番組審議会

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第496回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

令和2年 4月8日(水)午後0時30分より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社
大会議室をベースとして、委員他がテレビ会議形式で出席。

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、増田宗昭、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、岸本専務、和賀井専務、松村常務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、金光取締役・FMH社長、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、矢延制作局長、山口報道局長、大野情報制作局長、齋藤編成部長、齋藤考査・放送倫理部長、西村週刊フジテレビ批評担当、立松第二制作室長、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室担当局長兼部長、熊谷番組審議室

4.議題

『新型コロナウイルス報道について。』

※審議内容を上記に変更。予定されていた審議番組「出川・爆問田中・岡村のスモール3」3月7日(土)放送については、リポートでご意見をいただいた。

冒頭、遠藤社長よりテレビ会議での開催について、説明があった。

  • 今回は、オンラインでの会議という形に。本当に国難と言っても良い、こういう時こそテレビ局の報道、放送への皆様のご意見を伺う必要があるのではないかと考えたからだ。
  • メディアは言うまでもなく災害時の重要なインフラであり、新型コロナウイルス報道は問題も多岐にわたり、刻々と状況も変わる中で今何をどのように伝えていくべきか、番組審議会委員の貴重なご意見を伺い、今後の我々の放送の一助にしていきたい。

冒頭、関係セクションから、新型コロナウイルスの影響と対応、課題等を報告。

1 報道局

  • 4月7日、新型コロナウイルス肺炎に対応する改正特別措置法に基づいて緊急事態宣言を出した。対象は東京、大阪など七つの都府県、期間は5月6日まで。特別措置法に基づく緊急事態宣言は初めて。
  • ここ数日、当社のニュース番組では食料品なども十分にあり買い占めの必要はないというメッセージによって、視聴者の不安を取り除き、混乱を起こさず冷静に対応してもらえる報道内容を心がけてきた。
  • 国民一人一人の生活や国の経済に与える影響にも目を凝らし、それに対する緊急経済対策や国民への給付方法、そういった政府の対応策についても、随時速報すると同時に解説を加えて伝えてきた。
  • 業務の継続、いわゆるBCPについても万全の体制をとるべく努力している。

2 情報制作局

  • 情報制作局も報道に準ずる役割を相当数のタイムテーブルを担っているので、極めて重要であると認識。
  • 国民の安全、安心につながる放送が第一で、政府の施策、日々の更新される重要なニュースを速やかに伝えて、丁寧に、正確に解説し、あとは、冷静な行動を求めるメッセージを発する。
  • 大事なのは、緊急事態宣言が発せられた状況で、生活する人たちの気持ちに寄り添った報道を放送することだ。少しでも目の前を照らしてくれるヒントを提示することも重要ではないかと認識して取り組んでいる。

3 編成制作局

  • コロナウイルス関連生活関連に関して正確な情報を視聴者に伝えていくのが大事、最も優先する。そして、どういう事態になっても放送を継続していくこと、放送継続が一番だと思っている。
  • もう一つの柱としては良質なエンターテイメントを届けることも、重要だ。そのためスタッフ、出演者が小規模で安全対策が十分確保できる番組は続けていく、そうではない番組は暫く休止するという対応。今後、新作の貯金が切れてくる時に、形を変えて少し味付けをして出していけるのか、それとも丸々再放送になってしまうのか。なるべく再放送を減らして頑張っていきたい。

各委員から、「新型コロナウイルス報道について」以下のような意見が出された。

  • 専門家として出演される方による憶測発言がメディアに流れることで、世論が分断されたり、不安が煽られた結果として、様々な対立が促進されてしまうことがあった。
  • 医療崩壊という言葉が神通力を持ち過ぎてしまって、経済で死んでしまう人、経済が崩壊することに対して懸念を持つ立場を伝え切れていなかったのではないか。中間層の底抜け、貧困層が食べていけなくなるといった問題。とりわけ家庭内の問題については、児童虐待とDVの増加が、諸外国でも事例が増えているとのことで、今こそ取材するべきではないか。
  • 買いだめその他のリスクに関しては、アナウンサーの呼びかけにも工夫があってもいい。「○○はしないでください!」と言うよりも普段通りの行動を呼びかけた方が確実な効果が出ると思う。
  • 結果として新型コロナウィルス禍の長期戦が終わった後にもっとも予測される事態は格差が大きく開くということ。格差が開いた後の自立支援をどのようにしていくのか。生活にまつわる不安を取り上げるだけじゃなくて、どうやってアフターコロナに経済的にふたたび自立していくことができるか、それに必要な政府の支援は何だろうかという問題を取り上げていただきたい。
  • コロナウイルスの蔓延に従って放送の多様性が少しずつ失われつつあるように感じる。テレビの放送は、各放送局が独自の観点から番組制作することによって視聴者に選択の権利を担保するのが使命。朝から夕方までコロナ関連の情報番組を放送し、ゴールデンのみ通常の番組を流すという編成や総理会見の際のカットインの形式などは、各局似通ったものになっている。
  • どのチャンネルをつけても横並びというのは、地上波テレビを見る世帯が多い日本において最も避けるべき事態だ。現在コロナウイルスについての報道は、総論を伝えるフェーズから各論を伝えるべきフェーズになりつつあるので、細やかかつ独自の情報を伝える番組作りをしていただければと思う。
  • この閉塞感の中では娯楽、エンターテイメントが本当に重要になっている。非日常の生活を強いられた人々にとって、日常を取り戻せるのは、笑いや涙などプリミティブな感情を持つ時。今後、状況がさらに厳しくなった時にも、バラエティやドラマの放送を、フジテレビには、出来得る限り続けていただきたい。
  • テレビ局が持つ最大の価値とは何だろうと考えた時に、生放送、そしてアーカイブ、この2点だ。これを生かした特別編成をやってみてはどうか。例えば、非常事態宣言が出されたが、フジテレビも宣言をしてみる。「フジテレビ720時間生テレビ宣言」とか、若しくは「おうちテレビフジテレビ」みたいなブランドを作って、この1カ月間特別編成をする。全番組に共通するスタジオを作って、そこを拠点にして生放送、完パケを出すような、通常のフォーマットに囚われることなく視聴者が今一番見たいものをそれぞれが改めて考えるチャンスなのではないか。
  • 今こそコンテンツの発明のチャンスだ。過去のドラマの再放送を見ながら、その出演者が注釈を入れていくとか、過去の見たい番組のリクエストを受け付ける、リクエストを受け付けるだけのラジオ番組的な作り方もありではないか。
  • こういう状況では、人は生活をしていく上で具体的で役に立つ情報を求めている。皆不安に包まれている中で少しでも目の前を照らすヒントを提示するといった姿勢には大変共感をする。
  • この状況下においても無自覚な人たちというのは一定数いる。若者たちは自分たちだけがやり玉に挙がることに大変不満を抱いている。「北風と太陽」ではないが、褒めて促すようなやり方も有効かもしれない。若者に届くような言い方、そういうことも考えていただければいいと思う。
  • どんな人がどういう証明をすれば申請できて、どういう条件をクリアすれば給付されるのか。そして、本当に補償が必要な人たちに届くのかという検証も是非やっていただきたい。
  • ドラマなどフィクションとかバラエティは人の心を癒やす。報道の方は大変だと思うが、それ以外の所では無理に番組を作らないで、過去の名作ドラマやバラエティの再放送も大歓迎だ。
  • 検査に関する情報、これが本当に全くと言っていいぐらい報道されない。自分はどうしたら検査を受けられるのか受けられないのか、どこへ行けばいいのかなどについては比較的情報が少ないように思う。
  • みんなが関心のある情報は、恐らく、いつ収まるのかということが一番だ。こういう要素が揃えば収まるというような要素があると思うが、その要素を分解し、それぞれの今の進捗状況がどうなっているのか、同じフォーマットで、同じ要素分解のツリーで報道していただくとみんな落ち着くと思う。
  • 戦後の日本を元気づけたのは若きころの美空ひばりさんの歌だ。例えば「ウィ・アー・ザ・ワールド」みたいな歌とか、そういう何かみんなの気持ちが一つになるような歌などがあれば元気づくかなと。
  • 緊急事態宣言について世論調査で80%がそれを望んでいるという報道に新聞で接し、これは良くないという意味で驚いた。というのは、このような危難、困難に、ともすれば強権によってこれを乗り越えようという発想が民の中から出てくる、そのことが、私は危険な要素を今の時代、はらんでいると思う。
  • 昨日(4月7日)の首相記者会見の中で、検査の実態がこのままでいいのかについてワンクエスチョンも出なかった、これは問題だ。軽症者あるいは感染の疑いがあるけれども無症状、その人たちのことを関係医療機関と国が把握して、それに対して対策を打っていくことが、この先、来るかもしれない爆発的な感染によって死者がたくさん出ることを防止するためにやるべきことではないかという一つの意見がある。そして、いや、そんなことはやらなくていいんだというのはもう一つの意見だ。
  • そういう二つの対立する意見の中に論点を発見して、その論点ついて取材をして、そして国民にどうですかと投げかける、それがテレビの、放送法に拠って託された任務だ。その任務に反してはいけない。
  • この先も人類という生物が持続的に生き残れるのか、ぎりぎりのところが問われている。人間が幾ら頑張っても、生物である以上、ちょうど地震や津波が起きるのと同様に、今回のようなことがやってくるのは避けられないという視点も大事。
  • 地球上には今500万種とも言われているいろいろな生物種がいて、過去40億年間ずっと進化してきている。人間が現れたのはほんの数百万年前、人間が農業を始めて、生活し始めたのが、わずか、最終氷期が終わった1万年ほど。
  • 連日、時々刻々と事態が変化する中で複雑な連立方程式を解かないといけない状況に現場の皆さんはいらっしゃる。ご苦労が絶えないと思うが、どうか体だけは気をつけて。ともに頑張りましょう。
  • 先週4月3日に日本看護協会の記者会見があり、医療崩壊について大きく報道されてない部分が一つあると言っていた。本来、医療を受けるべき状況にある患者さんたちの治療が十分に受けられないこと、予定されていた手術のスケジュールが延期されたりするということ、つまり、コロナ以外の人たちの医療が影響を受けているということを非常に強調されていた。ここに重点を置いて報道していただければ。
  • 専門家会議の記者会見は、生活者のレベルで大事な提言が、カットされた後の記者会見にある。その一つが、4月1日、専門家会議の記者会見の最後、東大医科研の武藤香織委員の発言だった。ベッドが足りない、人工呼吸器が足りないという状況になった時に、もし自分あるいは自分の家族が感染して重篤になったとしたらトリアージの対象になる可能性がある。武藤委員が言うには、「医療者だけに人工呼吸器をつける、つけないの、判断をさせるのは非常に酷であると。事前に家族で話し合いをしてください」と。
  • コロナ一色なので、ここで落ちていった事件や事故のことが気になっている。近畿財務局の赤木敏夫さんの遺書が公表されたが宙ぶらりんになっている。こうした報道も検証していただきたい。
  • これは文化の闘いになってきてしまっていて、強制力を持って強権的に病気を抑えていくのがあるべき姿なのか、それとも、人間の人間を思いやる気持ちをお互いで出し合って病気に対して闘っていくという道が人間のあるべき姿なのか。多分、その二つの路線の闘いがこの大きなコロナという問題で今行われているんだろうと思う。
  • これを決める決め手はむしろメディアにあって、メディアがどのように正しい知識を国民に与えていけるかということと、メディアが家にこもっている人たちにどれだけ精神的な安らぎを与えられるかという報道以外の問題も、メディアがどれだけ人間を耐えさせてくれる力になるかが、この文化の闘いの決め手になるんじゃないか。
  • 貯め撮りをどれだけしているのかが心配だが、旧作品を上手に使えば何とか家にこもっている人々にそれなりの心の安定を与えられるのではないかということだったので、ぜひ局には頑張っていただきたい。

これに対してフジテレビサイドからは以下のような発言があった。

  • 第1点に、今改めて、報道機関として何ができるのか。その問いは恐らく普通の生活者、視聴者が何を今求めているのかということ。生活者が求めている筆頭は、不安の解消だ。経済的な問題、今回の給付金のもらい方の問題、あるいは疾病の検査の問題。いろいろあるが、取材以外に、例えばネット、プライムオンラインというオンラインニュース、そういったところで幅広く声をすくい上げて、それを実際に報道していきたい。生活者が求めているものは、これから時々刻々変わっていくが、随時すくい上げて、生活者、視聴者の皆様に寄り添っていきたい。
  • 第2点は、今、そもそも正確な情報とは何なのかということ。今回のウイルスは未知なもので、専門家の協力を仰がざるを得ない。コロナ感染で専門家の方をゲストに招くにしても、インタビューをするにしても、予防の面なのか、臨床の専門家なのか、あるいは疫学的な統計の専門家なのか、あるいは医師会の立場、その背景についてどういうことがあるのかということを指摘するのは我々の責務。専門領域をきちんとリサーチをして、それぞれテーマに合った一流の専門家を選んでいかなければならない。
  • 正確性の点で言うと、1次情報、1次データをきちんと入手して、それを検証して報道していくことが重要だ。1次データこそが最も説得力がある。大阪府の吉村知事が3月の連休前に、厚生労働省の非公開の実効再生産数を公表して市民に訴えた。その結果、あの時の大阪と兵庫の往来は見事なほど自粛された。
  • まだまだ長い闘いになるが、皆さんのご意見を生かしながらきちんと報道、取材に努めてまいりたい。

『スモール3』はリポートでいただいたが、バラエティの制作者、テレビ局員へのエールなども綴られた。

  • 現下の陰鬱な状況が、バラエティ番組の社会的存在意義を極めて鮮明に際立たせてくれた。
  • 緊急事態宣言が出ると大がかりなロケは難しくなる。局内のバラエティ収録さえ、よくよくの工夫が必要になるだろう。ご健闘を心から祈りたい。
  • こういう状況下では笑いが必要。テレビが歴史的に培ってきた底力を試す好機ともなりえる。
  • こんな時代だからこそ、人々の心に働きかけて、元気と勇気を与えられるコンテンツが必要だ。
報告事項
  • テレビ会議の時間の都合で、『99人の壁』の事案に関しては、詳細を加えた報告書を委員にお渡ししたうえで、後日審議予定。
  • 次回第497回は、5月13日水曜日14時からを予定。