あるいはマスメディアということの意味を考えるべきではないかとも強く感じた。
  • テレビの強みは、同時に多くの視聴者が見るということに尽きる。Twitterでトレンド入りするのはやはりテレビ番組関連。もちろんTwitterは、非常に危険な面もあるが、同時に楽しむ、みんなで盛り上がるというテレビが本来持っていた文化を取り戻させてくれた面もあった。
  • もう一度みんなで楽しめる、盛り上げられる、そういう番組を自由な発想で作っていっていただきたい、そこに放送、ブロードキャスティングということの意味がある。今ここにしかない感動をたくさんの人が共有できるのは本当にテレビの強みだ、追求してほしい。
  • まず、テレビというのは事実の取材、それから取材した映像を100万人以上の多数者に届けることができるというメディアだ。そのことによって、民主主義の基本になるべき公共権を作り出すことができる力を持っている。
  • コロナに即して言うと、命を守るために事実をきちんと伝えるという報道の基本的な役割、例えばGoToトラベル等の停止の遅さとか、緊急の措置をとることについての遅さについてもっと取材して、事実によって批判する、状況を変革するということを心がけていただきたい。
  • 今年ぜひ忘れないで力を入れていただきたいのだが、福島第一原発の水素爆発が起こってから10年。単に10年前を回顧するというのではなくて、これからの日本を作っていくために原発再稼働があっていいのか、原発はどうなのか、それから取り残されている避難地域の人たちの問題をぜひ忘れずに番組で取り上げていっていただきたい。
  • 何が今YouTubeで起こっているのかというのをちゃんと見てみようと思ってかなり集中的に観察した。第1波の緊急事態宣言時は、ミュージシャンやアーティストの同時多発的な演奏会やお芝居、芸人さんたちのチャンネルが増加して、全国的な有名人が発信の場をYouTubeに求めたということで、テレビとインターネットは境目のないメディアとして機能するということを強く実感した。
  • その一方で、その世界では相当有名という部門別の専門家ユーチューバーたちがかなり登場していた。
  • 私がこの半年間で特に注目したのは、投資ユーチューバーの方。30代半ばで、日米のハーフ。10歳頃まで日本で過ごし、その後渡米。ウオール街に勤務するトレーダーだったが、一昨年末に株を全部売って世界旅行をして、日本に戻ったところコロナの影響で実家のあるアメリカに戻れなくなり、YouTubeで投資について特に若者向けにレクチャーしたところ、一躍話題になった。
  • 今の時代には、今の時代に合った新たなビジネスや活動を支援する日本経済の新しい潮流を後押しするような投資を描いた情報番組やエンタメ番組があってもいいのではないか。コロナで落ち込んだ経済とメンタル、勇気づける新たなビジネスについての現代的な視点からの番組作りが可能ではないか。
  • アメリカではトランプ大統領がSNSから締め出されたことをきっかけに、ネットでの規制はどうあるべきか、今までの大統領の発言に対する報道はどうだったのかという議論が盛り上がっている。GAFAなどが強い権限を持ち過ぎているのではという懸念が提示されている。
  • ネットは自分の見たい意見しか届かないように段々なってきている。ネットの方が自由だとされながらも、ますます特定の言論しか見られなくなってきていることもあり、実はテレビの果たす役割はそこでは大きいのではないか。
  • Twitter、Facebookなどのプラットフォームはいわば独占状態にある。そのような状態にあって国家を超えるような権力を持つことをどう考えるべきなのか。
  • 現状では新型コロナウイルスのワクチン接種の記録は市町村で、紙で管理される。現状、厚労省のシステムは、出荷情報は記録されるが、何人に打ったかという情報は記録されない。結果的に打ったのか、それとも使えなくなって廃棄したのかも厚労省は把握できない。単に政府のミスを事後的に指摘するだけではなくて、事前にワクチンの接種記録は誰がどう管理して残すのか、副反応の追跡はどうするのかと提起するべきだ。適切な接種とその後の情報管理を啓蒙することが必要になってくるのではないか。
  • 現在は新参者のネットが個人へのアプローチができることで自由度が大きい特徴が目立つので、新しいビジネス展開で有利に進めている。一方「個人」「自由度が大きい」という点が同時に脆弱性を生み、まだ従来のマスメディアには社会的信頼性はかなわない。
  • 最も重要なのは今まで築いてきた社会的信頼を絶対に失わないために、フジテレビが培ってきた、報道であれ、バラエティであれ、ドラマであれ、全ての番組作りでプロとしての丁寧さを残すバランス感覚をこれからも維持していってほしい。
  • 人類が、アンコントロールの巨大なものを作ってしまったということである。原理的に言えば好きな人が好きなものを作る自由はある。それはそれで素晴らしいことで、Twitterから永遠に削除されたら自分が好きなTwitterを作ればいい。ただ事実、寡占化された少数の巨大なネットワークがあるわけで、それが何のコントロールもないまま、好きな選択ができてしまう。それが将来非常に大きな人類全体に対する支配力になっていかないかという危険なものを我々は今動かしている認識は必要だ。
  • テレビは是非、地球の永続性、人類を含めた動植物の永続性を維持するために、最大限一貫してそれを増す方向で放送を重ねていってもらいたい。コロナの問題も、政府に対する批判をするのは自由だけれども、しかし最後のメッセージはみんなで感染をできるだけ防いでいこうという方向であってほしい。

7.報告事項

(1)「SNS対策委員会・検討報告書について」

  • 10月にSNS対策委員会を発足させてSNSのリスクマネジメントについて検討してきたが、「これからのSNS対策の在り方について」という検討報告書を取りまとめた。
  • 既存ガイドラインの見直しと、SNSリスクを管理するための社内体制を整備。リスク検知として、社内情報集約やモニタリングの体制。リスク対応として、トラブル発生時における迅速な対応、メンタルケアも含めた解決体制を整備。SNSリテラシーを向上した上で、SNSを適切かつ効果的な利用を推進。
  • この対応策を主導、運用する部署としてSNS対策部(仮称)を新たに設置して、SNSに関わるリスクマネジメントを全て担当していく。

この報告に対して、委員から以下のような発言があった。

  • 最近オバマ前大統領がオバマ・ファンデーションサミットで行ったトークが話題だ。アメリカで「woke」と呼ばれるいわゆる意識高い系の人たち。いろんな社会問題に意識を持つこと自体はいいことだが、それが過剰になっていくといわゆるバッシング文化に繋がる。自分を絶対正義だと思い込んで、ダメだと思うと一斉に叩く文化。オバマ大統領がそういうのは行動主義ではないと、手厳しく批判したとてもいいトークだった。バッシングカルチャー自体にテレビも働きかけていくことを考えていただければと。対症療法ではなくて、もっと根本的な問題にテレビが取り組めないかを申し上げておきたい。

(2)「世論調査における一部データの不正入力 再発防止策について」

  • 不正再発防止策としては管理・監督機能の強化で、世論調査のリアルタイムでの確認としてフジテレビ、産経新聞社による現場への立ち会い、モニタリングなど、あわせて事業会社の方も一緒に立ち会う。これに遠隔でのモニタリングも加えて、回答者の答え、オペレーターの入力内容が正確に「回答」に反映されているかをチェックする、そういう三重の構えをとることした。
  • ポイントとしては調査対象者と調査員の通話記録の全てを、何度も複数の人間で確認する。確実に実行するために、フジテレビと産経新聞それぞれ世論調査の担当部署の体制を強化する。

この報告に対して、委員から以下のような発言があった。

  • 審議会で論議した幾つかの点を参考にして取り入れていただいて防止策を作っていただいたと思う。今、制度ができたところなので、実際に行われた段階で、またご報告いただきたい。

8.その他

  • 次回の第504回番組審議会は2月10日(水)。開催形式ついては、後日連絡。
  • 課題番組は、水曜10時のバラエティ番組『突然ですが占ってもいいですか?SP』1月27日放送。

以上。