番組審議会

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第499回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

2020年 7月8日(水)午後0時15分より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社
大会議室をベースとして、委員長以外の委員、およびフジテレビサイドの一部がテレビ会議形式で出席。

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、増田宗昭、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、岸本専務、和賀井専務、松村常務、大多常務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、金光取締役・FMH社長、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、矢延制作局長、山口報道局長、大野情報制作局長、加藤コンテンツ事業センター担当局長、齋藤編成部長、森本電波担当部長、齋藤考査・放送倫理部長、西村週刊フジテレビ批評担当、中江プロデュース・演出、宋プロデュース、牧野第一制作室長、保原第一制作室部長、渡辺編成担当、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室担当局長兼部長、熊谷番組審議室

4.議題

審議番組 ソーシャルディスタンスドラマ「世界は3で出来ている」
6月11日(木)23時~23時40分放送
*ほかに報告事項として
(1)「テラスハウス」検証結果。
(2)「世論調査の一部データ不正入力について」

冒頭、但木委員長から連日の災害報道について、コメントがあった。

  • 連日のように災害報道が続いている。メディアが直接人命を助けられる非常に大きな任務を負っているものと考えている。携わっている多くの報道の皆さん、本当にご苦労様。これからも災害報道について十分な力を注いでいただきたい。

各委員からは、審議番組に関して以下のような意見が出された。

  • 脚本、演出、編集、演技全てにおいて素晴らしかった。合成と編集の技術が見事で、本当に違和感なく三つ子が同じ部屋にいると感じた。
  • ゲリラ的に面白いものを作るというのは、かつてのフジテレビが最も得意としていたところだ。そういう精神がまた見えたということが嬉しかった。こういうドラマが出来たことを忘れないでいただきたい。
  • 最初見た時に3人が同じ人だと全然気がつかなかったが、結果として思ったことは、凄く意欲的な取り組みだったことだ。ソーシャルディスタンスドラマという取り組みもそう、テーマもアフターコロナについてかなりわかりやすい形でシナリオが作られており、見ている人も感情移入できるようなテーマだった。
  • ドラマがこれから始まるということがわからずに、最後にタイトルと出演者のスーパー。最初の入りがわかりにくく、非常に違和感があった。
  • コロナとそれに十分にはまだ立ち向かえていない社会がもたらしている現実に迫ろうとしたという意欲は非常に興味深い。社会性がなくて働きにくかった、生きにくかった次男が、かえってZoomやTeamsでテレワークをしているがゆえに生きていけるという興味深い反面の現実が出ているのが面白かった。
  • ショートショートで知られる作家の星新一は、作品を書くに当たって自らに幾つかの制約を課していた。制約がある方が創造力が発揮される。コロナ禍によって役者もスタッフも集まれない、距離を置かなければならないといった制約は、エンターテインメントの人々にとって大きな影響を与えたが、一方で創造力を自在に発揮する格好のチャンスでもあった。
  • 特に「人っていいよな、忘れるから。もう渋谷に人いるもんな、忘れていくんだろうな。」という台詞が印象に残った。それは逆に言えば本当は忘れてはいけないし、この経験があるからこそ今があると言えるような未来を自分たちは作っていかなくてはいけないのだという制作者のメッセージにも聞こえた。
  • ドラマは、長さがちょうど良かったのと、短い中にいろいろなものがしっかり入っていて魅力的だった。
  • 共通要素は、コロナ感染に対する恐れとか、変わってしまった日常。人々と触れ合う機会の減少とか、3兄弟がともに大事にしていたラーメン屋さんの倒産が同じように悲劇として受け止められるとか、共通の要素をしっかり打ち出すことによって、彼らの境遇の違いに対して視聴者が反発をせずに共感できた。それぞれに受け止め方というのは違うのだと受け入れられる作りになっていた。
  • この数カ月、NHKを初めとしてコロナ禍をテーマに何本ものドラマが制作されてきた。その中でこのドラマは、ドラマ制作者の1人としても挑戦的でクオリティーが高い作品と感じた。技術的な手法や企画の珍しさを見せつけるためのものではなく、ドラマの本質的な面白さを模索する作品に仕上がっていた。
  • 敢えて外見や芝居にインパクトのある違いは作らず、3人ともどこにでもいる青年に設定した。表面的な企画の特殊性に引きずられず林遣都君の演技力を楽しむことができた。
  • こういう異常な時期に企画されるドラマは挑戦のための挑戦になりがちだが、コロナという急場を売りにせず、普通のドラマとしていかに面白く、かつ深いドラマを作るかに力を注いでいた点で、他より一歩抜きん出ていた。
  • 惜しい点を言うなら、せっかく家族の話なので、3人の母親の人物像がもう少し見えるとありがたい。
  • オンラインビデオツールを駆使した手法を全く使うことなく、1人3役という発想を実現した演技力と演出力、技術力は本当に素晴らしい。コロナ禍で人々が経験したこと、感じたことをいろんな人の立場からの思いを台詞に変換できていて、きっとこのドラマを10年後に見たらまた、時代の記憶のような面白さがあって、人々に受け入れられるのかなという気もした。
  • たとえば制作の裏側をドキュメンタリーで見て、それから本編を見たらもっと面白く見られたのでは。
  • さらに思ったのは、この週の例えば11時の枠を帯で、フジテレビ全体としての挑戦として、例えば、バラエティや報道ではこれを作りますとか、毎日部署ごとに挑戦をした番組をやって、敢えてCMも今までとは違うものを入れてみるとか。そうするとフジテレビの気概がもっと社会に発信できたのではないか。
  • 社会が危機な時には何か新しいものを生み出せるんだとも、感じた。テレビドラマっていいなという印象だ。
  • 委員の皆さんが、監督、脚本、いろんなスタッフの方、それから俳優の林さんを褒めていたが、技術のスタッフの方々もぜひ褒めてあげたい
  • 3人が出てきて初めて、これは3人全部同じ人だということがわかった。お互いの言葉だけで心理劇をやっていく新劇のスタイルを思って見ていたのだが、3人になった途端に全然違う、これはチャレンジなんだなと。まさにコロナ時代の新しい試みなんだとわかって、面白くその実験をずっと見続けた。

これら委員の意見を受けて、フジテレビ側から以下の発言があった。

  • 『カメラを止めるな!』とかNHKとかが始まった時に、昔のフジテレビはこれを一番にやっていたな、文句を言われようが批判を受けようが一番に手を挙げて面白がってやったんじゃないか。脚本の水橋とも話して、こういうのを今こそやらなきゃいけないんじゃないかと。
  • ゴールデンウィークぐらいに企画し、明けに編成に言って、2日後にOKが出た。各局各媒体、舞台の方でもリモートでいろんなことをやっている中、何かをしなければというので作り出したのが最初の意図だ。
  • 最初にどこまで説明するというのはどうしても癖があって、説明をしないというのを敢えてやったし、敢えてラストにタイトルを入れた。私の演出なので、これがもしわかりにくい要因だとすると、私の責任かと思う。
  • パソコンとかリモートの画だけではない実際のドラマをいかに違うやり方をするかを挑戦したのはかなりある。この時代にこの時期に何か一つ残したいという、ある意味制作者の意地として作ったのは確かだ。
  • 確かにラーメン屋の店主の人物とかが詳しい割に、母親の人物が薄かった。もうちょっと、映っていなくても見える人物を出すのが後ろへ引っ張るための構成だったのかもと思う。
  • メイキングはいろんな人に見たいと言われたが、なるべく(制作の)人数を少なくしたのでメイキングを撮っている人も当然なく、記録も残っていない。
  • 合成をやった編集の仕上げのスタッフが凄く上手くやってくれた、かなりレベルの高いカットもあって。凄く良くできて、技術の方に目を向けていただいたのは大変嬉しい。
  • 私もいろいろ(役を)作ろうと思ったが、髪型とかメガネとか小道具に頼らず中身で3人作りたいという彼の意思からこうなったので、本当に林遣都君がとにかく素晴らしかった。

深夜で放送していたリアリティショー『テラスハウス』に関して、制作体制等の検証結果について、事前に報告書の概要を委員に読んでもらった上で、総合事業局担当役員より報告。

  • 検証について2つのポイントを説明する。
  • 1つ目は制作の実態について。シチュエーションそのものを、いわゆるゼロから1を捏造するという事があったのかという事に関しては、(ヒアリング等の検証からは)出てきていない。出演者の意に反した行動や言動、強要、指示について、スタッフがそうした発言をした事実は無かった。
  • 2つ目として心のケアの問題。コスチューム事件で炎上した後、心の専門家などの紹介も考えていたが、コロナの状況下でかなわなかった。この辺りは今後の大きな課題と捉える。
  • こうしたリアリティショーの心のケアは非常に難しいが、個人で誹謗中傷を受けやすく、積極的なケアをしていかなければいけない。フジテレビ、制作会社、所属事務所全てで連携して、心理カウンセラーなどの専門家の協力を得ながら、出演者に対する手厚いケアを提供できるような体制づくりをしたい。

報告を受けて委員からは以下の意見が出された。

  • 検証方法について。制作会社や所属事務所、出演者等、フジテレビと契約関係にある関係者がフジテレビによる調査に洗いざらい話すということは難しい。早急に利害関係のないメンバーで構成された第三者委員会を設置して客観的視点から再調査を行うべきではないか。
  • リアリティドラマの表現について。コスチュームを洗濯された花さんの怒りは真っ当なものであったとしても、帽子を叩く場面まで放送する必要はあったのか。地上波においてリアルな喧嘩をどこまでみせるのか。
  • 木村花さんの死をどうすれば防げたのかという点について。人が自死する理由は1つではない。SNS(の誹謗中傷)は確かに酷かったかもしれないがそれだけが原因なのか。
  • 今回制作側が「ビンタしちゃえ」、と彼女が煽ったことは検証報告では否定されているが、花さんが「これで縮んだら張り手をする」とスタッフにLINEしていたというのは今回明らかになった重要な新事実だ。だからといって花さんがお母様に言ったという、「ビンタしちゃえばと制作者が言った」という発言を否定するものではない。
  • ではフジテレビはどうするべきだったか。大事な分岐点があった。報道によると、ネットフリックスで「コスチューム事件」が放送された3月31日に、彼女はリストカットをしてそれをSNSに一時アップした。リストカットというのは全身で発するSOS。周囲はどこまで深刻な事態と考えていたのか。地上波放送までの一ヶ月半、何が話し合われたのか。
  • 誓約書について。制作側と出演者との間に誓約書があり、違反して制作に影響がでた場合は、一話分の制作費を最低として賠償するとのこと。これは、労働契約の不履行について、賠償予定の禁止を定めた労働基準法16条違反ではないか。

委員の意見を受けて、フジテレビサイドからは以下の発言があった。

  • 第三者委員会の設置に関して。出演者が亡くなったことに関して非常に重大なことと捉えているが、フジテレビに法令違反の疑いがあるとか、また現在、公的機関から捜査や調査が入っている状況で無いので、あくまでも社内調査で問題点がなかったか検証する形で今回検証を進めている。
  • リストカット云々など、いろんな情報は把握しており、スタッフから色々な証言も聞いている。では、そういうことが起きた時に、スタッフがどうしたらいいか、有効な情報を持っていない中での対応になっていたのではないかということに関しては、これからの検証の中で、非常に重要な問題だと認識している。

誓約書について、法律を専門とする委員から以下の発言があった。

  • 書面を見ながら精査しないとわからないが、形式的に労働契約になっているとは見えない。しかし実質的に木村花さんが契約の相手方に対して指揮従属関係の元に置かれているとなると、労働契約ではないにせよ実質的には労働契約と見なされる、のではないか。

誓約書の想定について、担当部局から以下の発言があった。

  • 損害賠償額に関する部分は「この番組の放送および配信が中止となった場合にはそのような賠償を予定する」という内容。制作側としては、「番組が中止になる」というのは、「出演者が犯罪を起こしたなどの、重大なケース」を想定しており、ある種の抑止力になることを意図していたと聞いている。

さらに委員から、以下の発言があった。

  • ダイレクトメッセージ(DM)というのは、普通公人は自分がフォローしている人からしか受け取れないように設定しているはず、なぜそういった指導をしなかったのか。
  • SNSとあるが、インスタとかその他について、攻撃されたツイートないし投稿の数なども含めて当時の状況を伺いたい。こう言った問題を阻止するために、どこで介入しないといけないのかという基準を今後社内で作っていく必要がある。
  • 花さんがした行動を私はおかしいものだとは思っていない。もちろん、(帽子を)叩かない方が良いが、そのぐらいの抗議を示すのは現代女性として当然のことだ。若い子で社会経験もなくて、人々に注目された経験も、野次られた経験もないのに、欧米型の自己主張をした時にいかに視聴者から過度なバッシングが降りかかってくるかということは、制作側として今後よく考える必要がある。

フジテレビサイドからは以下の発言があった。

  • 木村花さんのお母さんが週刊文春誌上でも言っていたが、(制作側に)優越的地位があるんではないだろうかという事。番組制作はコミュニケーションの中でしか成り立たない。どういう言い方で、どういうシチュエーションでものを伝えるかは、特にこのようなリアリティショーという種類の番組で、素人の方で、若い方が出演者としている中で、どう考えるかというのは今回の検証でも大きなテーマだったと考えている。

「FNN・産経新聞合同世論調査における一部データの不正入力について」、報道局より報告。

  • FNNと産経新聞社による合同世論調査において、業務の再委託先の社員による一部データの架空入力が発覚し、問題が見つかった世論調査の結果と放送を全て取り消し、6月19日金曜日の昼と夕方のニュースで報じた。FNNと産経新聞社の合同世論調査は、およそ1カ月に1回の頻度で、電話によるQ&A方式で行うもので、架空データ入力があった調査は、去年5月から今年5月までに実施した合計14回。1回当たり全国1000サンプルで実施されるはずだった。
  • フジテレビと産経新聞社の担当者は、再委託に当たって、契約で義務づけられている書面による通知を受けておらず、日本テレネット社への再委託の事実を知らなかった。また、現場での立会いチェックなどは実施していなかった。
  • 世論調査は、政治や社会問題についての国民の意識や動向を知り、あらゆる報道の基礎とするための重要な調査である。その世論調査において、あってはならない事態を招き、弊社、FNN各社、そして産経新聞社の報道機関としての信頼を損なうにとどまらず、各メディアが実施している世論調査全般に対する疑念を生じさせてしまった。メディア全体の信頼を揺るがしかねない事態で、極めて重く受け止めている。
  • 厳密な再発防止策を策定し、確実な調査結果を再び安定的にお届けすることによって信頼を回復できるよう、全力を傾ける所存だ。

委員から以下のような意見が出された。

  • 架空の回答入力について、一体どういう不正サンプルなのか。あるいは結果として使用したサンプルの偏りについても、伺いたい。
  • 今後、本来は世論調査で把握できる人の限界というものがある中で、もう少し多様化した調査のやり方というのを電話とインターネット併せて行っていった方がいいのではないか。

フジテレビサイドから、以下の発言があった。

  • 今後の基準、今後の再発防止策を策定した上での次の世論調査のやり方については、検討中だ。世論調査についてもトレンドが変わってきており、固定電話から携帯電話、それからインターネットを組み合わせたみたいなものがトレンドになっているが、これが国民のサンプルとして代表すべき性質のものなのか確認できるかどうかなど、非常に難しい問題が多重的にある。専門家の意見をしっかりと聞いてその辺を考えようと思っている。
  • 我々としては今回の問題を重く受け止め、我々自身が、世論調査の専門家、いわゆる計量政治学の先生方も交えて、制度設計から始めていく、それに不正防止策も加えていくという形になると思う。

これについて但木委員長から以下の発言があった。

  • メディアにとって世論調査は極めて重要な役割の一つであり、その数字が嘘だったということになると大問題で、報道に対する信頼の基本を揺るがす重大事だ。そういう意味で、フジテレビ側でもこの問題についてさらに検討し、対策も含めてもう一度番審でご報告をいただければ。
報告事項
  • BPO放送人権委員会の「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」に関する委員会決定について、報告。
  • 8月は休会。次回の第500回番組審議会は9月9日(水)12時予定。

以上。