番組審議会

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第498回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

令和2年 6月10日(水)午後0時15分より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社
大会議室をベースとして、委員長以外の委員、およびフジテレビサイドの一部がテレビ会議形式で出席。

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、増田宗昭、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、岸本専務、和賀井専務、松村常務、大多常務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、金光取締役・FMH社長、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、矢延制作局長、山口報道局長、大野情報制作局長、齋藤編成部長、森本電波担当部長、齋藤考査・放送倫理部長、西村週刊フジテレビ批評担当、山崎報道センター編集長、上田平CP、木村演出チーフ、川野編成デスク担当部長、速水編成担当、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室担当局長兼部長、熊谷番組審議室

4.議題

「審議番組「Live news it!」6月4日(木)15時50分~19時放送」

各委員からは、審議番組に関して以下のような意見が出された。

  • 最初に不思議に感じたのは、MCが天気予報に出てきて、その後のトップニュースを別のアナウンサーが読むことだ。なぜ4時50分まで登場しないのか。そのことが番組の色を薄めてしまっている気もする。
  • 『Live news it!』というタイトルだから、IT技術をどこよりも駆使したニュース番組にしてみるのはどうか。
  • 現時点でFacebookのフォロワーを見たら871人、Twitterが3267人、Instagramが約1.1万人。マスメディアのSNSとしてはちょっと寂しい。番組側としてもっとITの努力をした方が良いのではないか。
  • 「コロナで派遣切りシングルマザー暮らし暗転」というコーナーは凄く良かった。シングルマザー問題は今回のコロナ禍においても非常に深刻なのでこういう実情を伝えていただきたい。
  • ボーガンのニュースで被害者搬送の視聴者映像を使っていたが、怪我した方が搬送されているところを、素人が携帯で撮影するのは余りいいことではない。そういう視聴者の撮影映像を番組で使うと、助長する恐れがある。番組の品位を保つために、そういった視聴者映像の使用は検討してほしい。
  • 新型コロナ後遺症の話も伝えていただいて良かった。記憶障害、PTSD、鬱病の話などをきちんと伝えていただくと感染拡大防止にもつながると思う。もっと聞きたいと思ったところで病院経営の話にスライドしてしまったのが残念。
  • 例えばボーガンは法律的な規制がどうなっていて、どうやって売られているのかという率直に起こる疑問など、事件が起こった時にジャーナリストとしての「疑問」、「閃き」に突っ込んで報道化、記事化していく姿勢が必要だ。
  • 今まで国と専門家会議の戦略は、クラスター対策が中心だった。それよりも検査を質的、量的に徹底的に広げて、無自覚症状、軽症者がいる場所、所在を突き止め、隔離する、そういう戦略をとるべきだと述べている専門家が、非主流ではあるがいる。クラスター対策対PCR検査の徹底的拡充という論点について、テレビジャーナリストとして報道部の方に関心を持っていただきたい。
  • シングルマザーが困っている。既に1万人以上の人が東京都の自治体に対して生活保護申請をしている。生活保護は憲法25条に基づく憲法上の権利だ。キーワードとして「コロナ貧困者」「生活保護」をぜひテレビで立てていただきたい。
  • テレビも再放送が増えて、どのチャンネルをつけてもリモート出演でと似た感じになる中で視聴者と同じ時間を共有するニュースという生放送の意義を改めて確認できた。
  • 当時「『Live News it!』は買いだめを煽りません」と言っていたが、どこへ行ってもマスクやトイレットペーパーが無い等、不安を煽っているのではないかと言われていた頃だったので、非常に好ましい印象として記憶に残っている。
  • コロナについては、最近の放送では無症状感染者とか回復者の方の後遺症のことが伝えられていて、ああ、ようやくそのフェーズに入ってきたかと思った。誰しもが、自分が誰かに移してしまうのではと不安に思いながらマスクをして公共機関に乗るわけだが、実際に感染して回復した方の不安というのは、感染しその比では無いだろう。この問題はもっと深めていく必要があるテーマだ。
  • ホストの方も、多少体調が悪くても黙って出勤してしまう、また店を掛け持ちするとか、食べるために働かざるを得ない人たちが大勢いて、そういう人たちが寮やアパートで共同生活をしていることもクラスターになる大きな原因と報じられていた。もう一つここにも貧困問題が横たわっている。
  • 例えば、今回、シングルマザーのVTRが終わった後にスタジオの受けがなかった。これは日頃から気になっていることで、もったいないと感じるし、アナウンサーも自分が取材した問題ではないから前に乗り出して聞くような感じにはならない。しっかりした取材がキャスター主導であるかないかは印象としては大きな違いを生む。
  • ミクロの事例を取り上げる上で併せてマクロの指標を持ってくるべきだ。例えば派遣切りを報じるなら、4月は先月に比べて6万人しか失業者は増えていないと報じられているが、実は100万人を超える就業者が減っている、この100万人はどこに行ってしまったのか?カウントされていないという話をする。このように具体事例と比較したりしながら展開すると、視聴者が共感を持ちやすい。
  • フジテレビは、キャスターとして育てるという決心を1年前にされたが、自分の視点で社会にどういうメッセージを発することができるかとか、批判する目、そういう訓練が大事だ。
  • 連日、放送を続けてくれた『Live News it!』のスタッフの皆さんにお疲れ様を申し上げたい。
  • 全体を拝見して、多彩な話題をわかりやすく伝えているが、この番組が何を流すのかが伝わりにくいという印象。もう一歩踏み込んでほしい、全体の感想としてはそれに尽きる。
  • 冒頭にお天気を伝えるMCと1時間後にメインキャスターとして座り、政治経済、社会問題を伝えるギャップは面白いのかもしれないが、逆に言えばこの番組で何を見ればいいのか視聴者は混乱する。
  • 野球選手の微陽性のニュースから数分間、有名人のブログ、SNS、YouTubeなど、ネット情報を拾って編集したものが続く。テレビ局がそれを編集することに意味があるのか?ネットのまとめ記事のようで、「取材」を重視している姿勢が感じられなかった。
  • キャスター、及びコメンテーターのコメントは良くも悪くも無難で、よく言えば、「報道番組らしい中立性」を感じる。
  • 今、コロナの時期に、視聴者から見ると報道番組は凄く貴重な生きている番組。フジテレビを見る目も報道番組中心に視聴者は評価するだろう、『it!』が毎日取材を続けていることについては、本当に大したものだ。
  • 例えば世界中にコロナがある時にアメリカと中国は、お互いに罵り合って、軍隊を出すか出さないかとかいって、そういう時代なんだということと、日本では今まで見たことがないような格差が生じているという現状をどう報道していくか。我々にとってどういう意味を持つのか、社会が変質してしまうんじゃないかという、そういう骨のある大きな問題を(コメンテーターの2人に)深く言ってもらいたい。一言二言で終わってしまうのではなくて、むしろ大きな問題を背景に抱えているようなことについて深い解説をしていただければいい。

これら委員の意見を受けて、フジテレビ側から以下の発言があった。

  • 番組制作の基軸となる考え方がある。そこには従来型ではない新しいキャスター像を構築したいということ。そこに含まれるのは、従来型のキャスターに視聴者が抱いているエスタブリッシュメントの価値観に対するアンチテーゼ。そこを切り開いて新しいキャスターとは何なのか。私自身も制作者としてずっと悩み続けた課題だ。
  • 5時台でこの対象日の時には、夜の街を扱ったトークコーナーがある、MC、コメンテーターの掛け合いの妙を生かそうと思って始めた舞台装置だ。
  • 「コロナ貧困者」というキーワードもいただいた。夜の街についても、食べていけない切実な事情、そちらを深めていくべき。クラスター対策、PCR検査など、どうすればいいか。特に今の事象をどう捉えるかという意味では、先を見てどう報道していくのかは非常に重要なテーマだ。
  • コロナ危機における我々の報道姿勢について。専門家会議で示されたデータ、分析が実際のところどうだったのかというのは、記者、デスク陣とも日々議論している。政府の感染対策の不備という視点は常に考えなければならない。これまでは、日々の感染実態の把握、政府の方針を伝えることが実態としては多くなっているが、今後は、PCR検査のあり方などについても検証、報道していきたい。

深夜に放送のリアリティーショー番組「テラスハウス」について、報告があった。

  • 5月23日に、リアリティーショーである『テラスハウス』の出演者の女性が亡くなった。その日にまず、地上波における次の放送(25日月曜日の深夜)の放送休止を決定。翌週の5月27日に、今放送しているシリーズ『テラスハウス TOKYO 2019-2020』の今後の制作、地上波での放送、FODにおける配信、これらを中止することを決定し、その旨をフジテレビとこの番組の制作会社の株式会社イースト・エンタテイメントのホームページで公表した。
  • 『テラスハウス』は、2012年から2014年までテレビ放送されたテレビ番組だ。その後、2014年で番組は一旦終了、2015年からNetflixでのインターネット配信が始まった。これに伴い、Netflixでの配信、FODによるちょっと遅れての配信、さらに遅れて地上波での番組の放送という、ネット配信と地上波を組み合わせたスキームで配信、放送が行われていた。
  • 現在、番組のスタッフ、関係者などからヒアリングを通し検証作業中だ。
  • ポイントとしては大きく二つあると考える。一つは、番組の制作体制、演出等の実態がどうだったのか。二つ目は、亡くなった出演者の方へのフォローなどについて。
  • 一つ目のポイントだが、やらせ的な演出、出演者への行動を強要するようなことに関して。例えば今回、こういうコスチューム事件をゼロからシチュエーション自体を作り上げるとか、無理やり女性を怒らせるように指導したとか、個人の感情、行動、行為を制作側が強要したという事実があったかどうか。
  • 二つ目のポイントについて。制作されたものがネットで炎上した際にどれだけ出演者の心の負担になるのかについての認識について。メンタルのフォロー、例えばプロのセラピストやカウンセラーという方々に常に相談できる体制をとる必要性を強く感じている。
  • 『テラスハウス』はSNSとの親和性も高く、出演者も自らのSNSで頻繁に発信をする。それが見る側と一体となって盛り上がりやすい番組であり、リアリティーショーの良さでもあり怖さでもある。全ての誹謗中傷を個人で受けてしまうというリスクがある。それだけに制作側のケア体制が必要だ。今回の検証では、まさにソーシャル時代のリアリティーショーのあり方、進め方などをしっかりと見詰め直す検証にしたい。

局サイドの報告に関して、委員からは以下の意見があった。

  • SNSはどれほどの批判を受けて追い込まれるかは本当に千差万別。仮に編集をさらに抑制的にしていたとしても、リアリティーショーである以上は必ず批判や罵倒が飛んでくるという観点からすると、今後、SNSの管理そのものを考え直すなどが、再発防止の観点から一番重要ではないか。
  • 私は、リアリティーショーというジャンル、存在そのものに大きな疑問を抱いた。視聴者は何が面白くて見ているか。人のプライバシーの一番根底の根底が暴露されている、人の非常に深刻な精神的な葛藤を見ている。そういう作り物だ。
  • エンターテインメントのあり方、その限界、メディアが向かう方向性という意味での倫理観、ethicsというものを根本的に議論をしていただいた方がいい。
  • 問題の回は明らかに2人の間に起こるドラマを軸として見せる作り方だった。演出あるなしにかかわらず明らかにそういう編集の意図はあった。ただ、それを責めることもできなくて、毎回何を見せるかという編集があるのは致し方ない。
  • けれども、多くの視聴者はそれを現実だと思って見てしまう。かつてのリアリティーショーは、それでも安全なところから一方的に見るだけだったが、SNSの普及によって、安全なところから匿名で誰でも一方的に誹謗中傷できるようになってしまった。そういう視聴者の格好のターゲットになってしまうわけだ。
  • 恐らく90年代の末ぐらいにリアリティーショーのフォーマットができたと思うが、SNSで誰でも匿名で出演者を誹謗中傷できる現在の世の中に合わせてそのフォーマットが更新されていないというところが根本的な問題ではないか。
  • これはどうしても言っておきたいのだが、亡くなった方だけではなくて同じ『テラスハウス』の出演者、共演者の方々、スタジオのコメンテーター、制作に関わった方々、関わった人たち全てのメンタルケアをきちんとやっていただきたい。長期的なケアを局としても責任を持ってやっていただきたい。
  • この問題は、今回で議論を打ち切ろうという気はない。いろいろな角度から、難しい問題が含まれていると思うので、この問題については次回以降、もう少し論議をしたい。
報告事項
  • 先月の審議いただいた『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』について、5月15日のBPO放送倫理検証委員会で審議入りをした。放送倫理検証委員会としての意見が公表されたら、報告する。
  • 次回の第499回番組審議会は7月8日(水)12時予定。
  • 審議番組は、ソーシャルディスタンスドラマ『世界は3で出来ている』6月11日23時放送。

以上。