番組審議会

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第497回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

令和2年 5月13日(水)午後2時より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社
大会議室をベースとして、委員他がテレビ会議形式で出席。

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、増田宗昭、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、岸本専務、和賀井専務、松村常務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、金光取締役・FMH社長、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、矢延制作局長、山口報道局長、大野情報制作局長、齋藤編成部長、齋藤考査・放送倫理部長、森本電波担当部長、西村週刊フジテレビ批評担当、立松第二制作室長、清水ゼネラルプロデューサー、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室担当局長兼部長、熊谷番組審議室

4.議題

「『99人の壁』の不適切な手法について。」および「緊急事態宣言下のテレビ全般について。」
※審議内容は、先月時間の都合で積み残しとなった「『99人の壁』の不適切な手法について」および「緊急事態宣言下のテレビ全般について」。4月の番審後、『99人の壁』に関しては、各委員からはリポートでご意見をいただいたが、課題は多く、さらなる議論が必要であると考え、社内及び但木委員長と相談の上、予定の審議テーマを差し替えた。

冒頭、但木委員長より、説明があった。

  • 本日は『99人の壁』について継続審議的な審議をしたい。この件はしっかり局で議論し、制作現場を支えていかなければならない。局からの説明も踏まえて、今後この番組にとって何が必要なのか、あるいは局の制作の基本的な姿勢についてこんな問題があるのではないか、こうしていくべきではないかとの建設的な意見を頂きたい。

まず、事案概要と、委員からもらっているご意見(リポート)中の疑問点について、局サイドから説明。

  • 今年の2月、エキストラがBPOに連絡し、この問題が発覚した。番組の制作統括以上の幹部が誰もこの事実を把握、認識していないことも含めて、改めて大きな責任を感じた。その後、ヒアリングを重ね、BPOへの報告書を作成した。
  • 報告書の一番のポイントは、ガチンコクイズバトルを標榜しながら、エキストラに解答権を与えなかったこと。これにより『99人の壁』というタイトルに偽りが生じ、視聴者との約束を守れなかったことは大いに反省している。
  • 「なぜ1年以上異常な状態が続いたのか。」構図を説明すると、番組を企画立案した総合演出は、ずっと気持ち悪さを感じていた。彼の中では、エキストラは入っているがスタジオには99人揃っているから許される範囲だ、ダメなら経験を積んだ熟練のチーフプロデューサーがストップをかけてくれるはずだと、自分自身を納得させながら放送を続けていた。
  • 頼みの綱である熟練チーフプロデューサーは、エキストラの存在は早い時期に聞かされていたが、それは特番時代の台風対応に起きたことで、あくまでも緊急対応との認識であり、毎回行われエキストラの人数が増えて常態化しているとは思っていなかった。
  • 「100人もの義務なき出演者の出席を確保するのは難しいとは思わなかったのか?」、「毎週無欠席者という状況を確保するということは困難だとは思わなかったのか?」という質問については、かなり早い段階で総合演出は人集めの難しさを感じていたが、何とか頑張ろう、99人集めようという方向で思考が向かっていた。P、CPも視聴率の向上、問題作成をしないといけないという方向に頭が向かっていた。
  • レギュラー化される2018年の10月、第1回の放送に向けては、解答者140人を確保していた。しかし収録日が迫って蓋を開けると89人しか集まらないということが判明。それでエキストラを入れようという発想になったが、CPはこの相談を事前には受けておらず、第1回放送終了後に、エキストラを入れたことについて報告を受けた。
  • 総合演出も、自分が100人100ジャンルという理想の企画を達成できていないという、本人曰く「気持ち悪さ」は持っていたが、「視聴者にはガチンコクイズバトル、それは1人対89人あるいは85人のドラマは伝えている」ということで自分を納得させていた。これが約1年間にわたって続いてしまったのは、視聴者との向き合いという考えよりも「番組を何とか守らないといけない」、という意識が勝っており、放送倫理の観点では問題を捉えていなかった。
  • 「CP、P、総合演出の三者の間の意思疎通はどうなっていたのか?」口をきけない空気があるとか、話したら怒られるとかいう恐怖体制は今の制作にはない。当たり前のコミュニケーションがとれる関係。総合演出はCPや制作統括とも会話はしているが、なぜか解答権のないエキストラの話だけはしなかった。「CPから何も言われないからコンプライアンス的には大丈夫なのだろう」と思い込もうとしていた。制作統括も総合演出に対して大丈夫かという声はかけていたが、番組の中身や制作体制などについて話はしていなかった。
  • 「なぜこの過ちが起こったのか」、なぜ1年間も放置されたのかの『なぜ』を大切にして掘り下げる対応をしていただきたい」という質問については、おっしゃるとおりだ。なぜ視聴者を裏切っているという意識や、放送倫理上の問題があることに意識が及ばなかったのか。及んでいたとしたらなぜ誰も声を上げなかったのか。これは組織論だけではなくて、人間関係に問題がなかったのか?を再度確認をしている。誰からでも声が上げられるシステム、環境を作っていきたい。

各委員から、以下のような意見が出された。

  • 今回最も残念だったのは、不適切な制作体制が1年もの長きにわたって続いたこと、そしてわずか21歳の男性エキストラがBPOへ駆け込んだことで事態が発覚したこと、その2点に尽きる。
  • 第1回でエキストラを補充しなければならない事態になったことは、異常事態ではなくむしろ予測の事態だった。報告書にもあるように、3回目の特番で既に補填が行われていた。レギュラー化の初回でそこが徹底的に話されなかったのが、制作に関わった方々、悔やんでも悔やみきれないことだったと思う。
  • その根幹には制作力の低下があると感じている。100人が集められなかったら集められないことを逆手にとってコンセプトを粒立てる方法はあっただろうし、そういうところで馬鹿馬鹿しくも洒脱な面白さを発明してきたのがフジテレビの伝統だ。コンプライアンス全盛の中、臨機応変の対応は難しいかもしれないが、そういう現場力を若いスタッフに伝えていくことが再発防止につながる。
  • 管理体制や問題回避の面ばかりが追求されるのではなく、制作力を磨く場、現場力を育てる場を強化していただかなければ同じことが起こる。
  • 再発防止のための点検体制と、フジテレビの面白さが失われない制作体制、両輪をバランス良く進めて、コロナ後の世界におけるテレビの存在感を保持、いえ、高めていただきたい。
  • 前々回の番審の時に但木委員長の「透明性」というキーワードがとても心に残っている。この「透明性」こそが今のテレビにとても求められているものであり、ここを意識して制作しなければいけない。
  • 今回のことは責任感があってやったことだと思う。しかし、その責任は、会社に対しての利を作らなければいけないという責任感で、責任の捉え方が間違っていた。視聴者に向かって番組を作るべきという目線が社内に欠けている。
  • 報告書で大変気になったのが、レギュラー化で制作体制が破綻状態といった部分。レギュラー化は、総合演出を始め、番組スタッフにとってもちろん嬉しいことだったが、一方で、特番でやってきた内容をずっと短い期間で継続的にやっていかなければならないと書かれてあり、レギュラー化が現場にとっては降って湧いた話のように読めてしまった。現場に再三大丈夫かということを確認し、クイズ作家を大量に雇えば大丈夫であるという答えがあったとのこと。クイズ作成自体も逼迫したということは、やはりそこの確認が甘く、具体性に欠けていたのではないか。そこのところで困難さが正しく共有されていれば、無理のないレギュラー化を可能にする方向転換や方策ができたのではないか。
  • せっかくの若い才能の芽を潰さず、みんなでサポートしながら、でもフジテレビらしく自己批評性を含んだ遊び心を持って、乗り越えていただければと願う。
  • 実は、問題だと本音で思わないところがあったのではないか。つまり、99人というのは番組演出の一つの要素であって、99人並べることが面白いという見た目の演出だと考えてしまうと、エキストラを雇ってもいいじゃないかと。この問題が1年間ずっと続いたことの本質は、99人の人に解答をもらうという視聴者との約束を破るという、この「嘘」が存在することが問題の本質だ。
  • 嘘という意識がなくて、演出としてこういうのが面白い、多少の嘘があっても面白いだろうといった意識でいると、1年間はそういうのが続くのだろう。だから、嘘を報道してもいいんだという「価値観」が問題の本質ではないか。
  • どのように再発防止をするのか。それは何を大事にするのかというフジテレビの価値観をもう一度きちんとやり直さなければならない。それは番組制作という問題ではなくて、経営のトップレベルの話ではないか。
  • これは、少し間違っちゃったというようなことではなく、今この経験をもとに、一体テレビは何があることによって社会的な存在価値があるのかを、幹部も一人一人のテレビマンも考えていただく、深めていただくチャンスではないか。
  • 問題は、このように感じていた総合演出の苦しみや悩みを、聞き出せないCP、またその上、さらにその上、制作局長あるいは取締役ないしは社長。これは現場の問題ではなくて、上の問題。つまり経営側のあり方まで、ずっと問題を掘り起こして、自分たちにずしりと来るような総括をしないといけない。
  • 総合演出の若い社員は、初期の段階から何度も何度もSOSを発信していたと思う。その信号を、キャッチできなかった上司の方々の問題は非常に大きい。
  • いただいた報告書に、これがレギュラー化したときの心境、「これまでの半分の準備期間でやらなくてはいけなくなった、でもやるしかない」と思ったとある。大きな番組を作るプレッシャーと、だけどここでできませんとは言えないという現場の苦しさの感情があったんだと、ちょっと切ない気分になった。
  • (収録現場の)雰囲気が悪かったんじゃないかという仮説を根拠なく申し上げる。外部(=BPO)にいきなり電話をするというのは普通のことではない。それはフジテレビがどう見られているかということ。どうせ言ったって改善されないとか、わざとやっているんじゃないかと疑われているということだ。
  • 編成局の方が番組のスケジュールを全部握っているが、その中で、やっぱり無理だよねということが恐らく数理モデル的に考えると見えるのでは。無理なスケジュールが現場から上がってきたときにはぜひ編成局も一緒になって悩んであげる、それで問題点を認識する。チーム作りが本当にうまくいっているか、さらにもう少し突っ込んで確かめられたかもしれない。
  • かなりの基本的問題が伏在している。
  • 1つは、「視聴者目線の欠落」。今、金融界でも保険でも小売業でもお客様第一を標榜している。つまり、企業の永続性を考えるならお客様第一という考え方をとらざるを得ない時代だが、報告書を読むと、お客様目線、つまり視聴者の目線を厳しく感じている人が余りいない。
  • また、この番組で誰が視聴者目線を取り込む、あるいは担う責任者なのかがはっきりしていない。CPが常に視聴者目線で見たらどう見えるかということを意識して番組を考えてもらいたい。
  • 2番目に、どこの会社でも、新しい投資をするときはリスクを大事だと考える。どうもこの番組の制作の中で、リスクという意識がほとんど見られない。ちょっと驚きを感じた。新しい企画が出る、それは素晴らしいアイデアだ、その時に、そのアイデアの良さとリスク双方見なきゃいけない。新しい投資をする以上、収益とリスクは必ずどちらも計算し尽くさなければいけない。

これら委員の意見を受けて、フジテレビ側から以下の発言があった。

  • クイズ作家が大量にいれば大丈夫かと再三確認したというところで、実際に立ち上げてみたらクイズの作成の読みが甘かったんじゃないかという質問だが、クイズ作家を大量に入れて作ったとしても、そのクイズの消費に実際には追いついていないという誤算が、始めてみたらあったというのが実態だ。
  • ご意見にもあったが、「多少の嘘は面白いとやっていたんじゃないか」と。ないと信じたい。本人たちもないと言っているが、長い歴史の流れの中で、多少の、嘘とは言わないけれどごまかしとか、ちょっとここは言わないでおこうみたいな演出が実際に現場にあると思う、そこのところを、「透明性」が基本理念だということを徹底的にたたき込んでいくということに尽きる。
  • 以前この番組審議会の審議対象にもなり、多くの委員の方々から大変温かい好意的なご意見をいただいた。そのような番組で今回このような制作上の不手際を起こしてしまったことはまさに痛恨の極み、以前の幾つかの番組のトラブルの経験が生かされなかったことについては反省しきりだ。複数の委員の方から、これは番組の問題というよりもむしろ経営の問題なんじゃないかというお言葉をいただいたことは心底身にしみた。
  • 若い才能を守り切れなかったという反省がある。企画力は非常にあるが、やはり入社3年目、4年目というのは、会社のブランディングとは何かとか視聴者との関係はどう構築すべきか、やらせと演出の臨界点はどこに設置すべきかなどについては未成熟だった。そういうところについてアシストができなかった、十分ではなかったことについては深く反省しなくてはいけない。

「緊急事態宣言下のテレビ全般について」、委員から以下の意見があった。

  • テレビが例えば路地裏にあるような名店など小規模な事業者にばかり取材をしている。特に、不要不急とみなされやすいアパレル事業者は中小企業でありながら、正社員が多く、しかも借りなければいけない金額も非常に高額、飲食店と旅館にばかりスポットライトが当たっているが、実は倒産件数では2番目、3番目なのに、なぜ自分たちに目を向けないのだろうかということを言っていた。
  • コロナ禍の中で火事場泥棒と言われているが、検察庁法改正案の問題。やはりこの国の将来にとって大事なことだ、ぜひ正面から取り上げていただきたい。
  • 補償の問題では何々手当というところに焦点が当たっているが、憲法25条生存権、生活保護の問題をもっとやってほしい。生活保護は、申請に行けば、やや侮辱的な扱いをされて追い返される人が少なくない。よって、これを取り上げてほしい。
報告事項
  • 次回、第498回は、6月10日水曜日12時を予定。
  • 審議番組は、『Live News it!』を予定
  • どういう形式にするかは、状況を鑑みて、後日ご連絡。

以上。