番組審議会

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第501回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

2020年 10月14日(水)午後0時より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、岸本専務、和賀井専務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、金光取締役・FMH社長、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、矢延制作局長、大野情報制作局長、齋藤編成部長、森本電波担当部長、齋藤考査・放送倫理部長、西村週刊フジテレビ批評担当、狩野編成担当、加藤チーフプロデューサー、名城総合演出兼プロデューサー、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室担当局長兼部長、熊谷番組審議室

4.議題

審議番組:「千鳥のクセがスゴいネタGP 2時間SP」
2020年10月8日(木)21:00~22:54放送
*ほかに報告事項として
(1)SNS対策委員会立ち上げについて
(2)日本新聞協会賞受賞について
(3)日本民間放送連盟賞最優秀賞受賞について
(4)放送番組種別の放送時間報告
(5)2020年度上期 視聴者サービス推進室報告

冒頭、増田宗昭委員の退任の報告があった。

各委員からは、審議番組に関して以下のような意見が出された。

  • 地下鉄のホームに、『千鳥のクセがスゴいネタGP』の大きなポスターがあり、そこに「どういうお笑い?」というコピーがあった。これまでだったら「なんでやねん」とか「アホ」とかのツッコミをするところを「どういうお笑い?」。誰も傷つけずに空気を一変させるツッコミがあると感動しながら笑った。
  • 1軍ネタをやらないという制約がある中、千鳥もゲストがウケないならウケないなりに受け止めるコメントに優しさがあって、何を足せば笑いに転換するか?というのを、試されている。新しい形の大喜利を見ているようだ。
  • 『鬼滅の刃』一つとっても、物凄く詳しい情報を交換する形で盛り上がり、友達が作れる場合がある。この番組は大衆全般みんなに平等にウケるものじゃなくても良いのだというメッセージになる。
  • 男性に対してはハゲとかデブとか不細工とかさんざん言ってきたが、女性に対していきなり認められなくなってしまった。今後、新しいスタンダードを考えないといけないが、誰も傷つけないお笑いがいいとは思っていない、テレビである限りは絶対に誰かが傷つく、という点を考えて頂きたい。
  • 「クセがスゴい」というワード、これをどのぐらいの日本人が知っているのか。芸人さんたちのネタがクセがすごいのかどうかがやや曖昧で、そこがもう少しはっきりすると、ああ、クセが強いんだと視聴者も一緒に思えるんじゃないかと感じた。
  • 150㎝の女はスケベという友近さんのネタを興味深く拝見した。でもスケベといってもいろいろある、どんなスケベなのか、「こんなの地上波で言っちゃって大丈夫か」というところまで友近さんにツッコんでほしかった。
  • ツッコんでいる千鳥をさらにツッコむような芸人さんを出して、若干刺激を与えるなどすればバリエーションが出るのではないか。「クセがスゴいわ」と千鳥が心底言えるネタを芸人さんたちが出せる環境作り、スタッフのモチベーションを上げることが一番強い。
  • 芸人さんが捨てかけたネタとか、つまらないネタを敢えて使って、カメラマンや編集マンや音効さんや、美術さん、スタイリストまで、番組全体が一つのチームとなってネタの再活用をしようとしている、その気概を感じた。
  • たとえば、好きなお好み焼き屋があるが、店主のおばちゃんのクセが強くて、焼きながら客を罵倒する。そのクセに耐えられた人だけがここの美味を味わえるという店がある。そういった「情報」のクセまで入ってくると、お笑いのアクセントとして面白いかと。
  • 地上波を軸にしながら、ネットとどう連動させていくかによって、この番組は更に伸びそうな気もするし、新しいテレビの作り方ができる気がした。
  • 画期的なネタ番組だ。一つは、芸人たちをオチの呪縛から解放したこと、そしてもう一つは、オチ自体がゴールではなくプロセスで笑わせる。お笑いを自由にしてくれる番組だ。
  • ネタの途中で千鳥の2人がどんどん喋るのも面白い。千鳥の2人は、オチのはっきりしないような芸を割と早くからラディカルにやってきた。その千鳥がMCをやっているのは適任だ。
  • 笑い自体が変化してきている。オチに収束するものばかりではなくなっていることを素早く取り入れて番組にしたのは素晴らしい。
  • 自分は孤立無援だと思った。この番組のターゲット、絶対これだという層はどこなのか。
  • 最も受け入れることができなかったのは、身長150㎝の女子はスケベであるというネタだ。例えば職場で男性が身長150㎝ぐらいの女性をつかまえて「お前さん、スケベなんだって」と言ったとする。これは世の中で通らない。「ハゲはオヤジの典型で、これほどスケベなやつはいない」と言ったとする。それは男性に対しても成り立たない。いわんや女性の場合、そこにセクシュアルハラスメントという規範が重なる。
  • 孤立無援と聞いて安心した。多様な委員がいることが大事だ。差別があることが実は笑いの要素にあるというのは否めない事実。でもそれを社会常識として批判されたので悩ましい。
  • 1時間ずつでやっても30人ぐらい芸人を集めないといけない。毎回凄い労力が必要ではないか。過去には、それでつぶれていった番組もあるので、そういうことの方が気になった。
  • 「今週のグランプリ」を決める必要があるだろうか。視聴者も多様化している。評価が一つではないという時に、最後にいきなり千鳥のグランプリと来た。平成の価値観がまだあることが気になった。
  • 物凄く速いテンポだ。一旦休憩して、もう1度見た。面白かったけれども、非常にくたびれた。
  • 我々老人にあれを見せるならば、2時間は疲れて到底追いかけられない、1時間が限度だ。ただ老人はターゲットではないからそんなことを気にしないでキーのジェネレーションを中心に作ればいいのだと割り切った方が良い。

委員の意見を受けて、制作サイドから以下の発言があった。

  • 「クセがスゴい」というのは非常に抽象的なもの、今後レギュラーになっていく中でどれぐらいそれが担保できるのかとか、意識して芸人さんとはコミュニケーションをとって、「クセ」を強くしていけたら。
  • 150㎝のネタについては、最後まで悩み、芸人さんが持ってきてくれたネタだからそのままやっていいのかも凄く考えたが、最後に「私見です」との注釈を入れ、制作が半分逃げているところも正直ある。
  • 収録体系に関しては、感染対策で分けたことによって、4日間で80ネタ撮るとか、制作側に非常に負担が大きいが、楽しんでやっていただけてはいる。
  • 大悟さんからも、始まる前に、「芸人さんを大切にしてくれ」と言われた。ネタをなるべく切らない方が、芸人さんたちが表現したい形を出してあげられるので、いろいろ検討した結果、(時間の関係で)グランプリだけを出すことになった。
  • 幅広い方に楽しんでいただきたいという思いは変わっていない。疲れるというのは確かに若者向けのテンポになってしまっているのかなと。非常にバランスが難しいところ。
  • お笑いと接すれば接するほど、正直よくわからなくなってきた、お笑いって何だろう、テレビで表現するものって何だろうと。一つだけ思うのが、お笑いは時代を切り取るものだなと、自分の念頭に置いている。その時代をどう切り取って見せるかということが大事なのかなと。
  • ご指摘のとおり、実は千鳥さんのコメントが大喜利となっている。それが本当にやりたいことで、本人たちのコメント力、自由さ、芸人さんに対する優しさということを表現したい。
  • その人のパーソナリティーや千鳥と芸人さんとの関係性など、お笑いというものを多様化する意味で、コメントをなるべく使用して、見る方に違った印象を与えるということに演出の重きを置いている。
  • 150㎝のお話は、ストレートに本人が表現したいのはズバリ差別だと思う。差別ということを、外国人の通訳という形、女性が女性のことを言っているという形で表現している。それは芸人さんの作品なのだが、その後のスタジオの使い方に配慮した。大悟さんが「わかる」、一方、ノブさんは「違う、そんなことない」と、両方をつけた。それが正解であったかどうかわからないが、多様化という意味では、いろんなネタがある一方、いろんな解釈もあるということをそこの中で表現したくて作った。

その他の番組、放送に対するご意見。
(1)「バイキングMORE」での学術会議メンバーの年金報道について。
(2)「緊急避妊薬」の報道について。

  • 一つは、日本学術会議に関する、解説委員による誤報道だ。この訂正が火曜日の『とくダネ!』内であり、いささか不十分だった。
  • 解説委員あるいは出演者などがTwitterでさらった情報を信じてしまうことはよくあることなので、再発防止策をぜひ考えていただきたい。
  • まず日本学術会議のネタをやるということになれば、出演者に事前にコメントの内容、意向を確認し、そこにおいて精査する側がある程度の知識を持っているということが重要だ。
  • もう一つは、今後、議論がさらに加速していくであろう緊急避妊薬の問題だ。緊急避妊薬を薬局で自由に買えるようにすべきか否かという議論は今後加速していくが、産婦人科医が「とくダネ!」に出演していたにもかかわらず、避妊の自由という女性の人権にかかわる問題がスルーされてしまった。
  • 今後、緊急避妊薬について扱う場合には、まず人権問題は押さえておいていただきたい。例えば夫婦間のレイプだとか、そういった問題につながりかねない認識は良くないということだ。現状、ピルは治療目的でも避妊目的でも処方されており、特に緊急避妊薬が導入されたから夫婦間で黙って避妊が行われるというわけではないので、そこも留意していただきたい。
  • 世の中でなぜ望まぬ妊娠が多いかをもう少し考えてほしい。例えば父親の健康保険を使ったという記録が、何々医院を受診したという記録が父親に行く。非常に抑圧的な家庭である場合、産婦人科を受診したというだけで家庭内暴力にさらされてしまう可能性もある。貧困家庭、虐待家庭始め自分が所属していないような社会的環境を念頭に置いて女性の命や人権を巡る問題については報道していただきたい。

この意見を受けて、フジテレビ側から以下の発言があった。

  • 解説委員の発言については、事実の確認が不足していて誤報を出してしまった。事前に打ち合わせなく、突然振られたので思わず言ってしまったということで、単純なミスだが重大なミスで、訂正をした。『とくダネ!』での訂正は、取って付けたような感じがしたので、しっかり番組サイドとも打ち合わせして、謝るべきことは謝れば良かった。
  • 軍事研究の問題、緊急避妊薬の問題等、ジャンルとして非常に深い問題をはらんでいるので、相当番組サイドが勉強しなければならない。どういった方に取材するのかということも相当見極めた上でやっていくことが、ますます問われている。
  • 早速、解説委員長が、各解説委員室のメンバーと報道局に見解を出した。社内外を問わず、当該の部局に聞いて確認をするという姿勢、報道は毎日編集会議をやっているので、報道センターの編集会議の内容把握を心がけてくださいというようなことで、危機意識は共有した。

(3)コメンテーターの発言に対する、番組側の姿勢について。

  • 『Live Newsイット!』という番組で、コメンテーターが、「学術会議は国の機関としては廃止して民間の団体にしたらいいんですよ」と言った。それを司会者が「ああ、そうですね」と言って終わった。コメンテーターの言っていることはフジテレビの見解ではない。

この意見を受けて、フジテレビ側から以下の発言があった。

  • ご意見をコメンテーターとして言っている。確かにMCがそのままスルーするのではなくて、何か一つ別の議論もあると、一言受けるべきであった。
  • この問題は、報道だけではなく、情報番組、あるいはBSの番組、『日曜報道THE PRIME』等、いろいろやっている。全体としてはバランスをとっているつもりではあるが、一つの番組の一つの意見が突出しないようにしていくことは心がけたい。

(4)『バイキングMORE』の企画について。

  • あるコーナーを見て、ちょっと怖いなと思ったところがあった。一つは、「彼女が料理が下手だと思った瞬間」をイケメンたちに答えさせるという内容、もう一つは、女性を見て子どもたちが「どこからおばさんでどこまでがお姉さん」なのかを判断させるという企画だった。
  • もしかしたら企画に女性も携わっているかもしれないが、非常に危うい企画。それが面白いところではあるのだが、それほどの問題とは思わず進めておられるなら、と心配になったことだけお伝えしておく。

この意見を受けて、フジテレビ側から以下の発言があった。

  • 3時間にするに当たり、バラエティ制作センターのチームともコラボしての制作体制にトライしている。今までの情報制作局が作ってこなかったパッケージ感のあるコーナーもトライしてみようと始めている。
  • 料理コーナーに関しては、放送の直前と直後、議論し、価値観の見方としてこれはどうなんだという議論は、連日のようにしては進めている。その辺の全体の認識を、真ん中の軸というか、世間とのズレのないようにということをもう一度見直しながら、今のご意見もいただきながら進めてまいりたい。
報告事項

(1)SNS対策委員会立ち上げについて。

  • 今月初旬、総務局長を委員長とした社内の法務、コンプライアンス管理部門及び各制作部門の危機管理担当者等の社内横断メンバーで、SNS対策委員会を立ち上げ、検討を開始している。
  • SNSに関するリスクを改めて想定、整理し、番組コンテンツ等の制作においてリスク回避のための予防策、及び、出演者を始めとした関係者のSNS上でのインシデントの早期発見・検知、どのようになっているかの状況の把握、炎上や誹謗中傷などが起きた際の対応策、さらに関係者の心のケア、専門家によるバックアップ等を、速やかに検討して、12月中旬をめどに指針、ガイドラインとしてまとめる。
  • 今後、番組審議会でもご報告させていただく。

(2)2020年度の新聞協会賞受賞について。

  • 7月11日放送、報道局報道番組部制作の『コロナ重傷病棟 医師たちの闘い』が、今年度の新聞協会賞を受賞。「病院との信頼関係を築き、医師に小型カメラを装着し重症病棟の緊迫した治療の様子や医師の葛藤を克明に伝えた。特に、ECMO(体外式膜型人工肺)交換や重症患者の映像は多くの視聴者に衝撃を与えた。」として、後世に残る報道であると高く評価された。

(3)2020年度日本民間放送連盟賞最優秀賞受賞について。

  • 日本民間放送連盟賞のテレビ教養番組部門で最優秀賞を受賞。昨年の6月2日に放送した『ザ・ノンフィクション』で、『おじさん、ありがとう~ショウとタクマと熱血和尚~』。
  • 民放連賞の全体のグランプリ作品は11月10日に発表、候補作品としてもノミネートされている。

(4)2020年4月から9月までの半年の放送番組種別の集計結果について。

(5)2020年度上半期の視聴者ご意見、質問について。

  • 今期の視聴者にとって最大の関心事は、新型コロナウイルスの話題。感染者数の推移、PCR検査や医療体制、芸能人のコロナ感染など。5月下旬に『テラスハウス』の出演者が亡くなられたことを受け、多数の批判やSNS等での誹謗中傷についてのご意見が寄せられた。

  • 次回は11月18日水曜日12時の予定。
  • 審議番組は、スポーツニュース番組『S-PARK』。

以上。