番組審議会

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第489回 番組審議会議事録概要

1.開催日時

令和元年 7月10日(水)正午より

2.開催場所

東京都港区台場2-4-8 フジテレビ本社

3.出席者

  • 委員長
  • 但木敬一
  • 副委員長
  • 毛利衛
  • 委員
  • 梓澤和幸、井上由美子、岡室美奈子、小山薫堂、最相葉月、増田宗昭、三浦瑠麗
  • 局側
  • 遠藤社長、和賀井専務、岸本専務、松村常務、石原取締役、清水取締役、小林取締役、塚越執行役員編成制作局長、若生執行役員広報局長、山口報道局長、矢延制作局長、大野情報制作局長、齋藤編成部長、中山技術局次長、齋藤考査放送倫理部長、西村週刊フジテレビ批評担当、井上チーフP、福井PD、佐野報道番組部長、柴崎執行役員番組審議室長、坪田番組審議室担当局長兼部長、熊谷番組審議室

4.新体制につき、組織変更等、遠藤社長から説明。

組織変更の、主な3点。
(1)「総合メディア推進本部」
(2)報道、情報、スポーツを網羅した組織「ニュース総局」
(3)広報局「ブランディング室」について。

5.議題

『日曜報道 THE PRIME』
2019年6月16日(日)7:00~8:55放送

※参考回として、7月7日放送分。

各委員からは、課題番組に関して以下のような意見が出された。

  • 4月7日の初回冒頭、ゲストに、キャスターが、中国に対して何かありますかと最初に尋ねたとき、「私、シナ嫌い」と言った。何の前提もなく新しい番組のゲストの最初の発言がこれで、一帯一路の話題になったときに、ここでもゲストが、中国人がいかに世界的に広がっているか、という発言をした。
  • SNSの普及によって、LGBTの問題、在日外国人の方々の労働の問題、いろんな問題が表に出るようになってきた。そんな変化する時代に、公共電波の新しい番組の冒頭でいまだにこういう発言があったことは非常に残念だ。
  • 6月16日の放送。ホルムズ海峡の危機が最初のテーマで、現地取材もして、わかりやすく報道していた。松山キャスターの市場の取材で、欧米の番組が見られなくなって、日本の「おしん」が人気になったが、1979年のテヘランのアメリカ大使館人質事件が決定的だったという解説があった。恐らく多くの視聴者、大学生、中高生も知らない。イラン革命まで遡らないといけない。なぜイランとアメリカがこういう状況になっているか、前提をもう少し詳しくフォローして欲しかった。
  • 報道の王道に立ち戻ろうとしているという感想は強く持った。
  • 番組の進行では、議論がきちんとなされたという点を評価したい。特に、サヘル・ローズさんは二つの役割を果たした。一つは、イランの一般家庭の実情、当事者目線かつイラン的目線。二つ目は、視聴者には難しい用語は頭に入ってこない中、今回の紛争では本当に何が懸かっているのかという点に議論を立ち戻す役割を負っていた。
  • とかく専門家を呼ぶと、構成が専門家に引きずられる。今回は諸説あり、私が問題を感じたのは、タンカー攻撃はイランの仕業、革命防衛隊の仕業であるという決め打ちのように感じた。この決め打ちに対してサヘルさんが、非常に抑えた口調で、「何もまだ証明されていない」と指摘した。キャスター側がその役割を負わなければいけない。
  • こういう報道番組の場合には、イデオロギーではなくて合理的な議論ができることが望ましい。もう少し聞かせる議論が成り立ったらいい。
  • 他局とは違った切り口で真摯な番組作りをしている、期待の持てる番組だ。特に、一つのネタをじっくり掘り下げて伝えている点に好感。長い時間かけて取材し、多面的に伝えようという意欲は感じた。
  • 欲を言えば、松山キャスターが、今まさにこの状況下でイランに行ったという特別さが感じられなかったのは少々残念。ゲストに意見を聞いて終わってしまう。せっかく現地に行っているのに、自分の意見をあまり発しないのはもったいない。取材をしていた時期は安倍総理が行く前で、オンエア日はタンカーの攻撃を受けた後。この劇的な状況の変化に対して、現地を踏んだキャスターが何を感じたのか、もう少し聞いてみたい、要はライブ感が欲しい。
  • 7月7日の「党首に問う!」では、短い時間なので物足りない部分はあったが、生放送で各党首を集め、興味を抱く画作り、番組作りになっていた。
  • ただ、その答えは党首たちの討論からは感じ取れなかった。それぞれの意見の誘導は番組としてできないが、討論の最後にもう一度、各党首の意見を視覚化するとか、キャスターが、何を視聴者に感じてほしかったかというところは、切り込んで伝えてもいいのではないか。
  • これからコンセプトがしっかりした報道番組に成長していける番組だ。もう少し若年層にも見てもらうには、キャスターの顔を印象づける工夫が欲しい。
  • 松山キャスターが、このタイミングでイランまですぐに行く、その機動力は一つの売りになる。ナレーションで、「イランの本音を探るべく松山キャスターが緊急取材」という煽りがあり、期待して見たが、意外と松山さんの喋りが少ない。最新の取材した松山さんの話をじっくりと聞いてみたい。
  • 一番気になったのは、日曜日の午前中の視聴生理をどこまで考えているのかという点。落語の枕のように、本当にちょっとしたことでいい、この1週間を締めくくるものなのか、来週の予備知識なのか、何か入り口をきっちり作ると、もっといい番組になる。
  • 6月16日のOA、木村太郎さんが自衛隊派遣のことなどをちらっと話したが、非常に興味深いが、エンドロールが流れるバタバタした中でもったいない。
  • 最初の「“令和の火薬庫”イラン緊急報告『吸着水雷』を仕掛けたのは?」のコーナーは、発生が放送の3日前、短期間によく取材をし、時間をかけて解説し、非常に良かった。
  • サヘルさんの発言が、良かった。イランが仕掛けたという方向に暴走してしまいがちな番組を引き戻す役割を彼女が一人で担っていたし、根本的なことを投げかけていた。
  • 香港デモの報道は良かった。なかなか日本でたっぷり報道されることがない中で、白Tシャツ、黒Tシャツの意味なども含めて、香港の簡単な歴史的背景とか、自治の問題など現在抱える問題への言及があったのも良かった。
  • 各局が党首討論を放送する中で、フジテレビは割と遅かった。遅かったからこそできたことがもっとあったのではないか。他で例えばネット党首討論とか他局ニュース番組とかで既に党首討論が行われていて、そこでの議論を踏まえての切り込みがあり得たのではないか。
  • 各党首が既に展開している持論を改めて展開してさらさらと流れてしまったという印象。
  • ウイグルへの視線とか、香港のデモ、アジアで起こっていることを丁寧に報道しようというところは大変良いことだ、今後もぜひ継続していただきたい。
  • イランの報道について見ている人の潜在意識は「戦争にならないのか?」ということだろう。深層心理として、日常生活から全く遠い「戦争」が、意外と可能性あるのかなと。普段自分の生活に関係ないことが起こるかもしれないとして、こういうコンテンツについての関心が、凄く高まっている。
  • 防衛費の問題でいうと、世界で一番お金を使っているのはアメリカで、約73兆円。イランはGDPが約4.8兆円で、防衛費は約7000億円。そのイランが73兆円もお金を使っているアメリカと戦争するわけがないと思うが、視聴者の深層心理に関して、データという視点で作られても良かったのではないか。
  • アメリカのイラン制裁によってイランの食費が、肉が5倍に上がっている状況について具体的な事実を持って知ることができて、番組が伸びていく可能性があると思った。つまり、報道番組というのは結局、こちらが知らない事実をオリジナルな取材によって提供してくれるということに力があるんだと思った。
  • 「ホルムズ海峡にアメリカの軍艦旗を立てた油輸送船が交通する際に軍艦で守ると言っているが、日本の自衛隊の護送船団を出せと言われた時どうするのか覚悟が必要だ」との木村太郎氏の最後のコメント、これはどちらの立場に立つというよりも論点の提示として、今の時局に対する鋭い問題提起だと思った。
  • 今までの編成と比べ、松山キャスターの起用も、BSフジへの反町さんの起用も含めて、非常に落ち着いて最適解になってきたという個人的な印象もあり、喜ぶべきこと。フジテレビの特徴が出せると思った。
  • 報道というのはスタジオという入れ物があって、その中に運用システム、キャスターがいてゲストキャスターがいて、何を取り上げるのか、そのバランスを私たちは審議しているのだと思う。それがフジテレビの報道の姿だったら、立ち位置がきちんと見えて、わかりやすくなったのかもしれない。
  • 番組で素晴らしいと思ったのは、二つ。一つはイランの一般家庭の実情を知るサヘル・ローズさんを呼んで論議に加わらせたこと。もう一つは、船長に取材して吸着魚雷をつけるとすれば停泊中に行うしかないが、停泊したのはサウジアラビアだと、報道したこと。これも推測であってそれが事実だという訳ではないが、そういう可能性もきちんと報道しているところに価値がある。
  • 複眼的な見方で物事を見るのは非常に重要なことで、事実の報道については、わかっている事実を複眼的に報道するのは凄く大事で、報道の良心を持っている硬派の番組として、非常にいいと思う。

これに対して番組サイドからは以下のような発言があった。

  • この番組の理念は、今日本を取り巻く様々な本質的な問題を真正面から考えていく、また問題の当事者に直接スタジオで話を聞くなどして、逃げずに物事を真正面から考えていくことである。
  • イラン政府の管理下での取材だったので現地では話しきれないところをサヘル・ローズさんに話してもらう構成を考えた。バランスという意味では彼女に背負っていただいた放送だった。一方で、歴史的な経緯やいわばベースとなる部分が抜けており、細部の内容は反省している。
  • オンエアに至るまでのVTRあるいはスタジオでの質問の前取材を行い、ネタそれらを精査して時間に落とし込んで構成していくことに、苦労している。少し作り手側に寄り過ぎ、独りよがりになってしまったことを、委員の話を聞きながら思った。
  • 視聴者の深層心理、視聴者生理がどういうところにあるのかを、今後はもっと考えながらやっていくことが必要だと感じた。

6月18日に震度6強を記録する新潟・山形地震が発生したが、これに関する災害報道対応について報道局長より報告。

  • 新潟・山形地震は6月18日に発生し、震度6強が新潟県の下越地方で記録された。直ちにレギュラー放送から切り替え災害放送を行った。民放最長となるおよそ3時間に及ぶ特番放送になったが、その初動の部分は概ね上手くいった。
  • その要素は三つあり、一つは、夜のニュース番組『α』の番組準備が行われている時間帯であり、三田キャスターが報道センターにいたこと。二つ目は、報道局は1~2週間に一度定期的に、地震対応の訓練をやっているが、その効果が出ているように見えた。三つ目はトークメールという一斉に電話で人間の招集をかける仕組みが、上手く動いたこと。
  • その後南九州の豪雨報道もあったので、対策プロジェクトを報道局内に作っており、次の災害に備える動きをしている。

その他の、フジテレビ、あるいは放送全般についてのご意見。

  • 新しいフジテレビジョン組織図は、多様に組織が運営されていると感じた。その中で、グローバルな視点をどのように持っているのか。たとえばブランディング室のようなところで、SDGsにどう貢献できるかという新しいフジテレビの姿勢を見せることは、日本が期待されているグローバルな貢献ができるのではないか。

これに対して、フジテレビサイドからは以下の発言があった。

  • SDGsに関してはCSR部長が今年の初めに国連に行ってプレゼンを行うなど、様々なことをやっている。これから活性化できるのではないか。
  • 国連に、企業がSDGsをいろいろな形で推進するグローバル・コンパクトという組織があり、フジ・メディア・ホールディングスで署名し、自分たちの放送事業に合わせながらやっていくことを進め始めている。

6.その他

  • 8月は休会。次回番組審議会は、9月11日水曜日12時から。
  • 各委員には、7月5日公表のBPO放送倫理検証委員会決定第29号の意見全文を、参考資料として渡した。

以上。