番組審議会

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第500回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

2020年 9月9日(水)午後0時15分より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社
大会議室をベースとして、委員長以外の委員、およびフジテレビサイドの一部がテレビ会議形式で出席。

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛(リポート出席)
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、増田宗昭、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、岸本専務、和賀井専務、松村常務、大多常務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、金光取締役・FMH社長、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、矢延制作局長、山口報道局長、大野情報制作局長、加藤コンテンツ事業センター担当局長、齋藤編成部長、森本電波担当部長、齋藤考査・放送倫理部長、西村週刊フジテレビ批評担当、後藤プロデュース、荒井プロデュース、牧野第一制作室長、保原第一制作室部長、渡辺編成担当、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室担当局長兼部長、熊谷番組審議室

4.議題

審議事案:『テラスハウス』検証報告・課題と今後の対応
審議番組:月9ドラマ「SUITS/スーツ2」
2020年8月17日(月)21:00~21:54 放送
*ほかに報告事項として
(1)「10月改編について」
(2)「世論調査における一部データ不正入力について」BPO放送倫理検証委員会審議入り。

まず、フジテレビサイドから、7月31日に公表された『テラスハウス』検証報告の検証点と課題について報告があった。

  • 検証で浮かび上がった課題を基に、今後どう対応していくかなどを報告し、委員の皆さんからもご提言をいただきたい。

委員から事前に、検証報告書の「疑問」「質問」をいただき、担当役員が、回答・説明を行った。

Q.ほかの出演者、番組スタッフの精神的なケアはどうしているのか?聞き取りに応じなかったという出演者の方は精神的に大丈夫か。

  • 制作スタッフが頻繁に連絡を取っている。花さんが亡くなった直後の2週間は、都内のホテルの一室を借りて、出演者が自由に来訪して、スタッフ同席のもと孤独にならず、お互いに話ができる環境を設けた。
  • その後、24時間対応で専門のカウンセラーにつながる電話相談窓口も用意した。必要に応じて、医師と対面での診察も行っている。ヒアリングができなかった出演者からは「自分は大丈夫なので、制作スタッフに会う必要はない」との話があった。
  • 制作スタッフも、出演者と同様に24時間対応の電話相談窓口を利用してもらい、今後はカウンセリングも予定している。出演者・スタッフともに、今後も必要に応じて継続的なケアを行っていく。

Q.検証報告については、まずご遺族にお知らせすべきではなかったのか。

  • ご遺族には、木村花さんの所属事務所、所属プロレス団体とその関係者、代理人弁護士等を通じて面会を申し入れ、我々が知り得ることをお話したいと伝えたが、かなわなかった。
  • その一方で、弊社の番組制作に問題があるとする報道が多数なされており、弊社としても説明責任があると考え、その時点で公表可能と考えられる範囲の内容を公表した。
  • 報告書についてのご遺族のお考えや疑問等については、BPO放送人権委員会への申立てに基づき協議の場が設けられているので、真摯に対応したい。

Q.木村花さんとフジテレビとの契約内容について出演拒否、契約の終了希望による違約金や損害賠償により、降板の自由が過度の制約を受けていないか。

  • 出演契約書には、収録期間中、「途中リタイアしない」ことを出演者に義務付ける規定があるが、これは何の理由もなく急に来なくなることを防止する趣旨のものである。出演契約の各条項への違反について損害賠償規定はあるが、出演の開始と終了の時期については、話し合いにもとづいて決定しており、出演者本人の意思に反して、出演の継続を強要することはない。

今後の対策について、フジテレビサイドから報告があった。

  • 一つ目は、SNSへの対策、出演者のケア等は、一部の番組のみならず、全ての番組について必要と考える。「番組コンプライアンス」対応の窓口となり、制作現場をバックアップする組織を考えていかなければいけない。現場のトラブル、課題を会社として把握、検討し、それらの「予防策」「対応策」を講じていく。
  • 二つ目は、この組織のあり方を検討するためにも、まずは社内の管理部門、制作部門の危機管理担当者を横断的メンバーで集めてプロジェクトを組成し、これら(SNSへの対策、出演者のケア等)の指針をまとめていく予定。
  • 三つめは、これまで個別番組、個別の制作者に委ねていた、SNS等の危機管理について、組織的かつ確実に対応してゆきたいと考える。

局からの報告を受けて、委員から意見、提言が出された。

  • やはり社外の人が入った第三者委員会を設置するべきだったのではないか。世論の共感は得られない。
  • 出演者とスタッフとの間には平等な人間関係を期待しようと思っても無理で、前提から言って事実上指揮従属関係のような上下関係があったと私は見る。そのような観点から見ると、契約関係及び日々の制作段階における指揮従属関係はそのようなものであると認識しながら対応しなければならない。
  • 花さんが早い段階から卒業の意思を伝えて準備をしていたこと、想像以上にコスチュームのことで怒りを抱いていたこと、スタッフの方が花さんの自傷行為後丁寧に対応していたことは今回の検証報告書によってよくわかった。
  • SNS対策や心のケアへの対策については早急に今この段階から進めて頂きたい。ご遺族の方々、傷ついてらっしゃるスタッフの皆さんの回復は非常に難しいと思うが、何とか歩み寄って、どこにもわだかまりが残らないような解決を目指していただきたい。
  • SNSの炎上に対してスルーした方が炎上は早く収まる。それは炎上に対する方策としては正しいが、花さんにとってみれば言われっぱなし、自尊心が傷ついたままという感覚につながり得るので、出演者が誹謗中傷された時にどのように対応するのか、よく検討していただきたい。
  • 番組の設立から関わっているスタッフの一人に話を聞く機会があった。スタッフの誰かが、この事を思い悩むあまり、二次災害の様なことが起こっては絶対にならない。死の検証はもちろん大事だが、同時に番組スタッフへのケアを充分にとって再発防止につなげて頂きたい。
  • リアリティショーに限らず、放送をきっかけにして生まれたSNS上の誹謗中傷をどう処理解決するのか、SNSの危機管理チームを設置されるという事だが、具体的にどういう方法で除去、あるいは鎮静化させていくのか。
  • 油を注ぐ様になってはいけないが、事実とは異なる情報が拡散されている場合は、それを否定、あるいは事実とは異なる事をしっかり説明する為の「告知放送」の様なものがあっても良い。
  • こうしたリアリティショーのフォーマットが、SNSの時代には合わないのではないかと私は思うので、リアリティショーからは撤退するという事をフジテレビとして出来れば打ち出して頂きたいとい思う。
  • 確かに第三者委員会を作った方が、お手盛り感がなく社会的な信頼感は高いだろう。ただ本件が出演者とテレビ局という関係があり、すべての真相を明らかにさせて出演者やその関係者のプライバシーを著しく損なわせるという結果になることは局としては避けなければならない。
  • 若い人たちが毎日毎日自分の食べたおかずや、昨日こんなことがありました、と自分を暴露して、それを見知らぬ人達から「いいね」とか「おかしい」とか、SNSの世界の中で生きている訳で、この若い人たちの文化をどうやったらテレビ局が受け入れ放送出来るのか、そう容易く「やめちまえ」というのは少し乱暴で、もうちょっと考えてみる必要がある。その前提はリスクの問題で、この人たちはテレビに出たらどんなリスクを負うのかを十分わかっていない、その人たちが被る被害を最小限にしなければならない責任がある。

委員の意見を受けて、フジテレビサイドから以下の発言があった。

  • 当初、死という重い現実を目の前にして、出演者、制作スタッフ、大変憔悴仕切っていた。ヒアリングを始めたが、センシティブ情報、プライバシー情報が非常に沢山あり、どこまで公表できるのかと、非常に大きな壁があると感じたことは事実だ。
  • 第三者委員会を開いて、外の方が次から次へと質問を重ねていく、それも長期間に渡るかもしれない、本当に二次災害と言うか、精神的な傷を負った出演者、スタッフが長期のヒアリングに耐えられるのかと思ったことも事実だ。
  • 具体的なプラン、これをまさに今考えているところ。花さんの死をきっかけに国の方でも色々な動きが出てきているし、我々としてもプロバイダーと一緒に防止策が出来るのではないか、事前の水際対策もどこまで出来るのかについて具体的に検討している。
  • 企業防衛という観点だけで言えば、第三者委員会に委ねた方が良かったかもしれない。しかし、出演者の許諾が取れない中で、検証には必要な材料である出演者とスタッフとのSNSなどのやりとりなど個人情報を我々の判断だけで外に出しても良いかということも考えた。第三者委員会にお願いをすればその辺の部分は我々の手を離れることになる。当時大いに迷ったが、結果としてこのような判断をした。
  • バラエティ番組もワイドショーも、場合によってはドキュメンタリーも人のプライバシーに踏み込んでいく、テレビ番組のある種のジャンルというのはそういう性質を有している。単純にリアリティショーを止めればこの問題が全て解決するわけではない。人のプライバシーに踏み込んでいくものに関しては、共通のルールを作るのが非常に難しいが、プロデューサーの意識を高めていくことしかないと考えている。今日のご意見を現場にも伝えていきたい。

さらに委員から以下の意見が出された。

  • 第三者委員会というのは事の真相を全て明らかにするところ。人を丸裸にして侮辱的なことも全部曝け出すというわけではないが、第三者委員会からの視点で見て公平であれば、出演者やあるいは出演者の関係者にとって不名誉な事実が出てくる。だからそれを気にして第三者委員会に二の足を踏んだんだろうということはわからなくもない。ただ第三者委員会の方が遥かに世間の信頼は高い、そういう意味では中々難しい問題だ。

次に、本日の審議番組『SUITS/スーツ2』について。(8月17日放送第6話を審議番組とし、参考として1話、2話のダイジェスト版もご参考のためにご覧頂いた。

各委員からは、審議番組に関して以下のような意見が出された。

  • パラリーガルと弁護士の協力関係など実に面白い人間関係だが、弁護士の法律的な紛争を巡る闘いはもっと泥臭くもっと死に物狂いだ。その死に物狂い的な葛藤がドラマに反映されていない。
  • 主たる事件のストーリーもかなり複雑で説明を要するレベルなのに、そこに小説の著作権問題や上杉の妻の死などファーム内の内輪もめなどが次々と挿入されるため、頭の中がひどく忙しい。多くの視聴者を振り落としてしまいそうだ。
  • 一昔前の女性のステレオタイプな描き方。本当に出来る女性はあんな風にツンケンしていないし、腕組みしながら人と話さない。
  • ドラマがやろうとしていた恋愛関係やライバル関係という人間関係の上に、法廷や示談交渉の面白い専門的な要素をコンテンツとして乗せていこうという部分が薄くなっている。
  • 様々な役を置き、群像劇の作り方で話がクロスして展開していくというのは本当にアメリカのドラマの王道だが、それを日本に持ち込んだ時に、相当シナリオが作り込まれて面白い、会話もそれぞれメモラブルな会話になっていないと難しいので、ある種非常にハードルの高いことに挑戦されているのでは。
  • 『SUITS』はオリジナル版も好きでかなり見ている。その上で2年前に放送されたシーズン1に対する感想は、難しい案件でもストーリーを一生懸命練っていて、弁護士ドラマとしては新味もある。
  • ただ元のアメリカのドラマを踏襲しようとしたせいか、登場人物のスタイリッシュな芝居と1話に詰め込むプロットの多さが日本のドラマとしては馴染みにくい。
  • 特にこの5年ぐらいは、1話完結スタイルで複数の脚本家、多数の演出家の体制のドラマが多くなった。脚本の打ち合わせに3人、4人のプロデューサーが普通。物語の縦軸はどうしても誰にでも共有できるわかりやすい定番のものになりがちだが、フィクションにおいては番組の個性を出すためには、1人の思い込みも必要だ。平均点ではなくプロデューサーなり演出家なり脚本家なりが思い込みを発揮できる場を作って、バラエティ豊かなフジテレビドラマを作っていただきたい。
  • 1人ぐらい旧来型の弁護士がいて、そういう人を活躍させる場を作りながら、今のスタイルもあるという人物、ストーリーだったら面白いと思った。
  • 日本版への感情移入のきっかけとしてアメリカ版と日本版の違いを解説しながら、別番組でやるとか、そういう工夫があるコンテンツがあると、ファンをより拡大出来る気がした。
  • オリジナルに忠実に丁寧に作られているという印象。オリジナル版のスピード感、リズム等が引き継がれていて丁寧な仕事をしているが、やはり日本版にはリアリティーがない。
  • 第1シーズンはもっと面白く拝見した。天才的な頭脳を持っているが実はニセ弁護士で、いつばれるかハラハラしながら見るという面白さがあった。格差社会で非正規雇用者にとって社会の中で自己実現するとか活躍するという門が今とても狭い。それを嘘の力ですり抜けて軽やかに活躍する姿に、ハラハラ感だけじゃなくて爽快感があった。ところが第2シーズンになって、鈴木大輔の存在感が薄くなった分、日本の今を生きる自分たちとの接点が見えなくなっている気がする。
  • 豪華なキャスティングで退屈しなかった。番組を見て退屈はしなかったものの、複雑で何かストーリーがわからなかったという印象だった。
  • データを申し上げると、関東全体で約6万人の母集団がある。この6万人ぐらいのモニターの中でこの番組を見られた方は、おおよそ7千人。関東だけで7千人の方がご覧になっていた。同時間帯番組では1位で。12.1%。40~60代で、見られた方の62%を占めた。25歳~34歳のいわゆる働いている若手の方が一番少なかった。これは意外だった。
  • 少し残念だったのは、メインのジュエリー会社社長の話はわかるものの、それと複層して進行する織田が過去に関わって問題になった案件等について、理解できないままに番組が進行してしまった感があった。
  • 途中から見始める人にとっては番組冒頭の前回放送の抜粋紹介だけで登場人物の相互の関係を理解するのは難しい。
  • リアリティーは無いと思う。それを割り切って西部劇を見ているというつもりで見ている。西部劇として見るとテンポはいいし、洒落ている。

委員の意見を受けて、フジテレビサイドから以下の発言があった。

  • 今から2年半くらい前、アメリカのプロデューサーと話し合いを重ね、最終的に念を押されたのが「“クール”な作品にしてほしい」ということだった。クールは捉え方が人それぞれで、キャストも含めて何がクールだろうと議論し、アメリカ版のいいと思えるところはなるべく残した上での絶妙なローカライズ、そこを強く意識してやってきた。
  • この企画を一言で言うと、「富裕層たちの口喧嘩」。景気の良い時代には楽しめる可能性もあるが、コロナ禍という状況においてはマイナスに作用する側面もあったかもしれない。
  • 本日頂いた皆様のご意見を、撮影の途中でもセリフを変えるなどして、より『SUITS』を視聴者に楽しんでいただける方向にアジャストしていきたい。

5.その他

  • 10月改編について。
  • 「世論調査のデータ架空入力問題」について、BPO放送倫理検証委員会で審議入り。

その他の放送、番組への意見

  • 今の政局は憲法が問題になっていることを、報道あるいは制作の方、意識しながら取材と報道をしていただきたい。
報告事項
  • 次回は10月14日水曜日12時の予定。
  • 審議番組は、レギュラー編成初回の10月8日放送の『千鳥のクセがスゴいネタGP』。

以上。